
2023年4月1日から改正道路交通法が施行。これにより、特定の条件下ではドライバーによる一切の操作が不要となり、自動運転システムが全ての運転操作を行うことができる自動運転のレベル4が解禁された。
NTTはデジタルツインやAIを活用し、自動運転を始めとするモビリティ関連技術の研究開発も進めており、それらの研究開発の進捗について紹介していく。
シグナルフリーモビリティ・ロボット配送を実現へ
デジタルツインコンピューティング
NTTが掲げる「IOWN構想」の構成要素の1つとして、DTC(デジタルツインコンピューティング)がある。DTCは、現実空間のヒト・モノ・コトのさまざまなデジタルコピーをサイバー空間で表現したうえで、データ分析や未来予測などのシミュレーションを行う。その結果に基づき、現実空間のプロセスなどの改善や最適化に繋げるというものだ。例えば、人流や交通量のデータと都市の基礎データを結び付けることで、最適な交通環境の制御が可能になる。
シグナルフリーモビリティ
シグナルフリーモビリティとは信号機なしでも車が衝突しないということ。
サイバー空間で解析・予測した、車同士が衝突しない状態を実世界にフィードバックし、他の車と通信しながら最適な速度や車間距離をキープするように各車を制御する。渋滞の緩和や事故のリスク低減にも役立つこの交通制御技術により、信号機なしでも車が衝突しない未来を実現しようとしている。
ロボット配送
2022年10月~11月に「アーバンネット名古屋ネクスタビル」内の一部店舗を対象として、ビル内の混雑状況などを予測した自律的かつ効率的な「ロボットによるフードデリバリ」の実証実験を行った。
この実証実験では、ロボットやエレベーターなどのビル設備情報や経路・店舗の混雑情報などをクラウドに集め最適化シミュレーションを行うことで、フードの注文完了後にロボットが人の指示を介さずに自律的に最適なルートを検索し、店舗に集荷に向かい、該当フロアへの配送を行った。
次のステップとして、2023年1月からは対象店舗・利用者を広げて実証事件を進行している。
AIで高度な雑談、インフラ設備点検、災害時の電源車配車プラン生成
AIを活用し、NTTではドライビングパートナーとしての高度な雑談が出来る対話型AIや、人力に頼ることの多かったインフラ設備の点検、災害時の電源車配車プランの生成、農機の広域自動走行と遠隔制御などについても、技術開発を進めている。
雑談対話AI
従来の大半の対話システムは、話者の発話から得られる情報のみを入力とすることが多く、周囲のリアルタイムな画像情報や位置情報などを情報として取り込めないことが課題だった。NTTは車から見える移り変わる景色を話題として、パートナーのように知識応答や共感応答をすることのできる対話AIを研究している。
この雑談対話AIではNTTが構築した深層学習に基づく大規模テキスト対話モデルに、ドライブ中の対話データや周辺情報データを追加学習することで、景色として見える画像情報や関連する外部知識に基づいた自然な対話を実現している。これにより、日々繰り返される対話への適用や、居眠り運転・漫然運転防止の実証実験に取り組むとしている。
社会インフラ設備の錆検出
画像認識AIを用いて、複数のデジタルカメラを搭載したインフラ設備点検用車両で撮影した沿道の画像からさまざまな社会インフラ設備に発生した錆を高精度に検出にする。
複数のインフラ設備を一括で識別・点検できるため、インフラ管理者ごとに実施していた現地点検の集約による稼働削減が期待でき、画像認識AIによる点検のため、点検員によって発生していたばらつきをなくし、点検品質の均一化が可能となる。
4Dデジタル基盤の実現に向けた技術
NTTは、ヒト・モノ・コトの多様なセンシングデータを精緻かつリアルタイムに高精度空間情報データベース上に統合。高速に分析処理を行い、様々な産業分野に提供することで、様々な社会課題の解決や新たな価値創造をめざす「4Dデジタル基盤」の研究・開発を推進している。
配車プラン生成技術
AIを活用し、災害時の被災設備について優先的に復旧する設備を算出。復旧設備に対して電源車配車ルートを最適化する。具体的には、停電による影響度が大きい基幹設備や、蓄電池の残量が少ない通信設備を優先的に巡回するルートを自動で生成することができ、通信サービスなどの早期復旧に貢献することができる。
災害対応以外にも、設備点検や故障対応のみならず、宅配まで様々分野において配車最適化への応用も見据えている。
農機の広域自動走行・遠隔監視制御
農機の無人状態での完全自動走行に向け、従来よりも安定して円滑な農機の広域自動走行と、その遠隔監視制御を実現。今後はドローンや草刈・収穫ロボットといった農機以外のデバイスに対して遠隔監視制御対象を拡大し、より多数・より広域での農機の遠隔監視制御・農業の自動化を進めていく。
このようにNTTはモビリティに関する技術開発を進め。利便性を向上させて、かつ安心・安全にモビリティを活用できる未来の実現、及び「IOWN構想」実現への貢献を目指すとしている。
NTT次世代ネットワーク「IOWN1.0」提供開始へ 超高速/大容量/低遅延/ゆらぎゼロ「IOWN構想」とは何か? 特長とメリット解説
NTTグループ4社 自律走行ロボットとモバイルオーダーアプリでビル内のフードデリバリーを自動化 混雑情報なども考慮
NTTが信号機のないモビリティ社会を実現する「分散深層学習技術」を公開 デジタルツインで少し先の未来を予測 IOWNの実現へ
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日本電信電話株式会社
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