組込みソフトウェア開発技術者を支援するオンラインサロン「組込み開発サロン」開設 SESSAME

2000年から活動を続ける組込みソフトウェア開発の技術者コミュニティ「NPO法人組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会(通称:SESSAME)は、2024年10月8日(火)より、組込みソフト開発技術者を支援するオンラインサロンとして「組込み開発サロン」のサービスを開始した。利用料金は月額1,000 円(税別)のサブスクリプション制。
SESSAMEによれば、組込み開発現場では、IoT や AI、DX の進展により、開発規模の拡大と短期間でのリリースが求められていて、技術の進化により効率化が進む一方、人材不足や OS・ミドルウェアのブラックボックス化による問題解析の難しさが課題となっているという。
これを解決するためには、個人やチームのスキルアップ、エンジニアリング手法の強化が必要で、「組込み開発サロン」は、こうした課題を解決する知恵を共有する場として設立された。気軽に交流し、開発現場とエンジニアライフをより良くすることを目指すとしている。
【URL】 https://www.embsalon.jp/
短い開発期間、増える規模と複雑性、変わらない忙しさ
SESSAMEは次のように続けている。
SESSAME
組込みソフトウェア開発をとりまく環境は大きく変わってきています。IoT、AI、DX といったキーワードは、組込みソフトウェアの規模を大きくさせ、さらには短い開発期間を求めます。製品やサービスのデリバリーは最重要視され、それを実現する方法が求められます。組込みソフトウェア開発の特徴は、ハードウェアという実体・モノとセットであること、そして処理対象がコンピュータの中のデータ・情報ではなく、外界に実在する物や空間であることです。これらの特徴が制約となり、開発現場では、性能や信頼性といった品質を実現する苦労をしてきました。
TRON や Linux といった組込みソフトウェア用の OS(Operating System)が生まれ、実行制御を 1 から作ることはなくなりました。各種ミドルウェアが流通し、OSS(Open Source Software)として共有されることで、開発量を減らし品質を向上させることができるようになりました。ファームウェアの更新機能によって、段階的リリースやバグの修正などもできるようになっています。
マイコンや周辺回路の高性能化、メモリ容量の拡大、バッテリー性能の向上、高機能なセンサーやアクチュエーターの普及など、ハードウェア関係だけ見れば本来、組込み開発は効率化されるはずです。
しかし、開発現場では常に人材不足が叫ばれています。製品やサービスに対する要求が増え、リリースタイミングは早まり、ブラックボックスと化した OS やミドルウェアが問題解析を阻んでいます。
課題解決のための「知恵」共有の場として、気軽に交流し、開発現場をより良くすることを目指す
このような状況を打破するためには、システムやソフトウェアに関するエンジニアリングの強化や、それらを使う人材の強化が求められる、という。
SESSAME
開発の問題は人に起因することも多く、個人としてのスキルアップだけでなく、チームや組織としての開発方法も重要です。
アジャイルが普及しても解決されない課題も多々あります。
これからの開発現場をより良くする方法に正解はなく、試行錯誤が必要になります。この試行錯誤を効率よくするため、各種情報共有が必要だと考えています。自分たちだけの経験に基づくやり方だけでなく、他者の成功失敗経験、それに基づく方法、普遍的なエンジニアリング手法、他分野での施策を持ち込むなど、多岐にわたる「知恵」が必要です。
「組込み開発サロン」は、これらの知恵を共有するためのプラットフォーム。国策や自治体主催の委員会や業界団体、アカデミックな学会、ある技術に関するコミュニティなど、情報共有をする場は既に多々あるものの、サロンというネーミングには「気軽に交流できる場」にしたいという思いを込めた。
インターネットで検索する時代から、AIによる生成の時代になっている。プログラミングも AIがコードを生成してくれる時代に入った。
しかし、組込み開発に関する問題解決の方法は検索やAIは教えてくれないと考え、次のようにコメントしている。
SESSAME
組込み開発の問題とその解決策は、組織内でクローズであり、インターネットで共有されることは稀、これまでも学会やコミュニティで情報共有が行われてきていますが、テキストとして共有されているものは限られます。テキスト化されていないものは検索できず、検索できないものは AI が学習できず、解決策を提示することは困難です。
「組込み開発サロン」で気軽に交流することで、知恵共有が活性化し、より良い開発ができることを期待しています。「組込み開発の駆け込み寺」「組込み開発の心の拠り所」「組込み開発の知恵袋」「組込み開発のサードプレイス」「組込み開発の部室」という存在になりたいと考えています。組込み開発は達成感が得られる素晴らしい仕事です。この仕事をよりクリエイティブに楽しみながらできれば、エンジニア冥利につきます。「組込み開発サロン」がエンジニアの方々の QoL 向上にお役に立てれば幸せです。
「組込み開発サロン」が提供する3つのサービス
オンラインサロンである「組込み開発サロン」では、次の3つのサービスを提供する。
1.Slack ベースのオンラインコミュニケーション
2.組込み開発の教材コンテンツなど共有
3.イベントや動画などのサロン限定コンテンツ
1.Slack ベースのオンラインコミュニケーション
開発現場でも使われる Slack を使い、オンラインでのコミュニケーションを提供。知恵と呼べるような価値がある情報を共有し、開発現場で有効活用してもらえることを狙い、コミュニケーションを支援する。ITシステム開発では、Q&A のサービスがインターネット上で提供されており、開発時に困ったことがあると、サイトで検索や質問することで問題解決ができる。これらはツールの使い方やトラブルシューティングに関するものが多く、組込みソフトウェア開発の一部では有効ですが、開発全般に関する問題解決には十分ではない。
若手からベテランまで、多くのエンジニアに参加していただき、ツールの使い方だけでなく、設計やテスト、品質管理、ハードウェアやリアルタイムの制御など、広く知恵を共有する場を提供したいと考えています。もちろん、社外秘の情報など共有対象外で、一般
抽象化して議論し、エンジニアリングとして共有する。
2.組込み開発の教材コンテンツなど共有
SESSAMEが2000年から約四半世紀にわたり開発してきた組込みソフトウェア開発の教材(セミナースライドなど)を利用可能。サービス提供時点で利用可能な教材は6種類で合計約1千ページ。組込みソフトウェア開発におけるエンジニアリング領域でのカバレッジも高く、新人や若手エンジニアだけでなく、中堅エンジニアでも有効な知恵が多く含まれている。市販の組込みソフトウェア開発に関する書籍では語られない、もしくはインターネットで検索しても出てこないテクニックなども含まれているので、開発現場の役立てることができる。今後も随時、利用可能な教材を追加していく考えだ。
3.イベントや動画などのサロン限定コンテンツ
「組込み開発サロン」限定企画を、サロン参加者からも企画募集し提供する。組込み開発に関するセミナー・講演会、ワークショップ、オリジナル動画コンテンツなど、開発現場で求められる知恵を共有する企画を考え実現していく。
10月2日(水)には、組込み開発サロン開設記念セミナー「組込み開発の Digital Twin 最新状況」を約40名の参加者を集め開催。短期間でのリリースが重要しされ、機器から得るデータの重要性が高まる最近の組込みソフトウェア開発において重要となる Digital Twin について取り上げた。このセミナーの様子は、サロン限定コンテンツとして共有を予定している。
「組込み開発サロン」の参加方法
「組込み開発サロン」は、オンラインサロンとして、月1,000 円(税別)のサブスクリプションで提供。
参加資格はないが、組込みソフトウェア開発に従事する技術者と管理者が対象。参加申し込みは「組込み開発サロン」のWEBサイトの「サロン会員エントリー」から会員登録できる。
会員登録後、Slack への登録と限定コンテンツアクセスキー発行する。
NPO 法人組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会について
法人名: 特定非営利活動法人 組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会
法人所在地:東京都中央区入船1丁目5-11弘報ビル5階
理事長:飯塚悦功氏
事業内容:
組込みシステムに関する教育事業、組込みシステムに関する調査研究事業、組込みシステムに関する普及啓発事業を行い、市⺠に身近な組込みシステム産業に携わる人材の育成をはかることで、組込みシステム産業の競争力向上と、組込みシステムに関する社会教育の推進および職業能力の開発と、それによる雇用機会の拡充に寄与する。
設立:2004年9月1日
HP: https://www.sessame.jp