日本科学未来館は、アート作品を通じて科学技術について考える常設展示「零壱庵」において、「太陽の通り道 ― 霧のNFTがたどる永遠」を2024年1月24日(水)から公開する。
零壱庵は、アート作品を通して科学技術とともに変わり続ける人の認識や社会について考えるギャラリーであり、同展示は、アーティスト A.A.Murakami(デザインユニット)による独自のテクノロジー観「儚(はかな)いテクノロジー(Ephemeral Tech)」を体験できるインスタレーション作品だ。
霧や泡といった物理現象とデジタル技術を掛け合わせ、デジタル世界の新しい体験方法を探る体験型NFT(非代替性トークン)アート作品「The Passage of Ra(太陽の通り道)」を展示する。
「The Passage of Ra(太陽の通り道)」について
2020年代に入り、メタバースやNFT、AIといった革新的なテクノロジーが急速に普及しており、これらのテクノロジーは劇的な変化を社会にもたらすとともに、人間の創造性を拡張し、新たな表現を生み出す原動力ともなっている。
日本で初の展示となる同作品は、現実とデジタルの2つの霧を目で追いながら、感覚的にデジタル世界に没入することで、テクノロジーの未来を想像する。会場では、展示空間で発生させた霧が鑑賞者の目の前を通り過ぎスクリーンに向かっていく様子と、仮想空間上の霧が太陽へと向かっていく様子を見ることができる。A.A.Murakamiは、霧のように、手に触れると消えてしまうような現象と、スクリーン上に存在する触れることのできないデジタル技術を掛け合わせることで、デジタル世界を現実空間まで拡張し、多感覚的に体験できる表現手法「儚いテクノロジー」を提唱している。アーティスト独自のテクノロジー観に触れることで、鑑賞者それぞれがここから先の科学技術との関わり方について、考えを巡らせる機会を提供する。
▼同展示概要
タイトル | 零壱庵「太陽の通り道 ― 霧のNFTがたどる永遠」 |
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公開日 | 2024年1月24日(水) |
展示エリア | 日本科学未来館 3階 常設展示ゾーン「未来をつくる」 |
開館時間 | 10:00~17:00(入館券の購入は閉館時間の30分前まで) |
入館料 | 大人630円、18歳以下210円 |
総合監修 | 伊東順二氏(美術評論家) |
企画制作 | 日本科学未来館 |
展示ページ | 常設展示 零壱庵「太陽の通り道」 |
体験型NFTアート作品「The Passage of Ra(太陽の通り道)」
A.A.Murakamiによる「The Passage of Ra(太陽の通り道)」は、2023年に欧州最大のNFTの祭典「NFT Paris」で初めて披露された体験型NFTアート作品で、日本では今回が初の展示となる。仮想空間上で取引されるNFTアートは、ブロックチェーンと呼ばれるデジタル・データベースに作品データやその所有者の記録を永遠に刻むことができる。同作品は、古代エジプト神話に登場する生と死を永遠に繰り返す、生命の象徴である太陽神ラーをモチーフに、ラーの死生観と霧のリングを重ね合わせながら、現実とデジタルにおける「存在」の本質について問いかける。
現実とデジタル世界双方の空間に展開される同作品は、フォグマシンから次々と発射された霧のリングが、あたかも仮想空間に生成されたデジタルの霧のようにスクリーンに映り、太陽へと向かっていく様子を見ることができる。鑑賞者は、2つの霧を介した現実とデジタル世界のはざまやつながりを、感覚的に体験することになります。テクノロジーの中に「儚さ」のような要素を取り入れた本作品を鑑賞することで、新たな視点でテクノロジーとの付き合い方が見えてくるのかもしれない。また、機能性や生産性といった要素から一歩離れることで、どんなテクノロジーが私たちの生活をより豊かなものにするのか想像する機会になるだろう。
アーティスト A.A.Murakami
ロンドン・東京を拠点に活動する日本人の建築家 村上あずさ氏と英国人のアーティスト アレクサンダー・グローブス氏によるアーティストデュオ。2020年結成。スマートフォンやパソコンなど見慣れたインターフェースを超えて、自然とデジタルの境界が溶け合い、あいまいになっていくような体験を生み出していく作風が特徴。ニューヨーク近代美術館(MoMA)やジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター(フランス)、M+(香港)にも作品が所蔵されるなど、国際的に活躍の場を広げている。
日本科学未来館