「アイガモロボ」の契約農家が無農薬酒米で一等米を獲得 令和5年の春頃に約1,700本程度の製造量を見込む 小嶋総本店

株式会社小嶋総本店は9月27日にJA山形おきたまで行われた米の等級格付検査において、山形県米沢市の酒蔵・小嶋総本店と同社の契約農家・寒河江一紀さんがアイガモロボを活用し無農薬で栽培した酒米「出羽燦々」が良品質を表す「一等米」の評価を受けたことを発表した。

アイガモロボは有機米デザイン株式会社が開発した自動抑草ロボット。小嶋総本店と寒河江さんは「農薬を使わずに田んぼの生物多様性を守りながら、地域性のある酒米を栽培したい」と考え今回の挑戦に至った。そして今秋、ほぼ目標通りの数量の無農薬酒米を収穫し、一等米の評価を受けることができた。小嶋総本店ではこの冬の酒造りで、収穫された無農薬酒米を仕込んでお酒に仕上げる計画。


自動抑草ロボット「アイガモロボ」を使用した無農薬栽培

小嶋総本店は昨年まで農薬や化学肥料を使用した「慣行栽培」を行っていた契約田において、アイガモロボを使用した無農薬栽培の実証実験を開始した。有機米デザイン株式会社が開発するアイガモロボはGPSを搭載しており、人工衛星と通信しながら設定されたルートを泳ぐ。本体の太陽光パネルを動力源とし、下部のスクリューが田んぼの泥を掻き上げて水を濁らせることで太陽光を遮り、雑草の出芽を抑える仕組み。

設定ルート通りに自動抑草するアイガモロボ

5月下旬、田んぼにアイガモロボを入水し、3週間稼働させた。結果、アイガモロボの明らかな抑草効果を確認し、除草にかかる労力も削減された。さらに、泥を掻き上げることで出来た柔らかい土壌が稲に栄養を行き渡らせ、無農薬米は慣行栽培の稲よりも背が高く伸び伸びと成長した。

2022年5月 アイガモロボ入水

2022年8月下旬 アイガモロボ米成長の様子

収穫期にかけて「いもち病」などの病気との戦いもあったが、部分的に刈り取るなどの対処によって感染拡大を防ぎ、無事に収穫期を迎えることができた。

2022年8月中旬 いもち病にかかった稲の刈り取り

2022年9月中旬 稲刈りを迎えたアイガモロボ米

収穫量は目標としていた1,260kgとほぼ同等の1,230kg、品質面でも一等米を獲得することができ、有機肥料のみを用いた無農薬栽培に初めて取り組んだ年としては、十分な成果を挙げることができたとしている。

アイガモロボ米 稲刈り・収穫の様子

2022年9月下旬 米の等級格付検査

検査格付結果通知表(一等米の評価を獲得)



【担当者メッセージ】小嶋総本店契約農家・寒河江一紀(かずのり)さん

今回の実証実験でアイガモロボを用いた「スマート農業」を経験できたことは大きな収穫でした。無農薬での栽培は、田植え後はアイガモロボに活躍していただきましたが、一貫して稲作の原点に還ることが求められました。農薬を使わずに種もみの消毒をする温湯消毒や稲を病気から守る方法などを改めて振り返ることで、ロボット共に自然と共生する道が見えた気がします。当初は有機農法へのハードルを大変高く感じていましたが、最終的には目標に近い収量を得られたことは大変喜ばしく、届かなかった分は来年の糧としたいです。

実証実験メンバー(真ん中 小嶋総本店契約農家 寒河江一紀さん)


展望

小嶋総本店は今季、この無農薬酒米「出羽燦々」で新しいお酒を醸す予定。醸造は令和5年の春頃で、720ml換算で約1,700本程度の製造量を見込んでいる。また、今期は寒河江さんの圃場1箇所で実験的にアイガモロボを運用したが、翌年はさらに生産者を募り、複数箇所での運用を模索したいと考えている。湿度の高い日本で有機栽培や無農薬栽培を行うことは容易ではないが、持続可能な農業への挑戦を続け、国内のみならず、東光が輸出される20ヶ国以上へも取り組みを発信していくとしている。

アイガモロボ米で良質を証明する一等米の評価獲得



株式会社小嶋総本店について

小嶋総本店は安土桃山時代(慶長2年・西暦1597年)に創業した、日本に現存する中で13番目に古い酒蔵。上杉家御用酒屋でもあり、日本酒「東光」「洌」等を醸造している。醸造アルコール等の添加物を用いず、純米酒のみを醸造する全量純米蔵。社是に「自然との共生」を謳い、原料由来の廃棄物を一切出さない廃棄物ゼロの酒造りを行っている。

株式会社小嶋総本店 本社

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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