MaSiRoプロジェクトは、秋葉原近くの実店舗トリオンプにて、期間限定でメイドロボカフェ(メイドロボ喫茶)を10月7日(金)にオープンし、報道関係者向けの説明会を開催した。
「ましろ」「ちろ」「ちや」の3体のメイドロボが来店客をもてなし、「ましろ」が給仕を行う試みで、期間は10月9日(日)まで。時間入れ替え制をとり、3日間で全14回。事前応募による予約の募集を行い、合計102名の来店客を予定している。
■動画
入店、注文、給仕の流れ
喫茶店の入口では「ましろ」が出迎えてくれる。すべての来店者にQRコードが割り当てられていて、入口のQRコードリーダーで入店の登録をする。「ましろ」がテーブルを指示して案内してくれる。
店内は広くはないが、メイドロボットと手を繋いで軽く歩くことができる程度の中央スペースがあり、そんな体験もできそうだ。
テーブルに座ってオーダーをカードに記入し、ハンドベルを鳴らす。ハンドベルはセンサーでシステムと連動していて、「ましろ」がハンドベルを鳴らしたテーブルにやってきてくれる。
オーダーを記入したカードを「ましろ」に渡すと、「ましろ」は厨房にオーダーを届けに行く。
ドリンクができあがるとスタッフが「ましろ」の持つお盆にのせる。「ましろ」はオーダーした来店客のテーブルにドリンクを運んで給仕作業は完了する。
配膳ロボットと異なるのはそこで、来店客の目を見て膝を折って丁寧なお辞儀をすること。もちろん、とても快適な気分が体験できる。
■動画 オーダーから給仕まで フルバージョン
■公式動画 (給仕リハーサル中)
技術的な特徴
「ましろ」3姉妹の移動には二足歩行ではなく、あえて安定性のある車輪を採用している。スカートの下にLiDARが複数搭載されていて、予め作成されたマッピングを参照してSLAM技術で移動する。
周囲の様子はカメラが捉えていて、近くにいる人の顔を追従して目を合わせ続けることができる。複数人がいる店内で自分と目が合って、ずっと見つめられていると、心が揺さぶられる気がするのはきっと著者だけではないはずだ。メイドロボットが持つ特有の、感情に働きかける不思議な魅力だ。
なお、発話や会話機能はあえて搭載していない。今の技術では、人間並の会話を期待されると失望されてしまう、それより目や仕草で表現したい、と判断した。
「MaSiRoプロジェクト」のあゆみ
アパートの自室からプロジェクトははじまった
「MaSiRoプロジェクト」は、2018年2月に「ましろぱぱ A_say(えーせい)」氏がアパートの一室(自室)で設立。「アニメから抜け出てきたような個性豊かなメイドロボット達によるメイドロボカフェを作る」ことを目標に、メイドロボットましろシリーズの開発をはじめた。
A_say(えーせい)氏は自称ロボットオタクで2次元オタク。小学生の頃からロボット作りを行い、マンガやアニメ、2次元キャラに傾倒してきた。
A_say氏は、「VRは画面の中に自分が入る技術、画面の中から2次元の女の子に出てきてもらいたい、それにはロボット・・」とし、「ロボットでしか生み出せない価値を、みんなに提供できるメイドロボットが給仕してくれる場所を作ろう」とメイドロボカフェ実現の夢に向けて走り出した。
長女として誕生したのは「ましろ」。最初は段ボール製だったが、やがて顔のパーツのない「のっぺらましろ」に進化した。その画像がSNSで中美紅を集め、美少女キグルミの技術によって顔が作られ、ついには液晶の目が搭載され、表情を持ち、生命感のある現在のましろの姿となった。ましろに続き、2体の「双子の妹」を開発、「ちろ」と「ちや」と名付けた。
■手繋ぎメイドロボット”ましろ”ができるまで (2018~2021の記録)
手を繋いで一緒に散歩できるロボット
メイドロボットへの進化の過程として、「ちろ」と「ちや」の開発し、手を繋いで一緒に歩ける機能のブラッシュアップを行うため、クラウドファンディングで資金を募った。3姉妹の手つなぎロボットとしてイベント等でお披露目され、話題はますます大きく膨らんでいった。
ロボスタでも、「ロボカップアジアパシフィック2021あいち」の会場で来場者と手を繋いで散歩する「手つなぎ少女ロボット」として活動する様子を紹介している。
生命感のあるロボット
人に寄り添い、親しみを感じるロボットとして重要なのが「生命感」だ。「人に生きていると感じさせる可愛さをつくる手段」として、A_say氏は「目線」と「仕草」を大切にしている。細かな身体の動きと視線によって生命感は創り出される。
手を繋いでお散歩できる美少女ロボットを経て、IoTハンドベル、給仕のために安定的に把持できるハンド開発、差動2輪による自律走行、衝突回避と安全性能の向上などの技術を追加したり、ブラッシュアップしたりして、短期間ながらもメイドロボカフェの実証を実現した。
A_say氏は「人の役にたって必要とされる、生きていると思われ多くの人に愛される「ましろ」たち、その場として提唱するのがメイドロボカフェ」と語る。そして「今回の実店舗の運用を通して実証、人に与える効果と、実用化のための改善点を案出したい」と続けた。
「MaSiRoプロジェクト」は、総務省らが行っている「異能vation」プログラムの「破壊的な挑戦部門」に、挑戦者として採択されている。成果が出せれば支援は継続される。アパートの一室からはじまった挑戦はつづく。
「MaSiRoプロジェクト」公式ページ
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。