東芝デジタルソリューションズ株式会社は、プライベートブロックチェーン「DNCWARE Blockchain+」を活用した電子契約システムの提供を5月9日から開始したことを発表した。この電子契約システムは長崎市に導入され本年6月から本格運用が開始される予定。
この電子契約システムは、国や地方公共団体で電子化が進む発注者・受注者間の契約手続きを対象に、同社独自のブロックチェーンの活用により、高い信頼性と透明性をもつ電子契約のデジタル化を実現。産業競争力強化法に基づく「グレーゾーン解消制度」において、建設業法および電子署名法についての「適法性」を日本で初めて確認された。
グレーゾーン解消制度と適法性とは
グレーゾーン解消制度とは、経済産業省を窓口とし、現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても、事業者が安心して新事業活動が行えるよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度。
また、「適法性」とは建設業法施行規則第13条の4 第2項および電子署名法第2条第1項の条件を満たしていることを確認するもの。(建設業法:2022年7月21日回答、電子署名法:2022年7月29日回答)
長崎市で事務処理時間や収入印紙額の削減、テレワークなどで導入効果
長崎市とは、2021年9月から1年間、この電子契約システムによる契約事務手続きの改善と実用性について連携して検証した。その結果、事務処理時間の削減、収入印紙額の削減、テレワーク実施体制の環境整備などの導入効果が認められ、今回のシステム導入に至ったという。
従来、電子署名で利用する秘密鍵は特定認証業務で取り扱う必要があり、秘密鍵を入手するためには個人や法人を確認する書類が必要になるなど、手間やコストがかかっていた。また、電子署名の利用はPDFやOfficeファイルに限定されており、図面、写真などは利用できなかった。
同社は、ブロックチェーンの暗号化技術により、電子入札で利用している電子証明を内蔵したICカードや、ID・パスワードと紐づけられた秘密鍵(ウォレット)を用いて、手間や新たなコスト負担なく利用できる電子契約システムを実現した。
また、この電子契約システムでは、PDFやOfficeファイルのほかにも、さまざまなファイル形式に対応している。契約に必要なさまざまな添付書類、契約後の各種文書(書類や図面、写真など)の提出においても、簡便に電子署名して、ブロックチェーンに記録を残すことが可能となる。
電子契約システムの特長
業務の流れを止めない仕組みを提供
電子調達システムで利用しているICカードや、ID、パスワードでログインでき、これまでのシステムの延長線上で電子契約を利用できる。電子調達システムと密接に連携することで、発注者、受注者ともに契約案件一覧の確認や、個々の契約ステータスをシステム上で確認することができる。
また、IC カードを使わない場合でも、秘密鍵(ウォレット)を使って電子契約することができ、新たな負担をすることなくシステムを利用できる。
必要な書類の整理・共有と合意情報をブロックチェーンに記録、紙への押印は不要
この電子契約システムでは、契約区分や契約内容に応じた必要書類、各種様式をテンプレートとして指定でき、契約締結に必要な書類を、発注者は漏れなく提示でき、受注者は提示された様式を素早く入手できる。
また、契約書以外の各種添付書類についても電子署名をしてブロックチェーンに記録することができるので、受注者から提出する際に紙への押印は不要になる。
契約事務に必要な機能を実装
この電子契約システムは、建設業法および電子署名法についての適法性を、グレーゾーン解消制度にて確認されている。
契約事務で必要とされる、差戻、契約辞退・解除などの機能実装や、三者間契約や共同企業体(JV)などの契約にも対応しているので、契約事務をフルデジタル化できる。
同社の電子調達システムとこの電子契約システムの連携
同社は、一般財団法人日本建設情報総合センター(JACIC)が提供する電子入札コアシステムを利用した電子調達システムを20年間提供している。
このたび提供開始する電子契約システムは同社の電子調達システムと連携でき、電子契約の締結だけでなく、紙で運用している発注者と受注者との契約事務全般をフルデジタル化して、調達事務全般をペーパーレス化することができる。
ブロックチェーンを活用してDXを推進
同社は「今後も、国や地方自治体のお客さまに向けて、ブロックチェーンを活用したアナログ的規制緩和への提案や、DX 推進に寄与する各種システム提供を拡充してまいります。当社のブロックチェーンは、電子契約に限ることなく、電子文書の真正性や非改ざんを証明する手段、地域通貨やボランティアポイントなどの仕組み、地域農業の生産から国内外の二次流通までのトレーサビリティ確保など、さまざまな社会課題を解決する基盤となり、さらなる自治体DX推進に貢献します」とコメントしている。