
シーメンスとアクセンチュアは、長年の提携を拡大し、アクセンチュア・シーメンス・ビジネスグループを設立すると、「ドイツ ハノーバーメッセ2025」で発表した。この専任グループは、グローバル規模で製造やITに関する豊富な経験を持つ専門家7,000人で構成される。AIエージェントやIoT技術を活用し、顧客企業のエンジニアリングや製造領域の変革やDXを強力に支援するとしている。
このグループを通じて両社は、製造業におけるバリューチェーンの自動化、インダストリアルAI(産業用AI)の導入、IoTのソフトウエア基盤「Siemens Xcelerator」などに強みを持つシーメンスと、データやAIに関する知見を組み合わせたソリューションに強みを持つアクセンチュアが連携して、顧客企業へ展開する。
これまでの事例として、スペインの国営造船・軍事企業であるNavantiaに対しては設計および製造コストを20%削減した実績を紹介している。
シーメンスの社長兼CEOであるローランド・ブッシュ氏(Roland Busch)は次のように述べている。
ローランド・ブッシュ氏
このたびの提携強化により、シーメンスとアクセンチュア両社それぞれの強みを融合します。シーメンスは、技術力、データアクセス、およびソフトウエア、自動化、インダストリアルAIに関する豊富な専門知識を有しています。またアクセンチュアは、エンジニアリングおよび製造領域におけるデータやAI活用で多くの実績を有しています。本グループを通じて、あらゆる業界のお客様に対してビジネスの中心にAIを組み込み、企業活動全般の強化を支援してまいります
アクセンチュアの会長兼CEOであるジュリー・スウィート氏(Julie Sweet)は次のように述べている。
ジュリー・スウィート氏
「エンジニアリングと製造は次なるデジタルフロンティアともいうべきイノベーションの最前線です。アクセンチュア・シーメンス・ビジネスグループは、製造業におけるバリューチェーンの自動化、データ、AIを駆使して、製造方法から製品そのものまで抜本的な変革を支援します。長年のパートナーであるシーメンスと共に、迅速に効率化を進めてコストを削減し、デジタルコアを強化することで、継続的に事業を再構築し、新たな価値を提供していきます」
KIONグループやNavantiaのDXの事例
これまでシーメンスとアクセンチュアは、顧客にさまざまな価値を提供してきたという。
サプライチェーンソリューションの主要企業であるKIONに対しては、全社共通の製品ライフサイクル管理(PLM)プラットフォームとしてシーメンスのTeamcenterを導入し、コアエンジニアリングプロセスの統一および最適化を支援。これによって、シミュレーション機能、生成AI、モデルベースシステムエンジニアリング(MBSE)を活用して、KIONのエンジニアリングプロセスを抜本的に強化した。
スペインの国営造船・軍事企業であるNavantiaに対しては、シーメンスのTeamcenterとCapital Logic Designerを活用した新たな製品開発プラットフォームの開発および実装を支援した。このプラットフォームを使って国営造船・軍事企業のNavantiaが製造する船舶をデジタルツイン化することで、製品設計の品質を向上し、設計および製造コストを20%削減した。
業界に特化した、拡張可能なエンジニアリング、製造、サービスソリューション
アクセンチュア・シーメンス・ビジネス・グループは、航空宇宙、防衛、自動車、消費材、電子機器、重機、産業機械、半導体、輸送などの業界に対して、ソフトウエア定義型製品および工場向けのソリューションを提供する。
このグループは、エンジニアリングおよび研究開発モデルの再構築に特化した新たなエンジニアリングサービスを提供する予定。顧客のグローバルエンジニアリング機能センター設立を支援し、ソフトウエア定義型製品の開発を推進する。また、MBSEの使用を最適化し、自動車メーカーを対象とした両社のソフトウェア定義型自動車(SDV、ソフトウェア・デファインド・ビークル)フレームワークの導入を促進する。
シーメンスとアクセンチュアは、顧客が製造工程をリアルタイムで追跡、制御できるよう、新たな製造実行システム(MES)を実装し、その連携と移行を支援。また、ITの原則を踏まえ、AIを活用した製造現場の運用や自動化を進めるという。
さらに、アクセンチュアのマネージド型の攻撃検知・対応サービス(MxDRサービス)を活用し、OTデバイスおよび重要なエンジニアリング・製造システムに対するサイバー脅威を軽減・防止。これらのサービスには、アフターサービス、メンテナンス、修理、およびオーバーホールが含まれる。
エージェントAIを活用した製造工程の再構築
アクセンチュア・シーメンス・ビジネス・グループは、アクセンチュアで製造・物流領域の変革を支援するサービス部門であるインダストリーXが持つ専門知識を活用したサービスを提供。顧客によるAIエージェント作成支援や、既存のエージェントや基盤モデル(例:AI Refinery for Robotics & Simulation | Accenture)のカスタマイズなど、すべてのAIコンポーネントに対してガバナンスの確保を支援。例えば、シーメンスのNXとシーメンスが買収したアルテアのエンジニアリングソフトウェアを使用したエンジニアリングに組み込まれた生成AIエージェントの開発・提供などがあげられる。
AIエージェントを活用することで、例えば設計やデザインを変更時に、その実現可能性、生産コストや性能への影響を自動的に検証することができる。これにより顧客は製品開発の効率と生産性を大幅に向上させることが可能になる。
また、PLM(製品ライフサイクル管理)、産業機器の資産管理やサービス、リモート操作といった分野においてもAIエージェントを活用できる。
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