川崎重工、看護師補助ロボットを台湾企業のフォックスコンと共同開発 総合病院で実証実験し、2026年度に市場投入へ

川崎重工は、電子機器受託製造(EMS)で世界最大の台湾企業・鴻海科技グループ(FOXCONN:フォックスコン)と提携し、看護師補助ロボット「Nurabot(ヌーラボット)」を共同開発した。
2026年度の市場投入を目指し、2025年4月より台湾の国立病院である台中栄民総医院(台湾・台中市)にて実証実験を行っている。

先進国の医療機関を中心に看護師をはじめとした医療従事者の人手不足が深刻化している。特に台湾においては看護師が不足していて、深刻な社会課題になっている。安定して社会に医療サービスを提供するためには、医療現場を支える看護師の負担軽減につながる取組みが不可欠と判断した。


「Nurabot」は、同社が開発した自律走行型ソーシャルロボット「Nyokkey」をベースに、看護師の業務補助を目的に特別に設計された。物を掴むことができる2本の腕、荷室、自走機能を有しており、主に採血した検体の輸送、薬剤の輸送、入院時の施設案内、患者向けの衛生教育などの業務を看護師に代行しておこなうことが想定されている。

このロボットは、同社が産業用ロボット分野で培ってきた技術力、ソーシャルロボットの開発に取り組む中で蓄積してきた知見、鴻海科技グループが持つソフトウェア開発能力を組み合わせることで実現した。
また、台中栄民総医院が有する臨床看護分野での豊富な実績に基づく知見を取り入れることで、看護師の担当業務における課題に即したロボット開発が可能としている。

写真右:鴻海科技グループ 鴻海精密工業 B事業群総経理 姜志雄氏。写真左:川崎重工業株式会社 精密機械・ロボットカンパニープレジデント 松田義基氏


汎用プラットフォーム「Nyokkey」がベースに

「Nurabot」のベースとなった同社のソーシャルロボット「Nyokkey」は、用途に応じて柔軟に活用できる汎用プラットフォームとして開発したもの。
これまで産業用ロボットが使用されてきた製造業などの工業分野だけではなく、介護施設、インフラ施設、飲食店といったサービス分野、命を支える医療分野まで領域を広げ、業務の効率化、省人化に貢献することができる。
なお、今回の「Nurabot」への活用は、「Nyokkey」の海外における医療分野向けの活用としては、初の事例になるという。

同社は「引き続き、鴻海科技グループとの「Nurabot」の共同開発・実証実験を通じて、医療分野でのデジタル変革とプロセス最適化の実現を目指していきます」とコメントしている。

両社のコメント
鴻海科技グループ 鴻海精密工業 B事業群総経理 姜志雄氏は次のようにコメントしている。

姜志雄氏

この度、川崎重工と共同で看護師補助ロボット「Nurabot」を開発できたことを大変嬉しく思います。看護師の皆様が日々直面している過酷な労働環境を改善し、より効率的かつ安全に業務を遂行できるよう支援することが我々の目標です。台中栄民総医院での実証実験を通じて、「Nurabot」が実際の医療現場でどのように役立つかを確認し、さらなる改良を重ねていきたいと考えています。
川崎重工の高度なロボット技術と、鴻海のソフトウェア開発能力を融合させることで、医療現場に革新をもたらすことができると確信しています。今後も、看護師の皆様の負担軽減と患者様へのサービス向上に貢献できるよう努めてまいります。



また、川崎重工業株式会社 精密機械・ロボットカンパニープレジデント 松田義基氏は次のようにコメントしている。

松田義基氏

鴻海科技グループは、医療現場の環境改善に対する強い意志のもと、台湾国内でのスマート医療ソリューションの開発に取り組まれています。一方で、川崎重工は、日本国内を中心に医療分野のロボット化の取組みを推進しており、かねてより医療現場における課題に向き合ってきました。
このような同じ想いを持つパートナーとして、鴻海科技グループとともに看護師補助ロボット「Nurabot」を共同開発できたことを非常に誇りに思っています。引き続き、同じ使命のもと、ぞれぞれの強みを活かしながら「Nurabot」を作り込み、医療現場の環境改善に大きく貢献するソリューションとして提供できるよう、力を合わせて全力で取り組んでまいります。

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ロボスタ編集部

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