大日本印刷(DNP)は、現実(リアル)の施設等の建築と並行して、建築用のデータを基に高精細なバーチャル空間「メタバース」を構築し、両空間の連動による企業と生活者のコミュニケーション等を支援するサービスを2023年6月に開始する。
新設する施設等を活用した各種展示会・株主総会・就職説明会・社内向けイベントなどを、リアルとバーチャルの両面でサポートする。
社員のエンゲージメント向上や顧客とのコミュニケーションの活性化につなげる
DNPは2021年から、リアルとバーチャルの空間を連動して、新しい生活者の体験と経済圏を創出する「XRコミュニケーション事業」を展開しており、安全・安心に楽しめるバーチャル空間を構築するXRロケーションシステム「PARALLEL SITE(パラレルサイト)」を提供している。
今回その機能を拡充し、メタバースの企画から構築・運用までトータルに支援。本サービスによって、完成前のリアル施設の一足早いバーチャルでの公開と体験、完成後の施設を遠方の顧客や社内外の関係者によるバーチャルの利用など、社員のエンゲージメント向上や顧客とのコミュニケーションの活性化につなげる。
建築データを基にリアル施設と並行してメタバースを構築
近年テレワークやワーケーションが広がり、働き方や暮らしの多様化によって、リアルな施設の利用方法や位置づけが大きく変化し、バーチャル空間でもリアルな施設と同様の体験や働き方をしたいというニーズが高まっている。こうしたニーズに対してDNPは、建築データを基にリアル施設と並行してメタバースを構築し、多様な企業コミュニケーションを支援するサービスを開発。
DNPは本社がある東京・市谷地区の再開発を進める中で、2022~2023年に自社ビルの建築データを活用してメタバースを構築し、「メタバース納会」や「社内向けイベント“未来づくりミーティング”」を開催。これらのイベントに参加した社員のアンケートからは、「約6割の社員が満足」「約7割の社員がポジティブな気持ちになれた」など、エンゲージメント向上やコミュニケーション活性化の成果が出ており、こうしたノウハウなども本サービスの開発に活用している。
サービスの特徴
さまざまな建築データに基づくメタバースの構築が、最短2カ月から可能に
DNPは、建築関連の3次元データに加え、各室の名称・面積、材料・部材の仕様などの属性情報をあわせ持つBuilding Information Modeling(BIM)データやCADデータ、3次元座標値・色情報で構成される「点群データ」など、さまざまな建築・設計データを基に、最短2カ月からメタバースを構築することが可能。
最大1,000名まで参加できる大型イベント等でも活用可能
最大1,000名までメタバースに同時に参加可能なため、就職説明会のほか、国内外の社員が一堂に会する大型イベント等に利用することが出来る。
また、参加者同士が会話できる音声チャットや画面共有の機能、イベントに合わせたクイズパネル等の機能も提供するとしており、今後、DNPが開発中の、生活者個人を特定するアイデンティティ情報とアバター情報の管理・認証を可能にする「PARALLEL ME」と本サービスを連動させて、利用者の個別認証も可能にしていく予定。
メタバースで得られた各種データを分析して、リアル空間と連動した施策に活用
本サービスでは、メタバース参加者の属性や利用回数、コンテンツ視聴回数等を把握・分析が可能。メタバース上で関心が高かったコンテンツや体験企画等を参考にして、リアルの施設を活用した企画の設計やマーケティング、各種イベントとの連動も可能となっている。
価格(税込)
○メタバースの初期構築費 : 800万円~
○メタバースの運用費 : 50万円~(1日で100人規模の利用者を想定)
※メタバースを構築する施設の規模や内容、提供するイベントなどの体験内容によって価格は変動。
今後の展開について
DNPは、オフィスビルや商業施設等を保有する企業や、それらの施設の建設会社・設計事務所・デベロッパー等に本サービスを提供し、関連サービスを含め、2028年度までに40億円の売上を目指す。
また今後は、メタバース参加者のアバター生成の機能と連動させて、外見・特徴・属性情報等がわかる機能の拡充や、オンライン会議等のコミュニケーションツールとの連携を目指し、オフィス等で働く社員の円滑なコラボレーションや働き方の変革に貢献していくとのこと。
大日本印刷株式会社