アクセンチュア「テクノロジービジョン2025」を発表 『AIに求める最も重要な指標は、そのパフォーマンスに対する信頼』

アクセンチュアの最新調査「アクセンチュア テクノロジービジョン2025」によると、デジタル化が新時代に入り、AIが継続的に学習して自律性を獲得することで、組織全体を新たなレベルに押し上げていることが明らかになった。この新時代に企業がAIに求める最重要指標は、そのパフォーマンスに対する信頼、とした。


人とAIとの新たな関係を育み、良い相互関係を構築

25年目を迎えた「アクセンチュア テクノロジービジョン2025」では、AIの自律性によって切り拓かれる未来を調査した。

企業や社会におけるAIの普及速度は目覚ましく、過去のあらゆるテクノロジーより最も早く普及している。企業の経営幹部の69%は「自社システムとプロセスの設計、構築、運用方法や、組織の再創造が急務」だと考えている。この調査はまた、AIが技術開発パートナーやブランドの個別アンバサダーとして機能したり、物理世界のロボットを動かしたりすることで、人とAIとの新たな関係を育み、良い相互関係を構築する動きが強まるだろうと予測している。


アクセンチュアの会長兼最高経営責任者(CEO) のジュリー・スウィート(Julie Sweet)氏は次のように述べている。

ジュリー・スウィート氏

今年で25回目となるテクノロジービジョンは、経営者に今後の展望を示しています。AIは継続的に学習し、人と共に、また人に代わって自律的に行動するでしょう。そして、企業や人が、わくわくするような新しい方法で継続的な再創造をサポートしてくれるでしょう。AIの驚くべき可能性を解き放ち、可能性を最大限に引き出すためには、企業と人が、適切なタイミングでAIのパフォーマンスと成果に対する信頼を評価する必要があり、そのための体系的なシステム作りをすることが求められています



AIによるポジティブな影響を広げていくためには、AIに対する信頼が不可欠だ。すなわち、技術的な側面の裏でAIが公正かつ期待通りに機能するという信頼が求められる。AIの責任ある活用のみならず、デジタルを活用するシステムとAIモデルがより正確で予測可能であること、一貫性があり追跡可能であることが肝要である。企業の経営幹部の77%が、AIの真の利点は信頼の基盤があって初めてもたらされると考えている。さらに81%の経営幹部は、この信頼戦略はあらゆるテクノロジー戦略と並行して進化しなければならないと考えている。

アクセンチュアの最高技術責任者(CTO)兼アクセンチュア テクノロジーの最高責任者であるカーティク・ナライン(Karthik Narain)氏は次のように述べている。

カーティク・ナライン氏

知識のデジタル化、新しいAIモデル、エージェントAIシステムとアーキテクチャの進歩により、企業独自の認知型デジタルブレインを構築できるようになります。従来のテクノロジーは長きにわたり、予め決められたビジネスニーズをサポートしてきましたが、今、世代交代の時を迎えています。汎用AIシステムが生み出す自律性により、組織はこれまで以上にダイナミックに、経営の意図に即したアクションを実現できるようになります。これにより、経営層はデジタルシステムの設計や人々の働き方を見直し、製品開発や顧客との接点を再構築が可能になります。しかし、システムが信頼できるものでなければ、自律的に機能することはできません。すべては信頼が基本となるのです


テクノロジービジョン2025が潜在的な影響を解説

アクセンチュア テクノロジービジョン2025 は、生成AIが技術開発、顧客体験、物理世界、労働力など多岐にわたる要素に与える潜在的な影響を解説している。

・基盤モデルが自然言語の障壁を乗り越えたとき、ソフトウエア開発とエコシステムの根幹を変える変化が起こった。すでに生成AIのコーディングアシスタントは開発者の役割をシステムエンジニアへと高め、コードの民主化とビジネスのデジタル化を加速させている。生成AIを活用したソフトウエア開発とAIエージェントの進歩により、カスタムシステムが台頭し、静的なアプリケーションアーキテクチャから意図に基づくフレームワークとエージェントシステムへの移行が進んでいる。マルチエージェントシステムが、より高い性能や適応力をもって個人に最適化されるようになれば、例えば効率的な旅程の策定から在庫の最適化まで、処理能力の向上によってプロセスや機能全体を管理できるようになり、さらなる普及拡大につながるだろう。アクセンチュアでは、専門的なマルチエージェントシステムを構築し、価値を生み出すまでの時間を短縮するため、GenWizard、SynOps、AI Refineryといった構築済みの業界別エージェントとワークフローを提供することで、この未来を実現している。


・企業はAIを顧客との新しい接点にすべく競っているが、AI体験にも焦点を当てなければブランドの差別化を図ることはできない。80%の経営幹部は、LLM(大規模言語モデル)やチャットボットを使用することで、ブランドの独自性を薄め、類似した情報発信につながる可能性を懸念している一方で、77%の経営幹部は擬人化されたAIを構築し、その体験にブランド独自の文化、価値観、メッセージを組み込むことで、この問題を解決できると考えている。


・汎用ロボットが今後10年で登場し、より多くのAIの自律性を物理世界にもたらすだろう。また、導入時には汎用ロボットだったものが素早く新しいタスクを学習し、専門的なロボットへと成長するだろう。すでに、KIONグループはアクセンチュアとNVIDIAと提携し、AI駆動型のロボットが倉庫業務を最適化し、倉庫スタッフとシームレスに連携して学習することで、より迅速、安全かつ低コストに注文を履行できるようにしている。80%の経営幹部は、ロボットが人と協働しながら継続的に学習することで、人とロボットとの間に信頼とさらなる協力関係が生まれると考えている。


・人とAIの間に、好循環の学習サイクルが形成され始めている。多くの人がAIを使用すればするほどAIは改善され、その結果、人々はさらに活用したくなるのだ。従来の自動化とは異なり、このAI新時代では、一度限りの利益にとどまらず、AIのスキルを向上させ、個人や組織全体にとっての価値を高めることができる。経営幹部にとって重要な優先事項として、80%が人とAIの間でポジティブな関係を確保することを挙げている。自動化に対する猜疑心がその進展を妨げないようにするためには、まず従業員に戦略を伝え、彼らをプロセスに巻き込むことが必要なのである。


・アクセンチュアは先日、スタンフォード・オンラインとの提携により、顧客が生成AIに関する知識とスキルを磨くための生成AI学習プログラムを発表した。加えて、企業はすべての従業員に優秀なデジタルアシスタントを提供することで、従業員に新たなスキルを習得させ、生成AIツールの活用の幅を広げることが可能になる。生成AIの活用に長けている人は、生成AIに対する好意的な認識を持つ可能性が5倍高く、結果として組織もその恩恵を受けることにつながる。

アクセンチュア テクノロジービジョンについて

アクセンチュアのテクノロジービジョンは、25年間にわたって、企業全体の状況を体系的に調査し、ビジネスや業界を変革する可能性が高いテクノロジー・トレンドを特定。2025年のレポートでは、学界、ビジネス界および公共部門にまたがる20数名の専門家からなる外部アドバイザリーボードから知見を収集した。また、2024年10月から12月にかけて世界28カ国で実施された、21業界の4,000人以上の経営幹部と、12,000人以上の消費者を対象とした調査も含まれている。

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ロボスタ編集部

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