
アクセンチュアの最新調査によって、日本や中国を含めたアジア各国の工場責任者には「2040年までにAIやロボットによって製造業に大きな変化が起こり、工場の完全自動化もありうる」と考えている人が多く、日本ではその割合が特に高いことがわかった。
「工場では2040年までにAIやロボットで完全自動化もありうる」
アクセンチュアが552人の工場責任者を対象に実施した調査によると、多くの工場責任者は「直近のデジタル化に対応することに追われ、未来への対策はまだ不十分」と感じているという。また、日本を含むアジア各国の工場責任者の多くは「工場では2040年までに、人間の管理のもと、AIを搭載した自己学習機能を持つ機械やロボットだけで、ほぼ完全に作業できるようになる」と予想し、超自動化(ハイパーオートメーション)に積極的であることが明らかになった。
一方、ヨーロッパやアメリカでの見通しは、アジア圏より慎重なものの、製造業の大きな変化は避けられないという意見が増えている。
高度に自動化された(ハイパーオートメーション)工場の特徴
アクセンチュアの最新レポート「ものづくりの未来に向けた変革を再考する(Rethinking the course to manufacturing’s future)」では、日本を含む11か国の工場責任者へのアンケート調査をまとめている。
製造業におけるAI、自動化、デジタル技術の重要性はますます高まっている。回答者の約半数は、2040年までに次の技術や体制を磨くことで、工場の生産性を段階的に向上させつつ、より俊敏かつ柔軟な運営ができると考えている。
・オペレーションの自動化(日本80%、グローバル53%)
・生成AIを活用して自己学習する機械(日本74%、グローバル52%)
・完全に自動化された倉庫(日本82%、グローバル51%)
・スマートコネクテッド化されたセル生産方式(日本82%、グローバル49%)
・自律走行ロボット(AMR)(日本83%、グローバル49%)
・デジタル接続された作業チーム(日本79%、グローバル48%)
・オペレーションのデジタルツイン(日本79%、グローバル47%)
・無人搬送車(AGV)(日本79%、グローバル45%)
この結果では、どの回答においても海外より日本の数値が非常に高いことに注目したい。
アジアの製造業が先導、ヒューマノイドへの期待度は
将来、工場では上記の技術が欠かせないと考えている工場責任者は、日本と中国では51%~83%にのぼっている。一方、米国は31%~50%、ヨーロッパが25%~39%と、欧米に比べてアジア圏ではかなり高い数値を示している。
未来的で先進的な取り組みが進む中、日本の工場責任者の期待は他国と比べて特に顕著だと言える。
日本の工場責任者の74%が、2040年までに自社が新たな施設を建設する際に「完全自動化工場(ダークファクトリー)」を望む(中国53%、米国29%、ヨーロッパ20%)と回答している。
また、日本の工場責任者の72%が、自社の組立工程でヒト型ロボット(ヒューマノイド)が一般的になると回答していて、中国の65%、米国35%、ヨーロッパ21%に比較して、ヒューマノイドへの期待度が高い。
工場の「超自動化」で最も重要なのは実は「人材変革」
工場の「超自動化」が進むことで、人々の働き方や役割、必要なスキルは大きく変わる。多くの工場責任者は、高度な自動化への原動力となるのは「人材変革」(日本95%、グローバル70%)であると回答している。
これは自動化(日本90%、グローバル63%)、AI(日本91%、グローバル62%)、デジタル化(日本91%、グローバル61%)を上回る結果となっている。
「成功のカギは何か」という問いに、大多数の工場責任者は「製造に関する知識の蓄積と共有」だと考えている(グローバル74%)。また、「日常業務にデータ分析を組み込むこと」(日本98%、グローバル73%)や、「データに基づいた意思決定の重要性」(日本96%、グローバル72%)も強く認識されているという。
一方で「人材改革の障壁となる」のは、回答者のほぼ半数(日本52%、グローバル49%)が「研修プログラムへの多額の投資」と回答している。また、失業への恐怖心(日本48%、グローバル46%)や、機械との協働や自律型物流の調整といった新たな役割への抵抗感(日本34%、グローバル38%)も挙げられている。
中国の工場責任者にとって、高額な研修への投資は特に大きな懸念材料(62%)だという。失業への恐怖はインドで最も顕著であり(70%)、役割の増加に対する抵抗はイタリアが最も深刻(66%)としている。
また、51%の工場責任者がAIに関するスキルや資格を持つ専門家の不足を懸念。これはインドと日本で最も顕著で(両国とも67%)、中国ではさほどでもなく40%と、比較的低い結果となった。
眼前のデジタル化対応に追われ未来への対策は不十分
大多数の工場責任者は、眼前のデジタル化対策に注力している。
最も優先度が高いのはサイバーセキュリティ(グローバル77%)であり、次いで製造実行システム(MES)の実装(70%)、クラウドプラットフォームの実装(67%)と続く。
日本におけるトップ3の優先事項は、サイバーセキュリティ(95%)、5G(94%)、産業用IoT(94%)となっている。
日本と中国以外では、産業用IoTおよび機械や製品のデジタルツインは、優先するテクノロジー トップ5に入っていません。レポートによると、これらのテクノロジーは工場のデジタル基盤構築に不可欠であり、懸念すべき状況としている。
アクセンチュアの最新調査レポート「(ものづくりの未来に向けた変革を再考する(Rethinking the course to manufacturing’s future)」は下記のURLで紹介され、「レポート全文」(英語)もダウンロードできる。(冒頭の画像提供:アクセンチュア)
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/industrial/future-of-manufacturing
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