準天頂衛星みちびきとAIで「漁業操業情報の自動作成」に着手 オーシャンSTが内閣府「みちびきを利用した実証事業」に採択

水産業のための漁業者支援サービス「トリトンの矛」を提供しているオーシャンソリューションテクノロジーは、内閣府の「みちびきを利用した実証事業」に採択。現在、準天頂衛星システム(準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システム)「みちびき」を利用し、「みちびきを利用したAIによる漁業操業情報の自動作成の実証」に取り組んでいる。

事業の目的

オーシャンソリューションテクノロジーは操業中の漁船の位置情報等をAIで解析、その特徴から漁法や漁獲努力量(CPUE・Catch Per Unit Effort)を推定し、より正確に判定することで、MSY(Maximum Sustainable Yield:生物資源を減らすことなく得られる最大持続生産量のこと)に基づいた資源評価、ひいては持続可能な水産業に貢献したいと考えている。

みちびきを利用する必要性


AIが漁法や漁獲努力量をより正確に判定するには、より正確な操業位置情報が必要となる。また、AI解析のトリガーとなる漁船の出港・帰港を判断し、陸(港や沖磯も含む)に接岸した状況は、サブメータ以下の誤差に留めなければならない。

GPSで位置情報を取得したところ、100m前後の誤差が認められるケースが多発するため、沖磯への接近をAIが帰港と誤認識して位置情報の取得が停止する事や、航跡に乱れが生じて漁獲努力量の判定に大きな誤差が生じる可能性が示唆される。(図1)

そこで、日本の衛星測位システム「みちびき」によるサブメータ級測位補強サービス(SLAS)を利用することで、より正確な漁獲努力量の測定を実現するとし、さらに、センチメートル級測位補強サービス(CLAS)の利用にも挑戦し、さらなる操業の効率化や安全性の向上に向けた活用の可能性にも期待をしている。

実証実験の概要


サブメータ/センチメータ級測位補強サービス(SLAS/CLAS)を受信可能なGNSSモジュールを搭載したIoT機器を漁船に実装し、AIの学習用データとして操業中の航跡を取得。そして、実証参加漁業者にヒアリング形式で航跡に対してのラベリングを行い、漁獲努力量の推定精度を確認している。尚、実証場所は⻑崎県(離島地区)を中心に複数地域の沿岸漁業者から協力を得ている。

このように、漁船の航跡から漁獲努力量をAIで判定する取組みは世界初の試みであり、現在、多くの漁船に洋上のカーナビシステムと同様な使い方として、GPSプロッターを搭載して航跡を記録してもらっているが、ネットワーク接続がほとんどなされておらず、漁獲努力量の推定に用いられたケースは見当たらず、他に類をみない貴重な実証になっている。

持続可能な水産業を確立するには正しい水産資源量の把握が最も重要であり、資源評価で重要な指標の一つである漁獲努力量の正確な推定は極めて重要である。正確な漁獲努力量の推定をAIが実行するためには、前述の通りサブメータ級以上の高精度な位置情報が必要不可欠であり、今回の実証事業で、サブメータ級以上の精度を活用する意義は極めて大きい。

 らに、EEZ(排他的経済水域)付近で操業する漁船は数多く、携帯電話の電波が入らない環境において、津波や急な天候の変化や、将来的なJアラートへの対応は漁業者の安全操業にとって大変有意義な内容であり、水産資源評価への利活用にプラスして、漁業者へ安心安全を届けられると確信しているとオーシャンソリューションテクノロジーは述べている。

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ロボスタ編集部

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