鈴茂器工「S-Cube」説明会を銀座「はっこく」で開催 職人不足に応えるコンパクトな寿司シャリ玉ロボット

米飯加工機械のほか、寿司ロボット(シャリ玉ロボット)で業界シェアナンバーワンの鈴茂器工株式会社は2024年10月1日、コンパクトシャリ玉ロボット「S-Cube(エスキューブ)」の説明会・試食コラボレーションイベントを銀座の寿司店「はっこく」で行った。2024年7月に発売したシャリ玉ロボット「S-Cube」を使った寿司が記者たちにもふるまわれた。

コラボレーションした銀座「はっこく」大将の佐藤博之氏(左)と、鈴茂器工 代表取締役社長 鈴木美奈子氏(右)


■35cm四方、重さ13kgのコンパクトシャリ玉ロボット「S-Cube」

コンパクトシャリ玉ロボット「S-Cube」

おおよそ縦横35cm四方(325W×352D×367Hmm)で、重さ13.2kgとコンパクトなシャリ玉ロボット「S-Cube」のコンセプトは「Small、Smart、Simpleな使い心地」。AC100Vで駆動し、生産能力は1時間あたり 1,200カン。ホッパー能力は最大で約3.3Kg(約1升)。モーターがついている寿司ロボットでは世界最小だという。

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小型店舗やケータリング、居酒屋などでの寿司提供に対応できる。シャリ玉の重さは12g〜20gまで、1g単位で大きさ・硬さの調整が可能だ。小型のブラシレスモーターが使われており、駆動音もあまり聞こえない。本体重量13kgで、ほぼ真四角の形状なので、力があまりない人でも持ちやすく、不要なときには棚などに片付けることもできる。

鈴茂器工 代表取締役社長 鈴木美奈子氏

鈴茂器工 代表取締役社長の鈴木美奈子氏ははじめに「いまの大衆的なお寿司のほとんどは、寿司ロボットがシャリ玉を製造している。鈴茂は寿司ロボットのパイオニアで市場シェア80%以上。海外でも80カ国以上で使われていて、今後どんどん増やしていきたい」と業界状況を紹介した。

開発に5年をかけた寿司ロボットが誕生したのは1981年。その初号機から40年以上の歳月が経っている。当時の寿司は庶民にとっては高級品だったが、寿司ロボットの登場によって、いつでもどこでも安く寿司が提供されるようになった。鈴木氏は「寿司の大衆化を実現できた。国内はもとより、海外にもどんどん寿司を普及させていきたい」と思いを語った。

そして「私たちは寿司職人の寿司に大きなリスペクトを持っている。職人に近づきたい、認められたい。それは40年前も、今も、大きな課題だ」と述べて、『S-Cube』を紹介した。


■「寿司ビギナー」でも扱える「S-Cube」で新業態ニーズに応える

既存の寿司業界以外の新業態での寿司ニーズに応える

「S-Cube」コンセプトは3つ。コンパクト、デザイン性、新市場の創造。鈴木氏のもともとの製品イメージは「炊飯器」だったという。炊飯器のように持ち運びができ、店舗にもなじむ機械だ。

人手不足のなか、寿司需要は上がっている。鈴木氏は「コロナのあと、海外では『キヨスク化』という言葉が生まれている。少しのスペースで持ちかえり寿司を効率的に販売できないかと考えた」という。

ただし海外はロールが主体で、シャリ玉機は需要が少ない。そこで、小さな店舗内で、小型の機械でシャリ玉を作ってしまい、機械そのものは棚にしまって、そのスペースでロールを作るといった運用を想定した。

表面の麻の葉模様

デザインもこだわった。表面には麻の葉模様が入っている。従来の寿司ロボットはもっぱら厨房で使われている。だが「S-Cube」はむしろ「見せる」ことを意識して開発したという。色味は海外で好まれる色に合わせた。

そして新市場の創造について。鈴茂が寿司専門店舗に導入しているメイン機種は、1時間に4,800カンの製造能力がある。これは大型店舗で必要とされる「瞬発力」へのニーズに応えるためだ。

1時間に1,200カンを作る

いっぽう、「S-Cube」は1時間に1,200カンしか作れない。だが「それでいい。なぜなら新しい市場だから。寿司専門店ではなく『ちょっとだけ寿司を出したいところ』、たとえばラーメン店だけどちょっとだけ寿司も出したいお店がある。居酒屋アイテムに寿司を入れたいというところもある」(鈴木氏)。

そういう店舗に対して鈴茂は「S-Cube」だけを売るのではなく、「ネタ、ノリ、酢など素材も含めてトータルコーディネートした上でお届けしたい」という。今後はレストラン業態そのものが大きく変化すると見ており、鈴木氏は「創造という挑戦をやらせてもらいたい」と語った。

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■より職人に近づけるためシャリ玉サイズは45mmに、硬さ・重さも微調整可能

「S-Cube」プロジェクトリーダーの鈴茂器工 営業本部 第二営業部 部長 名倉孝氏

「S-Cube」のもう一つのこだわりはシャリ玉の大きさだ。いま、回転寿司のスタンダードなシャリ玉は長さ55mm。だが「S-Cube」では1cm短く、45mmにした。「なるべく職人に近づけたい」という思いがあったからだという。「いま、大衆的な回転寿司のしゃり玉の大きさを変えることは難しい。だが、新たな業態向けの新機種ならば色々な挑戦ができる」と考えたと鈴木氏は述べた。

S-Cubeによるシャリ玉

機械の詳細を解説したプロジェクトリーダーの鈴茂器工 営業本部 第二営業部 部長の名倉孝氏は「3秒で1カン、1分で20カン作れる。専門店でなければ十分な速度」だと紹介した。

「S-Cube」はシンプルな操作を特徴としており、二つの調整モードしかない。一つは1カンあたりのグラム数で、最低12gから最大20gまで調整できる。「たとえば、ランチタイムは大きく、ディナータイムでは小さく」といった、よくあるニーズにも対応できる。

もう一つ調整できるのはシャリ玉の硬さを調整する「コンプレッション」で、こちらは10段階。ワンタッチで、どのくらいしっかり握るのか、ふんわり握るのかを調整できる。

ネタを上にのせるだけの「のっけ寿司」を作るにしても、たとえばスーパーマーケットのバックヤード厨房などで本当に素人がただ載せるだけなのか、あるいは「職人の相方」としてS-Cubeを用いて、ネタを載せたあと取って少し握り返すのかといった運用によって、最初の硬さを変えることができる。つまり「職人が使う」モードと、「職人以外が使うモード」があるわけだ。ちなみに鈴茂の売上3割半くらいはスーパーマーケット向けだそうだ。

「S-Cube」は内部機構もシンプル

ご飯は上のホッパーから縦に落ちてきて、ローラーで押し出されながらシャリ玉へと成形される。最後にテーブルの上にシャリ玉が押し出される。それを取ると次がつくられるというシンプルな仕組みだ。

ご飯は上から下へと押し出されてシャリ玉へと成形される

なお、ふんわり感については、機械がコンパクトになった結果、ご飯と機械の接触量が減り、その結果むしろよりふんわりするようになったという。機械の設計については、特に高さを抑えることに苦労したと語った。


■立ち上げ・洗浄も容易

部品点数を減らし、洗浄も容易にした。青い部品だけを洗えばいい

もう一つの特徴は、使用後の洗浄が容易である点。蓋を開け、青い部分を外して洗浄するのだが、この洗浄部品は全部で10個しかない。これは従来機に比べても半分以下だという。当然、洗浄に必要な時間も短縮された。
立ち上げも簡単にできる。既存の機械は説明員が導入時に現地に足を運んで説明して立ち上げを行なっているが、S-Cubeは家電同様の使い勝手で、同梱される「スタートアップガイド」を見れば、それだけで立ち上げられるという。ガイドにはQRコードも付けられており、動画も閲覧できる。分解組み立ての様子も動画で解説されている。

つまり家電同様の「送りつけで対応できるスペック」となっており、実際に「7月の発売以降、評判もいい」とのこと。特に販売店からも喜ばれているとのこと。耐用年数は9年。

今月から海外での販売も始まる予定だ。鈴茂では従来からニーズの高い北米、アジア、欧州のほか、中東にも力を入れたいと考えているとのことだった。特に日系企業が進出している地域を重視しているという。なかでも北米はニーズが高いそうだ。


■職人の人手不足を補うシャリ玉ロボット

「はっこく」大将・佐藤博之氏

今回、コラボレーションした「はっこく」の大将・佐藤博之氏は「微力ながら貢献できたら。自分もS-Cubeのファンだ」とコメントした。鈴木氏とは、もともとは客と大将として知り合ったとのこと。佐藤氏も「S-Cube」によるシャリ玉については「食感は僕でもできないくらいのふんわり感。本当に米と米のあいだに歯が入っていく」と絶賛した。

「S-Cube」によるシャリ玉を使ったのっけ寿司の試食が行われた

「はっこく」のカウンターで「S-cube」を使うことはないが、イベントやケータリングなど、大人数で対応しなければならないケースなどでは「ロボットを持っていってやらせてもらったほうが、お客様にストレスを与えず提供できるのではないか」と活用を考えているとのことだった。また、ブレがないことから「職人の教育用としても使えるのではないか」と述べた。

佐藤氏はイベントやケータリングでの活用を考えるとのこと。特に海外のイベントでの相棒としての活用を考えているそうだ

今回の試食で提供されたシャリ玉の重さは12g。「はっこく」では通常8-10gだ。最初は一番ふんわりの「1」で出す予定だったが、実際の試食を経て3、あるいは5で提供された。ネタには丁寧な仕事がなされており、赤酢の酢飯との組み合わせは抜群だった。

美味しくいただきました
関連サイト
鈴茂器工株式会社

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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