一般道でも5分単位で予測「AI渋滞予測モデル」を開発 公共・カーナビ・物流業・旅行業、Co2削減など、多くの業種・業態に活用可能 ジオテクノロジーズ

ジオテクノロジーズ株式会社は、同社が保有する「生きた」ビッグデータに、AI技術の深層学習を組み合わせることで、主要な幹線道路だけでなく、一般道も対象とした高精度な「AI渋滞予測モデル」の開発を行うことに成功した。AI開発においては、これまでデジタル組織開発とAI技術実装を主軸としたDXソリューションで、530社以上を支援してきた株式会社AVILENに支援を依頼した。


「AI渋滞予測モデル」の特長

1). 高速道路だけではなく一般道の渋滞予測ができるので、ドライバーは日常の生活から渋滞を回避できる
2). 5分単位という高精細な予測ができるため、高精度の渋滞を回避するルートを算出することが可能に
3). リアルタイムの交通情報を入力することで、事故などの突発的な渋滞の変化にも追従した予測をすることができるため、よりストレスの少ない快適な運転を実現


渋滞による経済損失と環境問題

道路交通渋滞の状況は深刻化していて、全国で年間に発生する渋滞損失は一人当たり年間約30時間、貨幣価値に換算すると約12兆円にも上り、経済効率の低下等を引き起こす大きな原因の一つとなっているという(*)。

また、環境問題に直結するCO2排出量という点で見ても、渋滞時のCO2排出量は通常時の約2倍にも上ることがわかっており、渋滞は深刻な環境問題といえる。

同社は、創業より日本全国のデジタル地図の開発とアップデートを行ってきた。さらに近年では、さまざまな交通課題を解決するために高精度な人流データの収集と活用に取り組んでいる。

日本全国規模の高精度の渋滞予測を実現することで、より効率的な道路移動を可能にし、社会問題緩和や人々の生活をより豊かにできるのではないかと、今回の研究開発に踏み切った。
*「効果的な渋滞対策の推進 – 国土交通省」より(https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-perform/h18/07.pdf)


一般道も対象に5分単位の予測を実行

すでに渋滞予測と呼ばれるサービスは他にもあるが、多くは数時間単位の予測や、高速道路や主要幹線道路に限定されているなど、実際には実用性に課題があり、より広範囲で精度の高い渋滞予測が求められている。

今回開発した渋滞予測モデルでは主要な道路だけでなく多くの一般道も対象とし、5分単位での予測を行うことができる。交通状況は地域性や道路構造、時間帯など、多くの複雑に絡み合う条件に作用されるため、このような細かい予測は深層学習を用いても難しいことだったが、最新の深層学習モデル(*)を組み込むことで高い性能を実現したという。
*GCN (Graph Convolutional Network):グラフ畳み込みニューラルネットワーク


研究開発の概要

同社が保有する交通情報や気象情報等のデータを元に、特定道路における15分後、60分後の車速について予測精度の検証を行った。深層学習をグラフデータに適用するGCNを応用した最新モデルを採用している。

【実験対象】
・期間 2023年1月19日~2023年1月31日の13日間
・範囲 東京都の一部範囲(私道以外の道路)

【実験の結果】
全体で誤差が少なく、高い精度で渋滞の予測ができていることが明らかになった。
・15分後の車速予測は、全道路のうち92%以上が誤差±20km/h以内(図1)に収まる結果。
・60分後の車速予測も、全道路のうち88%以上が誤差±20km/h以内(図2)に収まる結果。
・仮に行程100kmで所要時間が2時間だとすると予測結果は15分以内の誤差に概ね収まる精度。




【追加検証結果】
・今回のモデル(東京都の一部範囲)で、東京都の他範囲を検証した場合も推論精度が出ていることを確認
・旧来のLightGBM(*)等のモデルよりも汎用的に扱えるという示唆を確認
・渋滞が発生・解消された車速の変化にも追従していることも本モデルで対応可能なことを確認
* LightGBM (Light Gradient Boosting Machine):機械学習アルゴリズム


今後の展開

今後はモデルの評価をさらに進めるとともに、高速道路入口や踏切付近の特殊区間の判定や工事・事故情報、サグ部・上り坂情報等を考慮し更なる精度向上の上、今年度中の製品化を進めていく。

なお、同社は、「地球を喜びで満たそう」をミッションに、今回の研究開発の成果を活用し、日本の交通における社会問題の解決に取り組んでいく、としている。

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ロボスタ編集部

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