動くガンダム、アムロのセリフでお別れを告げる 最後の起動実験を花火とドローンショーで飾った「GFYグランドフィナーレ」

実物大の動くガンダムを展示してきた「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」(GFY)が2024年3月31日に終了した。同日夜、グランドフィナーレとして、トークショーと最後の起動実験「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA GRAND FINALE ~To the New Stage~」が開催された。最後の起動実験では、通常のガンダム起動演出に加えて、アムロのAIが降臨したり、水星の魔女のガンダム・エアリアルや、ガンダムシードフリーダム、ザクやシャアなどの姿が1000台のドローンで夜空に描かれ、多数の花火があがって、横浜の夜空を彩った。

©創通・サンライズ

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GFYは、2020年12月のオープン以来、175万人以上が来場した。その感謝の思いは、ドローンで描いた夜空に浮かぶガンダムと「Thank you」の文字に込められた。F00ガンダムにとって最後の起動実験特別演出は約25分間にも及んだ。

ガンダムとともに「Thank you YOKOHAMA」「Thank You」の文字が・・。©創通・サンライズ

最後の起動実験の特別演出は約25分の集大成

午後7時少し前。多くの観客がグランドフィナーレのイベントのために山下埠頭のGFYに約1500人が集結した。

グランドフィナーレを観ようと、抽選に当選した多くの観客がGFYに詰めかけた。©創通・サンライズ

グランドフィナーレの瞬間を待つ観客たち ©創通・サンライズ

F00ガンダムはやっぱりカッコいい! ©創通・サンライズ

「トークショー」の後に行われたF00ガンダム最後の起動実験・特別演出では、通常の起動実験からAIが暴走。初代ガンダムの劇中の主人公アムロがナレーションでF00ガンダムのオリジナルAIとして登場、来場者やライブ配信視聴者、人類に向けてメッセージを送った。

アムロのAIが降臨。「この起動実験を最後に僕は・・F00ガンダムは、永い眠りに就く。僕が再び目覚める時は、モビルスーツやガンダムが人々の平和のために活躍する、そういう時代だ」 ©創通・サンライズ


また、もうひとりの主人公のシャアとその愛機ザクも夜空に描き出された。


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更に、YOASOBIの「機動戦士ガンダム 水星の魔女」や劇場公開中の「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の音楽に合わせてドローンがそれぞれのガンダムを夜空に浮かび上がらせ、豪快な花火が上がって、集まった多くの観客たちが゜歓声をあげた。

機動戦士ガンダム 水星の魔女 ©創通・サンライズ

機動戦士ガンダム 水星の魔女 ©創通・サンライズ

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ©創通・サンライズ

ラストはアムロのナレーションで未来に向けたメッセージが語られ、ショーの幕を閉じた。

■動くガンダム「グランド・フィナーレ」花火とドローンショーの特別演出(ダイジェスト)

ラストのアムロからのメッセージ

みんなありがとう。100年後の未来を想像してほしい。
テクノロジーは人のコミュニケーションを促進しているだろうか。モビルスーツと呼ばれるロボットは人々の生活を豊かにするために使われているだろうか。この「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」で行われた18mのガンダムを動かすという実験。この体験を共有した、たくさんの国や様々な世代の人たちに、この挑戦や出会いの記憶、この場所で生み出されたメッセージを未来に向けて伝え続けて欲しい。そして子どもたち。未来をつくるのは間違いなく君たちだ。君たちが描いた未来で、また会えることを信じているよ。さようなら。そして、ありがとう。



3人のディレクターがトークショーに登壇

イベントでは、「GUNDAM GLOBAL CHALLENGE」の3人のディレクター、石井氏、川原氏、吉崎氏が登壇し、これまでの「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」の軌跡と今の気持ち、これからについて語った。

左から、「GUNDAM GLOBAL CHALLENGE」のシステムディレクター 吉崎 航氏、テクニカルディレクター 石井 啓範氏、クリエィティブディレクター 川原 正毅氏。貴重なトークを展開

©創通・サンライズ

石井氏は展示終了まで無事に走りきることができた今の気持ちを聞かれ「当初は1年の展示イベント用としてF00ガンダムを開発しました。コロナ禍もあって結果的に3年以上、稼働演出を行うことになりましたが、特に予備の部品に大幅に交換することなく、ここまで続けてこられました」と語ると、吉崎氏は「最初に取り組むことが決まった時は長期間、トラブルなしに動かし続けられるのだろうかという不安もありましたが、”やりきれる”と感じられるメンバーが揃い、その体制で挑めたことが一番重要だったと感じています」と続けた。



更に川原氏は「3年間やっていて感じたことのひとつに、吉崎さんがF00ガンダムのソフトウェアをアップデートするたびに、ガンダムが観客と目を合わせるなど、演技力が増していくのが印象的でした。ガンダムの指先の動きなんて、最後は日本舞踊を踊れるんじゃないか、と思うくらいのレベルで・・」と語って場内の笑いを誘った。


石井氏「次は人が乗れるモビルスーツに挑戦したい」

今後についての思いを聞かれると、吉崎氏は「本当に素晴らしいメンバーに恵まれて、3年以上続けてくることができました。それはディレクターの3人だけではなくて、裏で支えてくれた人などたくさんの人たちの協力があって、初めて達成できたと感じています。そして今日もたくさんの観客の方が集まってくれていますが、動くガンダムを見に来てくれた来場者みなさんのおかげだと思っています」と感謝の言葉を述べた。

石井氏は「今後、機会があれば、次は人が乗れるモビルスーツを創ってみたいです。実際に別のプロジェクトで人が乗れるロボットを開発したので、その知見を活かして挑戦したいですね」と語った。


川原氏は「コロナ禍が開けて、外国からの観光客の方がここにたくさん来場してくれました。改めて世界中でガンダムが愛されているんだな、と感じました。また何か新しい次を考えていきたいと思います。ただ、その前にこれから最後の起動実験の特別演出がありますので、それが無事に動いてくれ、と祈っています(笑)」と述べてトークショーを締めくくった。





富野由悠季氏「この場所を提供してくれた関係各所に感謝したい」

3人のディレクターによるトークショーの後、ガンダムの生みの親、総監督の富野由悠季氏が登壇した。


富野氏は「機動戦士ガンダムが誕生してから45年が経ちました。紆余曲折ありましたが、20年経って、若い世代の方達にバトンを繋いでここまで来ました。アニメとか漫画、ノベルスだけでなく、ガンプラなど、文化的に展開しながら社会に変化をもたらしたと感じています。そして、アニメでしかモノを考えられない私が、絵空事ではなくリアリズムとして、技術をどう使ってリアルなガンダムを実現するか、それぞれの立場の方たちと協力して検討する機会を得ることができた、そのことにとても感謝しています。
そして何より、この場所を提供して頂かなければ「動くガンダム」を作ることはできませんでした。場所を提供して頂いた関係各所の皆様のご協力に対して、本当に心から感謝申し上げます」と語った。

©創通・サンライズ


To the New Stage

最後の起動実験グランドフィナーレをもって、私達に夢の可能性を示してくれた動くF00ガンダムは終幕した。しかし、富野総監督は「これで終わりではありません。このイベントは、GRAND FINALEであると同時に、To the New Stageとも名付けています」と語っている。
次のステージで再び羽ばたくガンダムの雄姿に出会えるその日を心待ちにしたいと思う。

■グランドフィナーレ全編動画(ガンダムチャンネル 生配信のアーカイブ)


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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