2021年グローバル消費者向けサービスロボット市場の成長率を発表 〜出荷が前年比25%増加、分野別市場予測も解説〜 カウンターポイント

カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ(Counterpoint Technology Market Research)は、消費者向けサービスロボットグローバル市場における出荷が2021年に前年比25%増加したという最新調査を発表した。

消費者向けサービスロボットグローバル市場では、今後の4年間もCAGR(年平均成長率) 27%のペースで成長すると見込まれ、その背景には、消費者の受容性が高まったこと、技術の進歩、それに多様なコストパフォーマンス製品が手に入るようになったことがある、としている。

消費者向けサービスロボットグローバル出荷の成長率・2020年と2021年比較 出典: カウンターポイント社Global Robotics Tracker


ロボット掃除機市場が牽引

消費者向けサービスロボットグローバル市場の概要に関して、カウンターポイント社シニアリサーチアナリストのAnshika Jain氏は次の通り述べている。
「家庭用掃除ロボットの大半はロボット版電気掃除機であり、ロボット産業の大きな部分を占めている。実に、消費者向けサービスロボット市場全体の2/3を超える存在であり、COVID-19のおかげで、住居でのニーズが増え、ロボット掃除機産業に追い風となった。
AIが発展し、部品やソフトウェアの価格も下がることで、ロボットがさらに入手しやすくなる。音声認識や画像認識の技術の進展も、成長を支えた。加えて、政府の政策の後押しや、必要とされていた資金援助が整ったことも、この産業セグメントの急成長の助けとなった。」

消費者向けサービスロボットグローバル市場における出荷シェア率・2021年セグメント別 出典: カウンターポイント社Global Robotics Tracker


パートナーロボットと教育用ロボット市場が拡大へ

消費者向けサービスロボット市場の成長に関して、カウンターポイント社調査担当バイスプレジデントのPeter Richardson氏は次の通り述べている。
「消費者向けサービスロボット市場の出荷は、2021年から2025年にかけてCAGR 27%で成長するとみられる。コンパニオンなど個人用ロボットと教育用ロボットのシェアが最も高く、2025年には54%に達する予想である。高齢者のケア(特に孤立老人への対応)、社会保障、子供たちの新しい学習形態といった新たなニーズがあるこのカテゴリーは、直近では最も大きな事業機会といえる。このセグメントのASP(平均売価)はさらに下がるとみられ、今後より多くの人々にとって手が届く商品となるだろう。
個人用と教育用ロボットの事業機会は、2025年には45億米ドル(約6,000億円)を超え、多くの国でさらに高齢者が増えることや、STEM (Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育(科学、技術、工学、数学の理系科目を重視し、統合的なカリキュラムで教育を改善しようとする考え方)の普及により、それ以降もかなりの成長が見込まれる。これら2用途向けのロボットにはロボットの根幹となる技術群が搭載されるみられ、それが他の用途へも普及することも期待できる。」


市場のセグメント別概況

本分析では、消費者向けサービスロボットを、家庭用掃除、個人用と教育用、ホスピタリティ(受付や案内)、運搬、医療、その他、に分類している。



● 家庭用掃除ロボット:

主に電気掃除機型ロボットである。家庭用掃除ロボットのセグメントは、2021年に22%成長し、消費者向けサービスロボットの出荷全体のほぼ68%を占めている。中国が最大の市場で、欧州と北米がこれに続く。主な企業はiRobot、Ecovacs、Roborockで、いずれも住居で使用する掃除機ハードウェアと、掃除データをクラウドに保存するためのソフトウェアプラットフォーム(クラウドインフラ提供企業と提携)を提供している。


● 個人用と教育用ロボット

このセグメントは極めて細分化されているが、その中でも主なものはコンパニオン用ロボットと、教育関連ロボットである。消費者向けサービスロボット市場におけるシェアは31%で、2021年には前年比33%の成長をみせた。他のセグメントと比べて、このセグメントの2021年のASPは最低で、279米ドル(約37,700円)だった。高齢者ケア、社会的な孤立への対策、エンターテイメント、子供の教育等がこのセグメントの成長を支えている。



● ホスピタリティ用ロボット

このカテゴリーのロボットで主なものは、ホテル業務でフロントにおける基本的な顧客対応を行うフロントデスク接客ロボットと、消毒作業関連のロボットである。2021年におけるシェアは1%未満であるが、最速で急成長のセグメントのひとつである。特に、COVID-19の流行で、宿泊客が人との接触がない新しい体験を求めたことと、人手不足のなかでホテルチェーンがロボットに活路を見出したことが、成長の大きな要因である。ホテル用ロボットの市場はまだ黎明期である。導入とメンテのコストが高いことが普及を妨げている。


● 運搬用ロボット

このセグメントに入るのは、スーパーやレストラン、それにケア関係の業種で、荷物を戸口まで配達するロボットである。この種の配達ロボットの出荷台数は低いままである。初期投資が巨額で導入コストが高くつくことが原因である。このセグメントの主要企業としては、Starship Technologies、Nuro and Piaggio Fast Forward(Piaggioの子会社)がある。この種のロボットは主に北米市場で展開されており、ロボットの価格帯は2,500~10,000米ドル(約34~135万円)である。


● 医療用ロボット

このセグメントのロボットには、手術用、エクソスケルトン(Exoskeletons: 外骨格型の活動支援装置。日本ではパワードスーツと呼ばれることが多い)、病院内搬送ロボットがあり、医療用カテゴリーの中で、それぞれ61%、23%、11%のシェアをもっている。


ロボット市場は大きく成長する可能性

消費者向けサービスロボット市場は、今後用途が広がるに連れ、大きく成長する可能性を秘めているという。一番立ち上がっているロボット掃除機市場でさえ、なお極めて大きな成長の可能性があり、短期的には、個人用と教育用のセグメントが、市場全体の牽引役となると見込む。運搬用(配達用ロボット)は、技術の進展に伴い、中期的に高い潜在力がある一方、医療用ロボットは、初期投資が大きいことと、R&Dの成果が読みづらいことから、今なお事業リスクが高いセグメントとなっている。

今回の発表は、チャネル情報、POSデータ、ディストリビューターアンケート調査、公開データなどボトムアップデータソースとトップダウンリサーチの組み合わせによるカウンターポイント社独自の調査方法で実施したもの。Quarterly Market Monitorにその詳細が報告されている。(調査時期:2021年1月1日~2021年12月31日)

ABOUT THE AUTHOR / 

ロボスタ編集部

ロボスタ編集部では、ロボット業界の最新ニュースや最新レポートなどをお届けします。是非ご注目ください。

PR

連載・コラム