分身ロボットカフェが初の海外展開 OriHimeで働けるお店で「人類の孤独の解消」を推進へ

分身ロボット「OriHime」(オリヒメ)などの開発・提供を手掛ける株式会社オリィ研究所は、難病や重度障害などで外出困難な人が分身ロボットを操作して接客をする「分身ロボットカフェDAWN ver.β」で、初めて海外に展開する。

場所はデンマークのオーフス(Aarhus Kommune)。分身ロボットカフェ「Bunshin Robot Cafe Øens Madhus(分身ロボットカフェ ウーエンスマーフス)」を期間限定でオープンする。会場はAarhus Ø(オーフス島) に位置するソーシャルダイニング「ウーエンスマーフス(Øens Madhus)」。開催期間は、2025年4月2日(水)から9月30日(火)までの6ヶ月間。


東京日本橋にある「分身ロボットカフェDAWN ver.β」と同じく、病気や障害で自宅から出られず、これまで就労が難しかった人が、分身ロボット「OriHime」を遠隔操作して働くことでスタッフの一員となり、社会参加を可能とするカフェとなる。


「人類の孤独」解消のため国際的に展開

今回のポップアップカフェは、オーフス市の健康・福祉・社会雇用部門、社会的企業であるTeknologi i Praksis、FO-Aarhusの協力のもと開発された。日本国外では初めての試みとなる。
「Bunshin Robot Café」は、高齢者や子ども連れの家族などオーフス市民人々を迎え、人々の存在をそばに感じられるあたたかなカフェ体験の提供を目指す。


オリィ研究所では海外進出を行うため新たにグローバル展開チームを発足。今回のデンマークでの開催が初事例とし、いまや世界的な課題と認識された「人類の孤独」という問題を解消するため、事業を国際的に展開していく。


デンマークで開催する背景

オリィ研究所とデンマーク国の関係は深く、2016年からオーフス市において分身ロボットOriHimeを使った交流や現地大学との共同研究を行なってきた。2021年に初めての分身ロボットカフェが東京にオープンした直後から、在日デンマーク大使館関係者をはじめ、デンマーク政府の高齢福祉大臣、オーフス市医療介護担当市会議員などデンマーク本国からもたくさんの視察を受け入れてきた。こうした縁が実を結び、今回デンマークのオーフス市にて海外初の分身ロボットカフェを開催する運びとなった。


デンマーク国は「世界幸福度ランキング」で常に上位を占める国として知られているが、国民の安心や幸福を支える高い福祉制度を維持するために、テクノロジーの導入を国家として推進しているという背景がある。こうして政府が整備する充実した福祉制度のもと、全ての人が社会参加し働き続けられる環境を作ろうとする自治体の姿勢や、「ヒュッゲ」に象徴される人と人との繋がりを大切にする文化や国民性に、リレーションテックによって孤独解消を目指す私たちの取り組みとの強い共通性を感じ、この地での開催を決断した。

今回のプロジェクトでは、初の試みとして現地に在住する移動困難者を採用、OriHimeパイロットとして教育し、現地障害者雇用の創出にチャレンジしている。また日本の分身ロボットカフェで経験を積んだ公認OriHimeパイロットたちも海を超えて加わることで「距離や文化を超えた同僚感」を持って、働き続けられる就労スタイルにも挑戦する、としている。

今回の取り組みが「分身ロボットを通じた新しい社会参画の仕方」を世界に広く知ってもらうための第一歩となり、地元オーフス市民はもとより、広く世界で受け入れられるカフェを目指す考えだ。


各氏のコメント


オリィ研究所 CVO/ 吉藤オリィ氏のコメント

吉藤オリィ氏


私達は2012年の創業以来、「人類の孤独の解消」を理念として掲げ、いまや世界共通の課題である“孤独”という問題に挑み続けています。 2016年にデンマーク大使館へOriHimeを導入いただいた時より、「孤独の解消」をテーマにデンマークの仲間や政府関係者の皆さまと意見交換を続け、海外展開を行う際にはまずデンマークで実現したいと長い時間をかけて準備を進めてまいりました。ついにこの度、私達にとって初の海外展開となる「Bunshin Robot Cafe Øens Madhus」を、デンマーク・オーフス市にて開催できる運びとなりましたことを心より嬉しくご報告いたします。本カフェでは、デンマーク現地の移動困難な方々にOriHimeパイロットとして訓練を積んでいただき、さらに日頃から私達と一緒に働く日本のOriHimeパイロットも参加し、共にサービスを提供いたします。移動が困難な方々でも、分身ロボット「OriHime」を通じて8000km以上離れた仲間と“同じ職場で働く”感覚を共有しながら、お客様に楽しい時間をお届けできるのか。新たな挑戦・研究が始まります。
身体事情や生まれた地、物理的距離や言語すらも乗り超え、人々が孤独から解放される新たな選択肢を切り拓くことを目指し、私達は今後も邁進してまいります。


DokkX代表 リーダー / キルステン・ルッド・ベントルム氏

キルステン・ルッド・ベントルム氏


私たちTeknologi i Praksisは、革新的な「分身ロボットカフェ 」が初の日本国外開催地としてデンマークのオーフス市を選び、一緒にプロジェクトを進められることを大変嬉しく思っています。
私たちのような社会的経済企業にとって、障害を持つ人々が他の人々と対等な条件で社会の一員となり、孤独や排除を防ぐための新たな技術的機会を創出する手助けをすることは、大きな意味があります。私たちは、このプロジェクトを支援し、分身ロボットOriHimeが人が遠隔で仕事をこなすためのツールとして使われ、今後も可能性を広げていくことを楽しみにしています。OryLabとは長年にわたり協業しており、今後も良好で発展的な協力関係が続くことを楽しみにしています。

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ロボスタ編集部

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