株式会社空解と株式会社NTTドコモは約40キロメートル離れた離島へのドローンによる救援物資などの運搬実証実験に成功したことを発表した。
ドローン配送の課題
ドローンの自律飛行においては、長距離をいかに高精度で飛行できるかが重要なポイントとなる。自律飛行の際はあらかじめGPSなどの衛星測位を利用してドローンの位置と目的地の座標、高度などの情報を取得し、位置情報と地図を組み合わせて飛行ルートをプログラミングするが、従来のGPSの単独測位では位置の誤差が数メートル程度発生することがあり、周りとの十分な距離と着陸スペースの確保が必要だった。
また、海上や着陸時の気流の変化が激しい場所では高度の誤差が数十メートル発生することもあり、自律飛行による正確な着陸は場合によっては非常に困難。さらに、マルチコプター型(回転翼を推力にして飛行するタイプのドローン)は最長30分程度しか飛行できないため長距離飛行は難しく、海上飛行が必須となる離島への物資配送は困難とされてきた。
沖縄本島より約40キロメートル離れた座間味村にドローン配送
今回の実証フィールドである沖縄県座間味村は沖縄本島より北西に約40キロメートル離れた離島で、交通手段は1日3便の航路のみとなっており、村内に病院はなく診療所しかない。実証実験は災害や病気などの緊急時における座間味村の住民の不安解消を目的とした緊急必需品の配送や将来的な飲料・食料などの生活物資配送を想定し、沖縄本島の豊見城市から座間味村まで約40キロメートルの距離をドローンで輸送した。これは離島への電動ドローン物資輸送の国内最長距離となる。
実証実験には空解が開発した新型VTOLドローン「QUKAI FUSION 2.0」を使用。固定翼型のいわゆる飛行機型でありながら、回転翼機のマルチコプター型ドローンのように滑走路なしでどこでも離着陸できる上に、マルチコプター型ドローンの課題であった飛行距離(通常4~10キロメートル程度)を大幅に改善した機体で、特殊FRP構造により高剛性を確保することで飛行の安定性を向上させている。
実証実験では「QUKAI FUSION 2.0」に搭載したGNSS受信機へ高精度GNSSの位置補正情報をリアルタイム配信することで、1秒ごとに数センチメートルの誤差内の高精度測位が可能となり、あらかじめ設定した着陸ポイントに対し、海風の影響の中、自動で正確に着陸することに成功した。高精度な着陸が可能なため、離着陸の際に長い滑走路や広いスペースなどを確保する必要がなく、物資などを安全に運ぶことが可能なことが実証された。なお、実証実験は沖縄県座間味村、豊見城市の協力のもと実施している。
【各社の役割】
空解 | ・VTOLドローン「QUKAI FUSION 2.0」の提供 |
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ドコモ | ・「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」の提供 ・「LTE上空利用プラン」の提供 ・ドローン運航支援(ネットワーク品質の確認) ・沖縄県内における協力自治体や企業との連携 |
協力自治体・企業一覧 | ・座間味村(沖縄県) ・豊見城市(沖縄県) ・環境省 慶良間自然保護官事務所 ・株式会社琉薬 ・オリオンビール株式会社 ・株式会社石川酒造場 ・生活協同組合コープおきなわ ・オセアナ株式会社(オセアナポートヴィレッジ座間味) ・株式会社ケラマブルー |
ドローンの長距離飛行で離島の課題解決へ
日本国内には座間味村のみならず、有人の離島が数百か所点在している。多くの離島では1日数便の船舶による移動や物品輸送に限られ、海上しけなど天候の悪い日は移動や輸送手段がなくなってしまうなどの課題がある。ドローンによる正確な長距離飛行を実現することで、離島の多くが抱えている課題の解決に向けて取り組んでいく。また、今後、有人地帯での目視外飛行(レベル4)へ向けた段階的な規制緩和が想定されているが、ドローンの自律飛行にはより一層安全な飛行が求められ、正確かつリアルタイムな位置情報の受信を行うことが重要になる。こうしたシーンにおいて高精度GNSSを活用することで、人の手を介さず事前に計画された正確な離着陸が可能となる。
空解とドコモは実証実験の結果を生かし、自治体などと連携して物流・防災・観光・点検など多種多様な分野でドローンを活用することで、社会課題の解決をめざしていく。
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。