先進国では独居老人が急速に増加している。
2022年のTIME誌に特集されたロボットベンチャー、ドーナッツ ロボティクス株式会社は、「人類を場所・時間・言語・物理的な制約から解放する」をミッションに掲げる株式会社メタリアルとの協業で、「ChatGPT」を高齢者向けにチューニングし、見守りロボット「cinnamon」(シナモン)に搭載することを2023年4月18日に発表した。
両社は、多くの高齢者が持つ「孤独感」を最新のテクノロジーで解消し、高齢者の幸福感と生活の質の向上を目指すために開発をスタート。「cinnamonは、どんな内容の声掛けにも対応し、子供や孫のような存在になっていくだろう」と述べている。
ChatGPTの高齢者向けチューニングとは
これまでも 会話AIは数多く存在したが、特定の場面では力を発揮するものの、会話が成り立たない事も多かった。これに対して、これまでのAIとは学習方法の違うChatGPT会話AIは、人間にとって違和感のない会話が可能だ。ChatGPTは、ユーザーの感情を汲み取る能力も進化しているが、メタリアル社は、ここに更にチューニングを加え、高齢者への思いやりを持ったAI会話の実現を目指した。
高齢者向けChatGPTとの会話例
【cinnamon】:こんにちは。お名前を教えてもらえますか?
【高齢者】:○○じゃ。
【cinnamon】:○○さん、今日はご機嫌いかがですか?
【高齢者】:おかげさまで。元気じゃよ。
【cinnamon】:○○さん、元気そうで何よりですね!最近、特に楽しんでいる趣味はありますか?
【高齢者】:最近は散歩するようにしとる。
【cinnamon】:○○さん、散歩がお好きなんですね!素晴らしい!散歩の途中で見つける何か気に入った場所や風景は ありますか?
【高齢者】:公園の木をみるのが好きじゃな。
高齢者向けChatGPT搭載のcinnamon
高齢者が使用する為には、余計な設定は必要ないところが重要だ。cinnamonには赤外線センサーが搭載されており、電源が入っていれば、ロボットの周辺を通るだけで、ロボットから高齢者に話かけていく。
同ロボットと、スマートスピーカーやTV、タブレットなどとの違いは、ロボットから呼びかけができる点だ。ChatGPT自体は質問を待つしかないことがその課題とも言えるが、ロボットがセンサーで人を検知して会話のきっかけ作りをすれば、その課題も解消される。
また、両社は、高齢者を監視するのではなく見守っていく為には、そのハードウェアは人の形をデフォルメしたロボットが最適と考えている。日々のコミュニケーション機会を多く作った結果、高齢者の孤独感を薄められるよう開発を進め、今後、高齢者との実験を経てロボット量産化を検討する予定とのことだ。