ローカル5GとLTEを比較 NTT東日本がロボット運用基盤の展開へ 既設エレベータとの連携を発表 地域ミライ共創フォーラム

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社Octa Robotics、東芝エレベータ株式会社の3社は、サービスロボットが自律的にフロア移動するソリューションの実現に向けた実証実験を2025年1月21日(火)より開始すると発表した。
また、同日にNTT東日本が開催した「地域ミライ共創フォーラム2025」において、エレベータ連携した「ugo」の展示とデモを公開した。これは、今後、NTT東日本がパートナー企業と連携して、ロボット運用基盤(プラットフォーム)のサービス展開をはかることを示唆したもの。

「地域ミライ共創フォーラム2025」展示ブースに並ぶロボットたち

NTT東日本では、いくつかのメーカーと実用化されているロボットをマルチ制御するソリューション研究の開発と実証を進めている。「地域ミライ共創フォーラム2025」で公開した展示ブースではアバターロボットの「ugo」のほか、サイバーダイン製の業務用清掃ロボットや家庭用掃除ロボット、自動搬送ロボットなどが展示されていた。

なお、「地域ミライ共創フォーラム」はNTT東日本が限定した一部のパートナー企業を招待して開催する、年に一度のイベント。講演や展示ブースで構成されている。


エレベータとロボットの連携ソリューション

「地域ミライ共創フォーラム2025」の会場は、東京調布の「NTT中央研修センタ」。ここには実証・体感フィールド「NTTe-City Labo」がある。そこでは既設のエレベータとして東芝エレベータ製が使われていて、これにロボットとエレベータを通信で連携するシステムを後付けで設置し、Octa Roboticsと実証システムを開発した。今回はその実証実験の成果発表として公開した。また、今後はNTT東日本がパートナー企業と連携してニーズの高く実用的なロボット連携システムをソリューション提供していく発表もおこなわれた。


エレベータ連携でローカル5Gを利用

展示ブースでは、既存のエレベータ連携とともに、NTT東日本が普及を推進している「ローカル5G」をエレベータ連携に活用した実証実験の動画も公開していた。動画では「ローカル5G」でロボットと接続した場合と、「4G LTE」(モバイルルータ)で接続した場合を比較。エレベータへの移動や連携、乗り込みには差が出ないが、エレベータのカゴ内では通信が切れるため、目的階に到着してドアが開いた際に、「4G LTE」では通信が途切れた状態が長く、「ローカル5G」では瞬時に再接続がおこなえる(ハンドオーバーが速い)ことがわかった。

エレベータ連携の実証実験において、ローカル5と4G LTEを使った場合・・

エレベータのドアが開いた時、ローカル5Gはすぐに通信が復帰(再接続)するが、4G LTEでは復帰までに時間がかかり(画像では再接続に時間がかかり通信が途絶:ブラックアウト)、カゴ内に取り残されたり、利用者を待たせるおそれもある

エレベータのドア開閉時、「4G LTE」では接続の復帰に時間がかかった場合、システムの組み方によってはカゴから出る動作が遅れてしまうケースもあるという。

なお、カゴ内でロボットとの通信を維持するには、エレベータの昇降路(エレベータが移動する縦方向の通路)にルータを設置する方法がある。




公開した実証内容

実施期間:
2025年1月21日~2025年3月31日

場所:
NTTe-City Labo 5号館

評価内容:
■エレベータ/サービスロボット管理システム/ロボット間の連携に関する課題把握
・乗り場・乗りかごで人とロボットが乗り合わせるさまざまユースケースの抽出・動作確認・課題把握
・無線ネットワーク環境の評価(本施設ではローカル5G・Wi-Fi等を運用中)
■サービスロボット管理システムにおける機能・運用面の課題把握
・エレベータ乗降時のユースケースにおける事象の把握
・その他、ロボットがエレベータ前へ移動~エレベータ乗り込み~指定フロアへ移動~エレベータから出て目的地へ向かう一連の動作中における事象の把握
・上記を踏まえたサービスロボット管理システム側での実装内容の検討・実装
■その他、実証により明らかになったノウハウ・課題などの把握



Octa Robotics、東芝エレベータとの連携

経済産業省とNEDOと連携している「ロボットフレンドリー施設推進機構」(RFA)にて、Octa Roboticsはロボットと建物設備連携の標準ルール策定を推進する企業。ロボットと建物設備(エレベータ、自動ドア、セキュリティ、フラッパーゲート等)の連携システムやその標準化に取り組み、マルチベンダー型のインターフェースサービス(LCIサービス)を提供・展開している。

ロボットがフロアをまたいで移動する場合、エレベータと通信して連携する必要がある。新機種のエレベータにはそのような機能をオプション等で備えたものが出はじめているが、多くのビルでは既存のエレベータを新機種に切り換えるには膨大なコストと期間が必要になるのが実状だ。東芝エレベータは、東芝エレベータ製に限らず、既設エレベータに対して外部システムとの連携を可能にする外部システム用インターフェース装置を開発。また、人とロボットが既設エレベーターを安全に利用するために必要な対策・機能の拡充・運用方法を検討している。

この3社共同のもと、NTTe-City Labo内にロボットと既設エレベータを連携させる実証システム(プラットフォーム)を構築し、パートナー企業とともに今後のソリューション開発に向けた機能・運用面におけるノウハウ蓄積や課題の把握に取り組んでいる。




実証システム概要

「NTTe-City Labo」5号館内の既設エレベータ制御盤へ東芝エレベータの外部システム用インターフェース装置を設置。Octa RoboticsのLCIサービスへ接続することで、エレベーターの遠隔呼出を可能とする。これに加え、NTT東日本のサービスロボット管理システムと連携することで、各種ロボットやエレベータの統合管理が可能となる。





各社の役割

NTT東日本
・実証実験場所「NTTe-City Labo」の提供
・実証実験場所の運用・管理 (施設を利用する第三者への周知・窓口)
・実証用サービスロボット管理システムの構築
・実証実験の評価に向けたロボット全体運用設計、実験中のロボット運用、 第三者へのヒアリングなどの実施

Octa Robotics
・実証用システム(LCIサービス)の提供
・実証実験の評価に向けたシステム稼働データなどの分析

東芝エレベータ
・実証用システム(外部システム用インターフェース装置)の提供
・実証実験の評価に向けたシステム稼働データなどの分析


今後の展開

NTT東日本は、この施設での実証およびパートナー企業とのユースケース共創を通じ、ロボットの運用に必要なネットワーク環境およびロボット管理システムを含めたワンストップソリューションを提供していく。
ロボットの社会実装を加速させ、各種業務の更なる効率化・省人化の実現をめざす。
Octa Roboticsは、ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)が発行した規格に基づく建物設備連携を更に推進するとともに、新たな研究開発へも着手していくことで、ロボットフレンドリーな社会の早期実現に向けて貢献していく。
東芝エレベータは、本実証実験を踏まえ、既設のエレベータにおける、ロボットの縦移動のニーズに対応するための連携システムの開発を進める考え。

関連サイト
NTT東日本

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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