流通業・小売向け新技術を紹介する第40回流通情報システム総合展「リテールテックJAPAN 2024」や、今後の商空間デザイン&ディスプレーを紹介する「JAPAN SHOP」等から構成される「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」が、2024年3月12日から15日の日程で、東京ビッグサイト東展示棟・西展示棟で開催された。無人販売や生成AI活用のアバター接客などのソリューションが目立ったが、ロボット関連の展示もあったのでレポートしておきたい。
また、3月12日-14日の日程で東京ビッグサイト南展示棟にて開催された介護テクノロジーを紹介する「第7回Careテクノロジー東京」や介護施設ソリューションを紹介する「第10回CareTEX東京」など4つの専門展から構成される「東京ケアウィーク’24」にもロボット関連の展示があった。記事の後半では、こちらも合わせて紹介する。
■ネコ型配膳ロボットでのテーブル会計を実現
■ロボットを使った売り場の自動チェック
■電子棚札とロボットとの連携
■店舗バックヤードから店内搬送用のAMR
■アパレルにも適した都市型自動倉庫
■物流ロボット向けの無線アクセスポイント
■「セキュリティショウ」では警備ロボットも
■店舗でも生き残れるサービスロボットとは
■アイリスオーヤマの清掃ロボットはエレベータ連携を検討中
■FUJIの移乗サポートロボット「Hug」に防水タイプが登場
■「かまってちゃん」で介護士をサポートする抱っこロボは今夏商品化予定
■子ども型見守り介護ロボットにニーズはあるか
■Pudu Roboticsのサービスロボット累計出荷台数は7万台超
■バイタルチェックを簡単に
■PepperもChatGPTで巧みなおしゃべり
■ネコ型配膳ロボットでのテーブル会計を実現
POSなどで知られる東芝テックは飲食店向けソリューションとして、ネコ型配膳ロボットで現金決済を行うソリューションを出展。最近の一部ファミレスでは、キャッシュレス決済についてはテーブル上でできるようになっている。だが現金に関してはレジで決済を行う必要がある。
そこで東芝テックはネコ型配膳ロボットとして広く知られるPudu Roboticsの「BellaBot」に、日本コンラックス製の小型(従来比6割くらい)現金決済端末「PayCube」を搭載。テーブル上のタブレットから呼び出して、そのまま決済できるようにした。いわば「移動型対面セルフレジ」である。
もちろん、通常の配膳ロボットとしての機能も持っている。複数台の配膳ロボットを使っている店舗では役割分担をさせる方法もあるだろう。今回は参考出展だが、今後、展開していきたいとのことだ。
■ロボットを使った売り場の自動チェック
サイバーリンクスはロボットとAI画像処理を使った売り場チェックソリューションを参考出展。ロボットが売り場の棚を走行し、棚札の間違いや、商品の欠品などをチェックすることができる。お店のなかの人が使うこともできるし、メーカーが棚の状態をチェックすることも可能だ。
以前からAIソリューションのアピールとして出展されていたものだが、今回出展されたものは、商品画像認識エンジンの高性能化と商品画像特徴量のデータベース化によって高速マッチングが可能となり、さらに認識精度が高くなったという。ロボットを使わなくても、固定のカメラを使って同様のソリューションを提供することも可能だ。
■電子棚札とロボットとの連携
イシダはロボットと電子棚札との連携を、やはり参考出展で紹介。ロボットが自走して商品割を認識し欠品情報を収集するので、欠品チェックなど人手負担を削減することで販管費削減に貢献する。将来的には、欠品を発見したら自動発注をかけるようなシステムへの展開も視野も入れる。
ロボット本体は中国製で、PoCも中国で行っているとのこと。売り場のマッピングなどはもちろんだが、事前に棚札に独自パターンを表示させて学習させる必要があり、棚替えを行うとなると棚割りを再び学習しなおす必要がある。
これも固定カメラでも同じようなソリューション展開は可能だが、展示会ということでロボットを使ったとのこと。客先からは「欠品チェックだけでなく棚割りチェックも閉店後にやってもらえると効果があるかもしれない」と言われているとのことだが、同時に「もう一つ何かほしい」とも言われているそうだ。サービスロボット全般に言えることかもしれない。
■店舗バックヤードから店内搬送用のAMR
FUJIは、低床型のAMR「Rally」を今回も出展。前回のリテールテックでは、アピールのためにスマートロッカーを積んでいたが、今回はより実際の現場にちかい、カゴ車を搭載して運ぶ様子をデモしていた。AMR上部にはピンがついていて、既存のカゴ車を運べるようになっている。
店舗内を走らせてマップを作成後、かご車を取りに行く場所と届ける場所を設定。スケジュールをセットするとロボットが走行する。専門のSIerは不要だという。最大可搬重量は400kgで、飲料や資材など重たい商品をバックヤードから店舗内に運ぶ業務の一部の自動化を想定している。現在、ホームセンター大手で実証実験中とのことだ。
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■アパレルにも適した都市型自動倉庫
Cuebus(キューバス)は リニアモーター内蔵のタイルと、磁石内蔵のトレイを使った独自方式のロボット倉庫「CUEBUS」の最新型(第3世代)を出展。耐荷重を100kgとし、レール幅も改良。耐久性や精度も向上させた。
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この仕組みを使って、アパレル業界で用いられる「Zハンガーラック」を、そのまま運ばせる。折り畳まないのでシワにならない。しかも収納だけではなく、搬送も担わせることができるというわけだ。
「CUEBUS」のトレイは複数を組み合わせることでさらに耐荷重を上げることもできる。アパレルだけでなく、製造業向けの展開事例もあるとのことで、遠からず公開されるそうなので期待したい。
■物流ロボット向けの無線アクセスポイント
Huaweiは「QuickBin」という物流向けロボットソリューションを動態でデモ。ピッカーと搬送用の2種類のロボットを共同させるソリューションで、日本国内では2023年10月に三井物産グローバルロジスティクス(MGL)が導入している。
実は屋内向け無線アクセスポイント「AirEngine」Wi-Fiシリーズのためのアピール。干渉の激しい高密度環境でもロボットのような移動体に対して安定な通信を維持でき、位置情報も把握できるという。
■「セキュリティショウ」では警備ロボットも
「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」では「セキュリティショウ」も行われている。綜合警備保障(ALSOK)の「REBORG-Z」のほか、近計システムのブースでは、SEQSENSEの自律移動型警備ロボット「SQ2」が、セキュリティドアとの連携デモを行っていた。
近計システムのロボット・エレベーター連動共通プラットフォームクラウドサービス「GraySis(グライシス)」を使って、エレベーターやセキュリティドアとロボットとの連携を実現する。SEQSENSEの「SQ2」のほか、川崎重工業の搬送ロボット「FORRO」との連携も可能。
■店舗でも生き残れるサービスロボットとは
「JAPAN SHOP」では、JUKIプロサーブが5分で焼きたてピザを提供する「ピザ自販機」のほか、Preferred Roboticsの「カチャカ」、ハピロボのテレプレゼンス用ロボット「temi」、アスラテックの小型搬送ロボット「rice」、Doogの搬送ロボット「サウザー」などを店舗向けに提案していた。
JUKIではロボティクス・システムソリューションズ事業をもち、サービスロボットの導入も進めているという。「生き残れるロボット」を提供することを目指しているとのことだった。
■アイリスオーヤマの清掃ロボットはエレベータ連携を検討中
アイリスオーヤマは最新の「BROIT」のほか、「Whiz i IRIS EDITION」他をアピールしていた。さらに、ロボットとエレベーターの連携なども準備を進めているとのこと。Octa Roboticsの「Octa Link」を使った連携を検討中で、ロボットがエレベーターを使ってフロア間移動ができるようになると、そのぶん稼働率が上がり、結果的に投資対効果が高くなる。
■FUJIの移乗サポートロボット「Hug」に防水タイプが登場
ここからは、「リテールテック」と近い日程で開催された「CareTEX東京‘24」他から構成される「東京ケアウィーク’24」(主催:ブティックス株式会社)でのロボット展示をいくつかご紹介する。
まずFUJIは移乗サポートロボット「Hug」を3タイプ紹介していた。同社の「Hug」シリーズは累計で4000台出荷されており、介護ロボットのなかでも注目株である。介護者の離職理由の一因である腰痛の軽減に貢献しており、月産100台は出荷しているが、まだまだ認知度向上には課題があると感じているという。
今回の注目は、3月8日にリリースされたばかりの、アマノと共同開発した防水タイプ「Hug L1-01WP」。「WP」はもちろんWaterProofの略。防水規格 IPX6 を取得しており、介護施設や病院での浴室での移乗介助に使えるロボットである。ロボット自体の水没は禁止だが、シャワー程度であれば対応できる。ユーザーからの強い要望に対応した。
形状はこれまでの「Hug」とほぼ同じで、使い方も同じだが、防水対応させるために、実際には部品レベルからほぼ全ての設計をやりなおしたとのことだ。キャスターのロックも二つ増やした。2024年3月からの受注開始となり、実際の販売は5月を予定する。
■「かまってちゃん」で介護士をサポートする抱っこロボは今夏商品化予定
TPRは昨年プロトタイプを紹介していた「CoRoMoCo(コロモコ)」の改良版を出展。今年夏頃に法人向け販売を検討しているとのことだ。脇の下にあったバイタルセンサーは廃止、また着ぐるみ部分は脱がせやすくなった。充電用台座の上に起きやすくなり、ちょっとした動きも能動的に可能になった。
甘噛み機能などはそのまま。本体価格や月額のサーバ通信費用や売り上げ目標等は未定とのことだ。バイタル取得とケアプラン作成、そして「かまってちゃん」的にふるまうことによって入居者の相手をしつつ「介護士をサポートする」というコンセプト等は特に変わっていないとのことなので、前回のレポートと合わせてご覧頂きたい。
■子ども型見守り介護ロボットにニーズはあるか
ソニーマーケティングは介護施設内の居室で使うテレビのレンタルプランのほか、お手元テレビスピーカー、レクリエーションで使うための大画面ディスプレイ等のほか、子ども型見守り介護ロボット「Hanamoflor(ハナモフロル)」を参考出展した。
「ハナモフロル」はリビング内を移動しながら、見守りや、歌やお話など個別のレクリエーションを行うことができる子供サイズのロボット。ゆっくりとした喋り方で、相手の目をじっと見るような動きで話しかける。
現在、実用化に向けて開発中で、今回の「CareTEX」に出展した理由も、有償での実証実験に協力してくれるパートナー施設を探すため。利用施設では月単位の利用料を使ってロボットを導入することになる。興味がある施設があったら声をかけてほしいとのことだ。
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■Pudu Roboticsのサービスロボット累計出荷台数は7万台超
Pudu Roboticsは配膳ロボットや館内配送ロボット、掃除ロボットをアピールしていた。同社のサービスロボット出荷台数は累計で7万台を超えている。
■バイタルチェックを簡単に
QBIT Roboticsは館内配送ロボット「DR2」を出展。サービスロボットシステムインテグレーターとして事業を展開している同社だが、現在はロボットのほか、スマホやタブレットのカメラだけを使って血圧、脈拍、血中酸素、心拍などを簡易に測定できるシステムなどを開発し、他社との共同開発を行いたいと考えているとのことだった。
■PepperもChatGPTで巧みなおしゃべり
ソフトバンクロボティクスは「世界のロボットを、未来の力に。」というキャッチコピーで出展。Pepperは「Pepper for Care」という介護施設向けアプリの一つとして、2月にリリースされたChatGPTを使ったおしゃべりや、最近の流行歌を使ったダンスなどを披露していた。ChatGPTを使うことで、確かに以前よりおしゃべりは続くようになったが、「Pepperらしいか?」と問われると、やや微妙かもしれない。
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ロボットの見方 森山和道コラム
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森山 和道フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!