ケイアイスター不動産株式会社のグループ会社であるCasa robotics株式会社(カーザロボティクス)は、2022年2月に「株式会社ウチらめっちゃ細かいんで」(「めちゃコマ」)と開始したアバターロボットを用いたモデルハウス案内業務を本格的に開始した。アバターロボットの操作は「ひきこもり経歴を持つ在宅ワーカー」が担当し、その接客レベルを向上、従来の来場者に対するエンターテイメントに加えて、具体的な住宅仕様の説明も行う。
ひきこもりとその経験者を住宅産業における新たな労働力に
Casa robotics株式会社は、同社が非接触型営業やVRでの内覧、インターネットやアプリなど新たな技術を活用した接客とマーケティングに力を入れるため、2020年11月に設立。全国に110万人以上いると推計されるひきこもり者(15歳~39歳:約54.1万人/平成27年度調査、40歳~64歳:約61.3万人/平成30年度調査)を住宅産業の新たな労働市場と捉えており、同施策にて、ひきこもり及びその経験者が住宅産業において新たな労働力となり得ることを実証するとともに、アバターロボットによる接客技術の向上を図るとしている。
なお、引きこもりについては、ひきこもり支援に関する関係府省横断会議(令和3年6月29日)の第1回 資料において、「様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外で交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」と定義づけられている。
4名体制へ拡大!「エンタメ×住宅知識」で接客レベルの向上を図る
2022年2月以降、主力商品である規格型平屋注文住宅「IKI(イキ)」において、2名のめちゃコマの在宅ワーカーを、茨城、栃木、群馬、埼玉の合計4カ所のモデルハウスに導入した住宅案内用アバターロボット「ミレルン」及び「ミニミレルン」のオペレータに据え、来場者に向けたロボット接客を行ってきた。2022年2月~6月の稼働時間は約290時間に及び(待機時間含む)、多くの来場者をミレルン/ミニミレルンになりきった在宅ワーカーが接客。同社はこの期間をロボット接客のフェーズ1と位置づけ、出迎えの挨拶や子供の相手など、エンターテイメント性を重視したロボット接客を行った。これにより、特に住宅営業の経験・知識がない在宅ワーカーでも自然に接客業務に入り込みながら収入を得ることを可能とした。また、エンターテイメント性を重視した結果、来場者に対しては、「ロボットが出迎えてくれるモデルハウス」としての特別な体験を味わってもらうことができた。
そして、今回2022年7月からのフェーズ2では、【ロボット接客の高稼働維持のため、めちゃコマの在宅ワーカーを従来の2名から4名体制へと拡大】し、さらに、【フェーズ1から活動している在宅ワーカーには、具体的な間取りプランや基本的なオプション、モデルハウスのリビングやダイニング周りの説明などの住宅知識を身に着けてもらい、接客レベルの向上を図る】としている。また、住宅知識を身に着けた在宅ワーカーが接客を行い成約に至った場合は、別途奨励金を支給することした。これにより、在宅ワーカーはロボット接客を通じた対人コミュニケーションのスキルを磨きながら、より高収入を目指すことが可能となる。
フェーズ1でのロボット接客への来場者の反応を分析
業界を問わず、収益性のあるビジネスシーンの中でのロボット接客事例が少なく、これに対して利用者がどのように反応するかについての知見は希少であると考えられる。そこで、Casa roboticsは同社のアナリティクスチーム(実取引データと過去の市場データを活用し、戸建住宅のマーケットトレンドを分析する同社「DCE(デジタルセンター・オブ・エクセレンス)」所属の専門チーム。)と共同で、フェーズ1(2022年2月~2022年6月)におけるめちゃコマの在宅ワーカーによるロボット接客の記録を基に、来場者のミレルン/ミニミレルンに対する反応のパターンを分析した。
調査対象 | 2022年2月~2022年6月の期間中、IKIのモデルハウスに来場し、ロボット接客を体験した来場者 |
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調査方法 | ロボット接客実施後にミレルン/ミニミレルンのオペレータが5段階評価を行った上で、来場者の反応を自由記述する。 |
サンプル数 | 欠損が少なく分析に適したロボット接客記録として124件 |
備考 | 【5段階評価】大きい数値ほどポジティブな反応として5段階で評価。(1:敵対的・攻撃的な反応、2:泣くなどのネガティブ反応、3:総じて中立・無視・無反応、4:喜ぶなどポジティブ反応、5:言葉のキャッチボールや一緒に遊ぶなどのインタラクション。) 【サンプル数】複数人で1グループとして来場した場合、その中のそれぞれの反応を記録した場合も独立したサンプルとしてカウント。 |
同調査結果
評価4(ややポジティブ反応)及び評価5(ポジティブ反応)の反応を示す来場者が全体の49%を占めた。上図に示す通り、これらの来場者は積極的にミレルン/ミニミレルンとコミュニケーションを取ったり、「可愛い」などポジティブな感情表現を行うことから、ミレルン/ミニミレルンによるロボット接客がIKIのモデルハウスという空間にエンターテイメント性を付加している様子がうかがえる。
その一方で、評価3(中立・無視・無反応)が全体の48%に及び、ロボット接客が有効に作用していないケースもまだ多いという課題も明らかになった。来場予約時や案内時に、ミレルン/ミニミレルンの存在を予期していないために、2~5のどの評価においても、「驚き」の反応から始まるケースが含まれる。そうしたケースについて、評価4及び5では「驚き」の後にポジティブ反応が見られ、それ以外(評価2及び3)では、ネガティブまたは中立反応への移行を確認でき、どのような場合にポジティブ反応が引き出されるかの条件を明らかにすることが、ロボット接客の効果をさらに高める上での課題と考えられる。
今後について
2022年7月~9月の3カ月間にわたり、ロボット接客の高稼働の維持、ロボットによる雇用機会拡大と多様性の向上を目的に、めちゃコマの在宅ワーカーをオペレータとし、フェーズ2でのミレルン/ミニミレルンの運用を行う。その後、効果の検証を行い、次のフェーズの運用を検討予定だ。また今後、研究機関との共同研究を検討し、ロボット接客に対する来場者のポジティブ反応の決定条件を探るとともに、ロボット接客がサービスや販売の品質にもたらす効果を明らかにする。同社は、こうした取り組みを通じて、ひきこもり者による労働市場の発展に貢献するとともに、アバターロボットが収益性のあるビジネスシーンにもたらす効果についての知見を学術界と産業界にもたらしつつ、住宅不動産業界の発展に寄与することを狙うと述べている。
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