サイバーダインとAIGが脊損受傷の小中高生を対象にロボットスーツHALを使った「歩行機能向上促進プログラム」を神奈川で実施!あきらめを希望に変える

あきらめが希望に。
「もう足は動かない」というあきらめが、「また動かせるようになるかもしれない」という希望に変わる。
希望の灯りはロボットが灯そうとしている。

サイバーダインとAIGジャパン・ホールディングスは、神奈川県と連携し、脊損受傷小中高生を対象に、ロボットスーツ「HAL」(ハル)による「歩行機能向上プログラム」を実施することを発表した。


具体的には、神奈川県に在住、または神奈川県で修学している、脊髄を損傷する事故にあったり、その後遺症などで自律歩行が困難な児童や生徒たち50名を公募し(6歳から18歳)、神奈川県藤沢市にあるサイバーダインの子会社が運営する「湘南ロボケアセンター」において、下肢用ロボットスーツHALを装着しての歩行機能向上促進を行うプログラム(90分/最大10回分)を無償提供するというもの。募集は本日より開始した。

記者会見では実際にロボットスーツHALが使われている映像が公開された。学校内で事故に遭い、歩行が困難になった女生徒が初めて湘南ロボケアセンターに向かうところ

ロボットスーツHALを装着して、歩行のトレーニングを行っている様子

ロボットスーツHALはサイバーダインが開発した。身体に装着し、操作は装着者の意思だけで行う。装着者の脳から筋肉に送られる信号を「生体電位信号」として読み取ることで、HALはその意思を理解し、歩行動作を支援するしくみだ。

ロボットスーツ「HAL」(下肢用)

例えば、装着者が「右足を曲げる」「脚を伸ばす」「歩く」と考えることで、HALがその意思を感知して装着者の足を曲げたり、伸ばしたりを行う。

ロボットスーツHAL(向かって左)とスタッフの男性はセンサーで繋がっている。男性がヒザを曲げるとロボットも曲げる

ロボットスーツHALのすごいところはコレ。男性はヒザを曲げていないが、「ヒザを曲げる」と意識しただけでロボットは生体電位信号に反応してヒザを曲げている

重要な点は、ロボットスーツHALが装着している時のみ歩ける歩行支援用の器具ではなく、歩く意思を高め、最終的には自身の脚で歩けるようになることを目指す、装着者の歩行機能の向上を促進するロボットであることだ。

■湘南ロボケアセンターの様子


CYBERDYNEとAIGジャパン、神奈川県の連携プロジェクト

記者発表会で神奈川県知事の黒岩祐治氏は「神奈川県は”未病の改善”と”最先端医療・最新技術の追求”という大きな2つのテーマを掲げている。このプロジェクトの推進はこのテーマに大きく寄与するもの」と語り、「歩行ができなくなって困っている小中校生に対して、最先端の歩行機能向上促進を体験する機会を与えることができる」とした。

神奈川県知事の黒岩祐治氏

保険会社大手のAIGジャパンは同社が掲げている事業コンセプト「ACTIVE CARE」に基づき、このプログラムを支援し、費用を負担する。「ACTIVE CARE」は「まさかのことが起こる前に正しく備え、リスクを予防する」ことをテーマに世界中の最先端技術を率先して導入してきた。
CEOのロバート・ノディン氏は「サイバーダインの優れた技術を、困っている子ども達に届けたいと考えてきた」とし、このプログラムが「脊髄障害をおった子ども達の助けとなり、生活の質が向上することに期待したい」と語った。

AIGジャパン・ホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO ロバート・ノディン氏

山海氏は「脊損受傷の子ども達がロボットスーツHALを装着して一体化し、装着者の意思によってHALが動くことで、最終的には人とロボットの間で損なわれている機能を自律的に改善していくループが回り始める」と説明した。
現状のロボットスーツHALは身長約140cm以上を対象としたSサイズが最小だが、今回のプログラムが実施されることがきっかけで、6歳からの児童向けに更に小さなSSサイズの開発を進めることになったという。このような連携プログラムによって、技術開発が加速することを示唆した。SSサイズはプログラム実施期間中にリリースする予定。

CYBERDYNE株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 山海嘉之氏。筑波大学大学院 教授、内閣府「ImPACT」プログラムのプログラム・マネージャーでもある。工学博士

AIGの「ACTIVE CARE」は、前述の通り「まさかのことが起こらないようリスクを予防する」取り組みだ。山海氏は「ACTIVE CARE」との連携について「ロボットスーツが社会的な負担やコストを削減していくことが重要」とし、「サイバーダインのデバイスはIoT化されていて、日々の情報を集積・蓄積し、人工知能等を使って統計解析を行うことができ、患者さんがどのように機能回復していくのかを解析することができる。それを活かせば、未病期間にリスク予防したり、万が一のことが起きたときに、より早く機能回復することにそれらの情報を活かすことができると考えている」と語った。


損傷した脳や脊髄の機能が回復する可能性

生体電位信号は意思として脳から出て、身体の動作系の各部位に伝達される。ロボットスーツHALは各部位の近くで信号を検知する。脳からは多くの信号が発信されているため、例えば下肢を動かしたいという信号を脳の周辺で検知するのは難しいためだ。
また、信号は脳から脊髄、運動系へと身体中をかけ回っている。ロボットスーツHALを装着することで、人とロボットが連携して、信号がかけ回ることになる。脳や脊髄は損傷してもそれを補完するようになる能力が人間には備わっていると考えられているが、装着者が意思を持って身体を動かそうとすることで、生体電位信号の活性化が起こり、次第に運動能力が回復していく可能性がある、ということなのだろう。サイバーダインによれば、脳卒中などの脳の障害による機能不全についても同様にHALによって回復させる研究を行っていると言う。

報道陣のインタビューに応える山海氏

なお、年齢が若い人の方が一般に身体の回復能力が高い傾向にあると言われているのと同様に、今回のプログラムの対象となる児童や学生がロボットスーツHALによって回復できる可能性は、成人よりも大きいと考えられる。
ましてや本来ならこれからの人生に希望溢れる年代である小中校生だ。ロボットスーツによってひとりでも多く、回復への希望の灯りを感じられたら、これは素晴らしいプログラムになると期待している。

また、ロボットスーツHALによる回復した過去の事例としては、脳卒中で下肢が不自由になり、主治医は下肢の回復は困難と診断をしたが、HALによる機能回復プログラムを実施したことにより、二ヶ月後にはジョギングをして帰れるようになった。また、事故で脊髄を損傷し、手足が動かず、話すこともできなくなってしまった男性がHALを下肢に装着して機能回復プログラムを実施。それによって、手を降ったり、挨拶を言って帰るようになるところまで回復したと言う。これはすなわち、下肢だけでなく、上肢や発話も連動して回復したことを意味している。

AIGジャパンは、サイバーダインとの連携やこのプログラムを「リスクを予防して積極的に生活していくための第一段階」だと捉えている。
社会貢献、CSRの一貫として取り組むとともに、この活動を拡げていきたいと考えている。
サイバーダインとの連携で得られるIoTビッグデータの意義について聞くと「保険業務では過去のデータがとても重要になる。未病の状態を理解し、どのようにすれば病気を防ぐことができるのかという分析にも役立つ。山海社長の言葉を借りると、これは「IoH」、Internet of Humanだと考えている。IoHによって得られるデータは、リスクを予防し、私達の顧客である多くの消費者たちがアクティブに生活していくことに活かされていく」との回答をもらった。


応募について

応募対象者は下記の通り。用件を満たす児童・生徒の保護者から「湘南ロボケアセンター」に電話にて相談・申し込みを行う。
電話番号は 0466-30-2360 、平日 9時~18時のみ。
プログラム実施期間は平成29年11月~30年9月。
ほかに平成30年3月まで、体験希望者募集期間がある。

※クリックして拡大

「応募要項」の詳細については、サイバーダイン社のホームページに「Hot Topics」としてアップされている。
下記リンク(PDF)のプレスリリース文の後に記載されている。
https://www.cyberdyne.jp/wp_uploads/2017/10/20171011_2_news_j.pdf

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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