大阪王将、炒め調理ロボット「I-Robo2」導入の新モデル店をオープン 自動床洗浄も活用して厨房労働環境改善へ

街中華チェーンの「大阪王将」は2024年に創業55周年を迎える。すでに9月13日には「55周年新モデル店舗」をファミリー層向けの「鷺沼駅前通り店」としてオープンしているが、10月24日には2店舗目として「神保町店」をオープンする。オフィス街も近いこの店舗では、ランチタイムはもちろん、ランチから少し外れた時間の休憩タイムや、夕方以降の「ちょい飲み」需要にも応える。

注文はタブレットから。通常の定食等のほか、サラダ付きの「リフレッシュセット」も用意

具体的には近年の「野菜を摂りたい」、「いろいろなメニューを少しずつ食べたい」という要望に応えるために、ランチタイムメニューにも野菜メニューを増やしただけでなく、サラダがつく「リフレッシュセット」も用意した。

「大阪王将 神保町店」の厨房には、TECHMAGIC製の炒め調理ロボ「I-Robo2」が2台導入されている

「55周年新モデル店舗」には全て、調理ロボットスタートアップ・TECHMAGIC(テックマジック)が開発した炒め調理ロボット「I-Robo」が導入される予定だ。既に「鷺沼駅前通り店」にも導入されている。神保町店では新たに新型の「I-Robo2」も導入するなど、DXを進めている。開店前の22日にコンセプト紹介と試食会が行われた。

「大阪王将」は餃子が売り


■明るい雰囲気の新モデル店舗「大阪王将 神保町店」

「大阪王将 神保町店」。他の店舗と違い、黄色い看板ではない

「大阪王将 神保町店」の所在地は千代田区神田神保町2-7。神保町駅のA1出口を出たらすぐ右側、徒歩0分に立地する。外観をガラス張りとし、木の風合いを生かしたデザインとなっており、従来の大阪王将の店舗デザインとは雰囲気が異なっている。

カウンター席。注文用タブレット側にコンセントがある

店舗面積は21.4坪。席数は26席。カウンターとテーブルがあり、カウンターは厨房を囲む形で設置されている。店舗内ではWi-FIが使え、各席には充電用のコンセントも用意されている。

カウンター席にもコンセントがある。カウンター側での注文は原則スマホから行う

椅子も従来の「大阪王将」の赤い丸椅子ではない。テーブル席では後ろに小さな荷物も置ける、ゆったりとしたクッションシートの椅子を採用した。天井高も従来店舗よりも高くして、明るい空間となっている。滞在時間を長くすることで客単価をあげる狙いだ。

テーブル席の椅子は荷物が置けるタイプのクッションシート。従来の店舗よりもくつろげる


■TECHMAGICの炒め調理ロボット「I-Robo2」を導入

テーブル席からも厨房内の様子はよく見える。手前にあるのが炒め調理ロボット「I-Robo2」

カウンター側や、一番奥のテーブルからは厨房のなかもよく見える。TECHMAGICの炒め調理ロボット「I-Robo2」は2台設置されている。「I-Robo2」は攪拌、加熱、調理後のフライパンの洗浄といった一連の動作を自動化できるロボットだ。天津飯以外の炒めメニューは、ほぼロボットで調理できる。200Vで動作する。

*動画

「I-Robo2」は前世代の「I-Robo」と比較すると、よりコンパクトになり、IHフライパンのヘラ形状の改良、自動洗浄機能、タッチパネルの大型化による操作性の向上などが追加されている。

洗浄機能が改善され、コンパクトになり、高速化

「I-Robo」のフライパン洗浄は奥側にフライパンが倒れて洗浄する構成だったが、「I-Robo2」のフライパン洗浄は手前側に手動でフライパンを倒すことで洗浄する。洗浄時間もおよそ15秒程度と、大幅に短縮された。

タブレットは大型化。見やすくなった

調理手順や時間が表示されるタッチパネルは7インチから12インチへと大幅に拡大。見やすく、操作しやすくなった。

最後の盛り付けは人が行う

この調理ロボットを使うことで、職人いらずの調理が可能になる。ただし、具材や調味料の順次投入は人が行わなければならないので、実際にはだいたいの段取りは覚える必要がある。また、最後の盛り付けは人であり、その品質は人に左右される。

*動画

それと、天津飯だけは独特の卵のふんわり感を出すことが難しく、人が通常の中華鍋で調理している。

天津飯は人が調理する


■餃子焼き機も新型に、床もボタンひとつで自動洗浄

自動注水機能付きの餃子焼き機

餃子焼き機も新型になった。従来は油をかけて焼き目をつけてから水を入れて蓋を閉めていたが、自動注水機能付きの機械を導入することで、人が水を注ぐ工程がなくなった。餃子を並べて入れて、油をかけて蓋を閉め、ボタンを押すだけで餃子を焼くことができる。これによって時間短縮される。

並べて油を入れて蓋を閉めてボタンを押すだけで餃子が焼けるようになった

床にも「自動洗浄システム」を採用した。ボタンひとつ押すだけで床全体に洗剤の泡と水が流れる。営業終了後に自動で床を洗浄できる。このような様々な変革を進めることで厨房環境の改善を行い、労働負荷を減らし、人手不足を補う。

厨房の床も営業終了後にボタン一つで自動洗浄可能に。労働負荷軽減を目指す


■厨房内の改革が進行中

厨房内のオペレーションや動線の最適化は、まだ検討中

「大阪王将」の「55周年新モデル店舗」は、12月に「稲荷町駅前店」、「仙川ハーモニーロード店」、「TXGA八潮店」、「横浜岡野店」と順次展開される予定だ。全てに炒め調理ロボット「I-Robo」が導入される。

今後は従来店舗の一部でもロボット導入を検討していく。調理ロボットそのほか新しいツールを活用するために最適なオペレーションを探究し、さらに厨房内での動線の改良や検討などを進めていきたいとのことだった。

関連サイト
大阪王将

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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