東工大発elleThermoと旭化成、身の回りの環境エネルギーを収集してIoT端末などのシステム電源へ活用する技術を開発

elleThermoと旭化成エレクトロニクスは実証実験を実施し、旭化成エレクトロニクスの身の回りに存在するわずかな環境エネルギーを収集(ハーべスティング)してIoT端末などのシステムの電源電圧に変換するデバイス昇圧DC/DCコンバーターAP4470ならびにAP4473と、elleThermoの半導体増感型熱用電池(Semiconductor-Sensitized Thermal Cell:STC)を活用し、低温帯(80~90℃)の熱を電気信号に変え、Bluetooth通信及びLEDの点滅を確認したと発表した。

80℃の恒温槽の熱で2時間以上の電気信号送信、90℃の水中下で発電し赤色LEDが点灯

東工大発ベンチャー企業elleThermoは色素増感型太陽電池における「色素の光励起」を「半導体の熱励起」に変えて発電する熱エネルギー変換技術STCの研究開発を進めており、旭化成エレクトロニクスはエネルギーハーベスティング向けの独自の回路技術により、一次電池を使用しないサステナブルなシステムの実現を目指している。

これまで、身の回りの小さな環境エネルギーは収集されずに、捨てられていたが、旭化成エレクトロニクスは独自の回路技術により、「1μWで起動開始する昇圧回路」と「収集したエネルギーのうち、26nAで動く充放電制御回路」をワンチップに内蔵した、昇圧DC/DCコンバーターを開発し、身の回りの小さな環境エネルギーの収集に取り組んでいる。

この旭化成エレクトロニクスの昇圧DC/DCコンバーターと、室温程度の低温帯の熱で発電するSTCとを組み合わせることで、低温帯の熱を活用したエネルギーハーベスティングに関する実証実験を実施。実験の結果、80℃の恒温槽の熱で2時間以上の電気信号送信、及び90℃の水中下で発電し、赤色LEDが点灯することを確認した。



80℃の「中」の熱エネルギーで長期データ送信可能。写真はSTC電圧値を送信中

冷却源を使用せず、90℃のお湯の「中」の熱エネルギーで赤色LED点灯

今後の展望

STCは、発電セルを積層することで出力電圧を大きくすることが可能。また、発電素子の出力電圧が大きい場合、AP4470は昇圧機能を使用せずとも「動作電流26 nAで動作する電圧監視IC」として応用が可能で、両者の特徴を生かして、体表温や室温からのエネルギーハーベスティングが期待できるとしている。

例えば体温で稼働するヘルスケアパッチによる血糖値などのバイタルセンシングへの応用や、太陽電池の使えない暗所での資産や物流のトラッキングを室温付近の熱という再生可能エネルギーで実現できる可能性があるとのこと。

今後、旭化成エレクトロニクスとエレサーモは、AP4470及びSTCを活用し、より身近に存在する、室温付近の熱エネルギーを電力として活用できるよう研究開発に取り組んでいく。

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ロボスタ編集部

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