安川電機は「2025国際ロボット展」で、ヒューマノイドと自律移動型ロボットアームが連動したデモを公開した。複数のロボットを「MEC AI」で制御する提案だ。

これは安川電機の持つ高いロボット技術と、ソフトバンクが次世代モバイル通信としてNVIDIAと推進する「AI-RAN」(MEC : Multi-access Edge Computing、エッジAIを支える重要なネットワーク基盤技術)を組み合わせた「未来のスマートビル」の様子を描いたもの。
「AI-RAN」ではモバイル通信の基地局やRANをAIで最適化し、高効率で高度な通信を実現する仕組み。6Gの中核技術の一つとして、世界的に研究開発が加速している。

展示デモ「ロボットが人と共に働く未来の空間」の内容
スマートビルではヒューマノイド「Torobo」が働いている。「Torobo」は早稲田大学発スタートアップの東京ロボティクスが開発しているフルサイズのヒューマノイド(移動は車輪型)。安川電機は2025年7月に東京ロボティクスの全株式を取得、10月に買収を発表している。

もう1台は安川電機が開発する次世代の人協働・サービスロボット向けプラットフォーム「MOTOMAN NEXT」。人の周囲で安全に働くことをコンセプトに掲げる。

このデモでは「IT層」(ビル管理システム)、「MEC AI層」「Robot AI層」(エッジデバイス:ロボット)の3つのレイアーが連携する。ここでポイントとなるのが「MEC AI層」だが、ここではAIエージェントの形態で連携している。

舞台は新人社員研修の日。「Torobo」は新人社員研修のために会議室に向かう。一方の「MOTOMAN NEXT」は倉庫の整理整頓の作業を黙々と行っている。
「MEC AI」はスマートビル内の状況と自動化されている全てのタスクを予め理解しており、ロボット達がおこなうべきことを判断し「Toroboさん、まずは3人の新人の配付資料とスマホの確認をしよう」と作業の指示を送る(デモでは音声)。

「Torobo」が現場を確認すると、3人分の資料はきちんと用意されているが、研修用のスマホが2台しかない。そのことをMEC AIに伝える。

MEC AIはToroboの報告を受けて、オフィス内の倉庫のスマホの在庫状況を確認、同型の機種が倉庫にあることを確認する。

MEC AIは倉庫を整理中の「MOTOMAN NEXT」に指示を送り、倉庫の在庫からスマホ1台を「Torobo」宛てに用意して欲しいと指示する。「MOTOMAN NEXT」は指示に従って自律的に指示通り準備をはじめる。

スマホが届くの待つ間、「Torobo」は机の清掃作業を自律的におこなっている。

箱から取り出した緩衝材をゴミ箱に入れようとする「MOTOMAN NEXT」だが、MEC AIが「取り出した緩衝材は再利用するからゴミ箱に入れないで。リユースボックスに入れてね」とそっと指摘する場面も見られた。また、「MOTOMAN NEXT」は作業の途中で緩衝材を落としてしまうが、それを自身で検知して拾い直す場面もあった。


こうして無事に「MOTOMAN NEXT」が出荷ボックスにスマホを入れると、MEC AIは「ありがとう。これでタスクは完了。箱を畳んで片付けて、整理タスクに戻ってね」と指示をした。
このデモでは、ビル内のロボット群を「MEC AI」が管理・制御し、複数のロボットに指示を送る様子が描かれている。「AI-RAN」ではこれをモバイル環境でも効率的(オーケストレーション)に実現することを目指して開発が進められている。基地局に「MEC AI」を設置する「AI-RAN」では、AIの管理や推論をクラウドで実行するより、レスポンスの良い迅速な判断が可能となる。







