「交通インフラDX推進コンソーシアム」設立 交通信号機に5G基地局設置、MEC活用 自動運転や安全安心で持続的な交通社会へ

2022年8月22日、産官学連携による「交通インフラDX推進コンソーシアム」の設立が発表された。設立はJTOWER、住友電気工業、日本信号、日本電気の4社、東京大学 大口 敬教授、慶應義塾大学 植原 啓介教授の協力を得て実現した。また、特別顧問は慶應義塾大学教授の村井純氏が就任。
報道関係者向けに「設立発表イベント」が開催され、村井純氏による基調講演が行われた後、大口会長らにより、コンソーシアム設立の主旨や目的、組織の構成が発表された。

「交通インフラDX推進コンソーシアム」会長の大口 敬教授 (東京大学)

特別顧問の慶應義塾大学の村井純教授による基調講演 リアル空間とデジタル空間の融合、データ活用、世界基準とのコンセンサスなど、広い視野での講演は興味深い内容だった




人・モビリティ・インフラが協調した安全安心で持続的な交通社会の実現

主には、官民研究開発投資拡大プログラム「PRISM」で実証研究が行われてきた「交通信号機と5G基地局」そこに展開するMECやデータ共有、AIによる解析などを活用し、地域の安全・安心、自動運転車を含めたモビリティの社会実装等を推進する。
コンソーシアムの言葉によれば「人・モビリティ・インフラが協調した安全安心で持続的な交通社会の実現に向けて、交通信号機の活用による5Gネットワークを軸とした柔軟性かつ拡張性のある新たなDX基盤やアプリケーションが社会実装されるよう、検討・対外活動を推進」する団体となる。

重点的に産官学で取り組むのは、この図の中心にある「柱の高度化」「交通管制・信号情報配信」「データ利活用ニーズへの対応」。

具体的には、インフラ普及やアプリケーションの社会実装に向けた調査・研究、情報発信・広報活動、技術的な要件検討、ガイドライン案の取り纏め、ならびに関係する府省庁、団体、大学など様々な方々との協議なども踏まえた関係機関等への提言を行う。
なお、信号機と5Gのインフラ活用の標準化団体ではなく、世界の標準化情勢を踏まえ、それらをどうやって早期に社会実装していくか、を推進する団体となる。


■現時点での幹事会員
株式会社JTOWER
住友電気工業株式会社
住友商事株式会社
日本信号株式会社
日本電気株式会社
本田技研工業株式会社




信号機+5G連携のPRISM事業を社会実装へ

2019年度から3か年にわたり行った「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)事業では、交通信号機を5G基地局の設置場所として活用するとともに、5Gを用いた交通信号機の集中制御化等を目的とした技術や制度の検討を進めてきた。
さらに、この事業では「交通信号柱を交差点における貴重な公共アセットと位置付け、ここに5Gネットワーク機器や各種センサを取り付け、得られた信号情報、センサデータなどの活用による社会課題解決の可能性についても検証」してきた。
上記プロジェクトは2021年度末をもって一定の成果を上げて終了したが、今後、社会実装を進めていくためには、引き続き中長期的な観点でニーズの深掘りを進め、技術要件、制度・運用面など実現方法、事業性についてさらに検討を深める必要性があると判断した。こうしたことを背景に、産官学で連携したコンソーシアムを立ち上げてこれらの活動を引き継ぐこととした。


具体的にはどのような情報が得られると想定しているか

PRISMでは、信号機に5G基地局を設置、カメラやMEC(エッジコンピュータ)などと連携することで、自動運転車への活用のみならず、地域の交通インフラのDX推進が実証研究されてきた。それを引き継ぐコンソーシアムとしては「具体的にはどのような情報が得られると想定しているか」との報道関係者から質問に対しては、あくまで現時点での例として、下記のような回答があった。

・信号の情報を自動運転車に通知して安全な通過を促進
・信号機のカメラから見た自動運転車の周囲の危険をクルマに通知
・ドライバーの死角にある危険情報を通知
・横断中の歩行者が転倒していたり、車椅子や高齢者の情報を通知
・交通量や歩行車数の集計や分析データの活用
・熊など害獣等の出現等、異常事態の発見

報道関係者からの質疑応答の様子


コンソーシアムの活動内容

交通インフラのDX推進に向けて、普及促進委員会と技術検討委員会を構成し、以下の活動を行う。


普及促進委員会

各テーマの事業化及び普及促進に向けた検討・提言取り纏め
国際動向や関連施策の調査及び関係性の定義
関係省庁・自治体との調整・連携


技術検討委員会

スムーズな交通インフラのDX推進に向けた技術的な要件検討、ガイドライン案の取り纏め
制度面等の諸課題の整理と提言の取り纏め


具体的内容

(再掲)重点的に産官学で取り組むのは、この図の中心にある「柱の高度化」「交通管制・信号情報配信」「データ利活用ニーズへの対応」。

1)柱の高度化:
柱の高度化に向けた要件検討、ガイドライン案作成
制度面等の諸課題の整理と提言検討

2)交通管制・信号情報配信
交通管制・信号情報配信の要件検討、ガイドライン案作成
制度面等の諸課題の整理と提言検討

3)データ利活用ニーズへの対応
交差点等の公共空間デジタル化により、新たに得られるデータ利活用ニーズの深掘り
データの利活用ニーズに対応したアプリケーション及びプラットフォームの要件検討、ガイドライン案作成
制度面等の諸課題の整理と提言検討


コンソーシアムメンバー

役員等:(敬称略)
 会長:大口 敬(東京大学)
 副会長:植原 啓介(慶應義塾大学)
 特別顧問:村井 純(慶應義塾大学)
幹事会員(6社):
 自動車メーカー、インフラシェアリング事業者、交通管制ベンダー、システムベンダー等
正会員(6法人):
 交通管制ベンダー、シンクタンク、信号工事関連団体など
準会員(7法人):
 通信事業者、システムベンダーなど
オブザーバー(3省庁、4法人):
 関連省庁、自動車・ITS関連団体など


入会を希望の企業/組織は

コンソーシアムへの入会を希望する企業・団体の方は、ウェブサイトを通じて申し込みできる。コンソーシアムの規約等詳細については、同ウェブサイトを参照のこと。
また、この日に実施された設立発表イベントはアーカイブ動画として、後日ホームページに掲載予定となっている。

Webサイト: https://www.cdx-traffic.org/


このコンソーシアムは「取り組みに賛同して参画する企業・団体を増やしていくとともに、交通インフラのDXを通じて人・モビリティ・インフラが協調して安全・安心で自由な移動が実現できる社会を目指す」としている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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