6月29日、「第3回 IBM Watson 日本語版ハッカソン」が東京汐留のソフトバンク本社にて開催され、最優秀賞は株式会社インキュビットの「Smart Video Ad」が受賞した。
IBM Watson賞(最優秀賞)を受賞した「Smart Video Ad」株式会社インキュビット。180万円相当のエコシステムパートナー開発環境利用権限(1年)を獲得した
再生中の動画に関連した最適な広告を表示するシステム
株式会社インキュビットはチャットボット開発事業に取り組むスタートアップ企業で、受賞した「Smart Video Ad」は再生中の動画に関連する広告を表示することで、広告効果を向上させ、CVR(アクセス数やクリック数等)を向上させるシステム。
YouTUBEなどの動画には、タイトル、説明、タグ、カテゴリ、字幕など動画内容を説明する「動画メタデータ」を付随させることができる。多くの動画配信サイトでは動画再生時に広告が表示されるが、従来からこのメタデータを使ってある程度は適した広告を表示させてきた。「Smart Video Ad」は動画を Watson等で多角的に解析して内容を理解することで、従来より更にマッチした広告を表示するしくみ。映像に何が写っているかはディープラーニングで解析、人物はWatsonの画像認識で解析し、タレントであれば誰なのかの認識も試みる。映像のナレーションや会話等はWatsonの自然言語分類でテキスト変換してキーワードを抽出し、何を話題にしているの動画なのかをカテゴライズする。
抽出した情報、物体、人物、キーワードと「話題」を掛け合わせ最適な広告を判断して表示すると言う。例えば、キーワードが「イタリア」だったとして、内容の話題がファッションであれば「アルマーニ」、話題がグルメに変われば「ピザ」に、観光の話題になれば「旅行ツアー」の広告が表示されるというしくみだ。
デモでは築地市場のリポート動画を題材に、音声や動画内容を解析した結果が画面表示され、お寿司やグルメの内容の再生中には寿司関連の広告が表示されるところを実演。動画のタイムラインのどこから何の広告を表示すれば効果的かの判断が示された。
従来は動画の属性による広告配信だったが、このシステムによってユーザが何を見ようとしていて、何に興味関心があるのかを考慮した広告表示が可能になるとしている。ビジネスモデルとしては、アドテク企業(DSP)への解析したメタデータの販売すること、更に動画配信サービスの動画を解析して最適な広告表示に繋げる動画メディアの収益化支援が考えられると言う。また、外国語の自然言語分類(NLC)を使用することで海外のニーズにも対応できる。
決勝戦に進んだ5チーム
第3回 IBM Watson 日本語版ハッカソン(以下、Watsonハッカソンと表記)は61チームが応募、54チームが参加し、書類審査を通過した13チームがハッカソン(Day2とDay3)に進み、決勝戦には以下の5チームが進んだ。
また、今回のハッカソンではPepperと連携したアイディアも募集され、決勝戦には2つのチームが進出した。
ひとつはPepperが社員に話しかけたり一緒に簡単なゲームをすることで社員のストレスを測定する「スマート職場」(富士フイルムICTソリューションズ)だったが、Pepperはネットワークの不調で残念ながらデモに至らなかった。
もうひとつは海外からの旅行者を対象としたもので、旅行者が駅構内などに設置したPepperにSuicaカード等の交通系ICカードを読み込ませることで情報のインプットを簡略化、旅行者の観光や行動履歴等を理解して、周辺のお店や観光地などをリコメンドするシステム「スマートおもてなし」(ジェイアール東日本企画)。こちらはPepperを使ったデモは無事に動作したものの受賞することはできなかった。
「Smart Video Ad」インキュビット(最優秀賞)
「スマート自治体」システムリサーチ
「スマート長距離運転パートナー」セイノー情報サービス
「スマート職場」富士フイルムICTソリューションズ (Pepper連携)
「スマートおもてなし」ジェイアール東日本企画 (Pepper連携)
今回を含めて、3回のWatsonハッカソン決勝進出チームから13チームが出場する言わばチャンピオン大会「SoftBank World Challenge 2016」が7月22日(金)の「SoftBank World 2016」の2日めのイベント「D2-1」(予選)「D2-2」(決勝:定員制)として予定されている。
▽第3回 IBM Watson 日本語版ハッカソンday3に行ってきました。(前編) – ロボスタ
https://robotstart.info/2016/06/15/watson-hack3-01.html
▽第3回 IBM Watson 日本語版ハッカソンday3に行ってきました。(中編) – ロボスタ
https://robotstart.info/2016/06/17/watson-hack3-02.html
▽第3回 IBM Watson 日本語版ハッカソンday3に行ってきました。(後編) – ロボスタ
https://robotstart.info/2016/06/17/watson-hack3-03.html
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。