胆汁の通り道である胆管が拡張する疾患で、膵管と胆管の先天的な合流異常が原因とされている先天性胆道拡張症は、小児に多い病気だ。放置すると胆管がんを発症するリスクが高まるため、拡張した胆管を切除する必要がある。
2016年に腹腔鏡下での胆道拡張症手術が保険収載されて以降、傷が小さく体への負担が少ないといった長所から、小児でも腹腔鏡下手術が広く行われてきたが、小児では胆管が非常に細く、腹腔鏡下での運針・縫合に大変苦労することが少なくないという。
その腹腔鏡下手術の欠点を解消すべく、順天堂大学医学部附属順天堂医院小児外科は、院内倫理委員会の承認のもと、2017年に胆道拡張症に対するロボット支援下手術を全国に先駆けて小児に導入していたが、2022年4月より小児に対するロボット支援下胆道拡張症手術が保険収載された。
保険適応となったことより、今まで自由診療であったため高額な医療費が必要とされていたロボット支援下手術の経済的負担が軽減され、患者とその家族にとってより良い治療の選択肢が広がった。
ロボット支援下手術の利点
ロボットを活用する利点は、腹腔鏡下手術に比べ、正確で緻密な精度の高い運針と縫合を行うことができる点にある。腹腔鏡下手術では極めて困難とされる、運針・縫合を開腹手術と同等のクオリティで行うことを、ロボット支援下手術では可能となる。
また、ロボット支援下手術は、腹腔鏡下手術と同様、低侵襲手術であることも利点のひとつだ。成人に比べて体力のない小児への負担を軽減することができ、開腹をしないため手術創も目立たないという点でも、子どもにとって大変優しい手術といえる。ロボット手術では、開腹手術と同等、それ以上の緻密な運針・縫合を腹腔鏡手術と同じ小さい創から行うことが可能なことより、同小児外科・小児泌尿生殖器外科では、既に小児の胆道拡張症に対し、19例のロボット支援手術を施行。縦隔腫瘍・腎盂尿管移行部狭窄症を含めると49例施行しており、極めて良好な治療成績を収めている。
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今後の展開
順天堂小児外科でのロボット支援下手術に関して、順天堂医院・練馬病院・浦安病院で日常診療として行い、2022年4月に開設した静岡病院小児外科でも施行が予定されている。しかし、ロボット支援下手術は小児外科の分野では未だその認知度が低いのが実情だ。今後も同小児外科では小児においても積極的に「ロボット支援下手術」を導入し、一人でも多くの子どもに、より安全・安心・精度の高い手術を提供できるよう努めると同時に、ロボット支援下手術の更なる展開を推し進めていくと述べている。
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/shonigeka/about/operation/
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