田んぼの自動抑草ロボ「アイガモロボ」来年度発売へ 井関農機から2億円調達 販売に向けて連携強化

ヤマガタデザインのグループ会社で田んぼの自動抑草ロボット「アイガモロボ」の開発に取り組む有機米デザイン株式会社は、井関農機株式会社より2億円の資金調達を完了したことを発表した。

井関農機が国内のベンチャー企業に投資を行ったのは今回が初めて。有機米デザインは日本を代表する農機メーカーである井関農機とともに、来年度から全国でアイガモロボを販売するための準備を進めていく。農業者の課題解決を通じて、国が掲げる2050年の(耕作面積あたりの)有機農業の面積比率25%の目標達成にも貢献していく。


資金調達と経緯について

来年度のアイガモロボ販売を見据え、販売、量産体制などを強化すべく資金調達(シリーズA)を実施。有機米デザインと井関農機は有機栽培をはじめとした環境負荷の低い農業に向けた農機開発や地方都市との連携などの面で共通点が多く、2020年3月から協業の可能性を検討し、2020年6月から実証試験などでも連携。2021年6月には開発と販売の両方で業務提携を行っていた。今回調達した資金で量産へ向けた生産体制構築を進め、全国の井関農機が持つ販売とメンテナンスのネットワークを活用し、アイガモロボの普及に務めていく。


田んぼの自動抑草ロボ「アイガモロボ」

アイガモロボは田んぼの雑草を抑制するロボット。代掻き後の水田を自律航行して、水中を撹拌し泥を巻き上げることで光を遮り、土の物理性に影響を及ぼし、水面下にある雑草の生長を抑制する。除草剤を使わずに雑草が生えにくい状態をつくることで、除草にかかる労力を大幅に削減できる。これまでの実験では一定条件においてアイガモロボによる抑草効果が確認され、現在は量産化に向けた技術課題の解決と品質向上に取り組んでいる。また、今年度は様々な条件の異なる33都府県の圃場にて、量産へ向けた実証実験を210台体制で実験する。

アイガモロボ開発の背景
2012年より元日産自動車のエンジニア2人を中心に、有機米栽培における大きな課題の一つである除草手間を極小化することを目的としたアイガモロボの開発がスタート。その後、ヤマガタデザインに開発の母体が順次移行され、実用化に向けて更に加速するべく、2019年に有機米デザイン株式会社(設立時ヤマガタデザイン100%出資)を設立。東京農工大学との共同研究契約を締結した。


有機米デザイン株式会社

街づくり会社のヤマガタデザインの出資により2019年11月に設立。有機米の栽培における課題を解決し、農業者の所得向上と有機米マーケットの拡大に取り組むことを目的に、有機米栽培の大きな課題となる除草作業を省力化する自動抑草ロボットの開発や有機米栽培のノウハウの確立に向けた研究開発に取り組む。東京農工大学とは有機米の栽培に関する知見の収集と諸課題の解決に向けた共同研究を2020年に開始。


井関農機株式会社

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からユーザーの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供を行うとともに、温室効果ガスの低減に向けた商品開発 や環境保全型農業の面積拡大に向けたイノベーションに取り組んでいる。

関連サイト
井関農機株式会社


ヤマガタデザイン株式会社

地方都市の課題を希望に変える街づくり会社として、庄内地方から日本の地方都市の課題を解決するモデルの創出に取り組んでいる。田んぼに浮かぶホテル「スイデンテラス」によって、人口減少が続く庄内の関係人口、交流人口を獲得し、全天候型児童遊戯施設「キッズドームソライ」を通じて地方都市の教育環境向上に取り組んでいる。同時にUIJターンの促進と地方都市の人材獲得のため、仕事と暮らしの情報を発信するウェブサイト「ショウナイズカン」を運営している。また、課題が山積している農業にも本格参入し、有機農業による農作物の生産と販売を行うとともに行政と連携した農業経営者の育成や、有機農業に関わるハード開発に力を入れている。(有機米デザインは、ヤマガタデザインのグループ会社)

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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