日立システムズ 上水道の配水減圧弁の故障をAIが予兆検知 水道事故発生件数の低減へ
日立システムズは、神戸市水道局とともに、上水道の水圧データをAIで分析することにより、配水減圧弁の故障を早期に予兆検知する研究を行った。この研究結果を活用することにより、水道事業者やメーカーは、配水減圧弁が故障する前に、メンテナンスができるようになる。
これにより、精度の高いメンテナンス計画の立案が可能になることで水道事故発生件数が低減され、より持続可能な安定した上水道を提供できるようになる。また、地域住民にとっても水道事故による急な断水などの影響が少なくなるという効果が期待できる。
なお、神戸市水道局は本研究結果について、令和6年度日本水道協会全国会議(水道研究発表会)にて発表を実施した。
研究の背景
神戸市は六甲山系の起伏に富んだ地形であるため、配水池を配置して自然流下方式による給水を採用している。局所的に適正水圧を維持できない地域については、公道内の配水管に減圧弁を設置することで水圧を調整してきた。配水減圧弁には水圧計を設置し、定期的に水圧データを現地で回収してきたが、故障対応においては、配水減圧弁が故障してからでないと対応ができず、また、故障後の修理は、故障箇所が複数にわたることも多く、異常の原因特定に時間がかかること、さらに職員の負担が大きいことが課題だった。
日立システムズは2023年7月より、減圧弁水圧監視システムを神戸市水道局に導入しており、配水減圧弁の水圧データ提供等業務において、市内60か所以上の減圧弁付近での水圧データの提供・運用を行っている。さらなる運用の高度化のため、減圧弁の故障を予兆検知するシステムの実現に向けて、水圧データのAI分析の研究を実施することとなった。
水圧データのAI分析について
減圧弁への水圧のかかり方は、使用条件や使用環境、製造業者や型式などによりさまざまである。本研究においては劣化具合を分析したい減圧弁の水圧値とAIで生成した数値上、正常とされる減圧弁の水圧値を比較し、差を見ることで、対象の減圧弁の故障の程度を分析する。
本研究における分析結果について
2024年1月に発生した減圧弁の異常時には、減圧弁水圧監視システムでしきい値超過を検知し、神戸市水道局は早期に故障を把握、迅速な現地対応を実施した。
その後、当時の水圧データに対してAI分析を行った結果、故障が確認できた約1カ月前から、毎日0~6時の時間帯において、正常時に対して水圧値が上方に超過していたことが分かった。超過原因は減圧弁内部のネジの緩みなどだった。
これにより、水圧が徐々に上昇し始めていたと考えられ、しきい値超過で水圧異常を検知する前に、AI分析を活用することで、故障の予兆検知ができることが分かった。
今後の展開
予兆検知によって、故障発生の未然防止や水道局員によるメンテナンス作業の効率化などが見込める。日立システムズでは、今回の研究における検証をさらに進め、2025年度からのサービス提供開始をめざす。
これにより、水道事故防止・最小化による住民被害の減少、水供給の安定化をめざす神戸市水道局をはじめとする全国の水道事業体の取り組みを支援するとしている。
神戸市水道局コメント
神戸市水道局 配水課 鶴長孝二郎 氏
AI分析を活用することで、これまでよりも早期に配水減圧弁の状態把握が可能となり、減圧弁水圧監視システムのさらなる高度化が実現できました。故障の予兆時点でメンテナンスを行うことで、配水減圧弁の故障防止、事故発生の防止が期待できるため、今後も実装に向けた検証を進めていきます。
日立システムズの「CYDEEN 水インフラ監視サービス」について
CYDEEN 水インフラ監視サービスでは、水圧監視、水位監視、流量監視、水質監視を提供しており、各サービスをクラウド上で一元的に管理することが可能。これにより、水運用の効率化と安定供給の両立をめざす全国の水道事業体の活動を支援する。
「CYDEEN 水インフラ監視サービスでは、機器調達から設置作業、クラウド提供などのほか、顧客の要望に合わせて、問い合わせ対応やインシデント管理、稼働報告、保守対応などのサポートをワンストップで提供する。
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