5Gモバイル通信のリモートでアニメCGの制作実験に成功 エヴァ制作のスタジオカラーとNTTドコモ等がMEC環境で挑戦

モバイル環境でリモートからアニメCGを制作できないか、そんな取り組みが「NVIDIA AI DAYS 2022」で紹介された。

この挑戦はスタジオカラー、ワコム、NTTドコモ、スプラッシュトップ4社によるもので、4社は4Gの通信網に切り替えず、5Gの高速通信・超低遅延などの能力を引き出せる「スタンドアローン(SA)方式」の5Gを活用し、モバイル通信でリモートからアニメCGを制作するリモートデジタル作画の実証を2021年12月22日(水)に実施し成功している。

今回の記事ではドコモの5G SAによる超低遅延の特徴が生かされた最初の取り組みで、国内初となった5G SAと高性能GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を活用したMEC環境によるリモートデジタル作画の実証について紹介する。(記事の内容は2022年1月14日にスプラッシュトップから発表されたもの)


アニメCG制作現場での課題

アニメCGの制作現場は旧来のオフィスでの制作活動が一般的だったが、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、在宅での制作活動への対応が必要となった。しかし、アニメCG制作はワークステーション相当の性能を持つパソコンを準備する必要があり、在宅ではオフィス環境と同等の性能および操作性を持つリモート環境を用意することができないため、制作活動の遅れに直結する課題があった。また同時に、制作活動は閉じられたネットワーク環境で行う必要があり、非常に高いセキュリティーレベルが求められるという課題もある。

実証ではドコモが提供するクラウド基盤サービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」に高性能なNVIDIA GPUとスプラッシュトップのリモートコンピューティング技術を用いたエッジサーバーを構築。5G SAで「クラウドダイレクト」による閉域接続を行い、最大4Kの解像度と高フレームレート(60fps)の画面転送を実現した。


具体的にはアニメCG業界での利用を想定し、カラーに所属するクリエーターがワコムの液晶ペンタブレットを操作。デジタルペンの入力信号を5G SAを 用いたモバイル閉域通信で、ドコモオープンイノベーションクラウド内にあるスプラッシュトップのエッジサーバーに接続。高性能GPUで高速演算処理を行い、リモートデジタル作画を実現した。

高解像度・高フレームレートで液晶ペンタブレットにおけるデジタルペンの筆圧および傾きなどの信号を検知。オフィス環境と同等の操作性で描画も円滑に行えることを確認した。

実証実験に参加したカラー 取締役/「シン・エヴァンゲリオン劇場版」CGIアートディレクター小林 浩康 氏は「実証実験での体感は驚異。本当にモバイル通信のリモート環境なのか?と確認してしまった」、カラー 執行役員 技術管理統括/「シン・エヴァンゲリオン劇場版」システムマネジメント鈴木 慎之介 氏は「実証実験ではリモート環境と感じさせないストレスのない速い描画レスポンスでした。」とコメントした。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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