アクセンチュアが「AI Hubプラットフォーム」を発表!複数のAIエンジンを組み合わせて「人との協調」から「完全自動化」AIまで対応

アクセンチュア株式会社は「AI Hubプラットフォーム」を発表し、本日、報道関係者向けに記者説明会を開催した。

「AI Hubプラットフォーム」とは、音声認識や音声合成などの対話技術、AI関連技術、グループウェアや基幹システムなどを連携させた基盤となるサービス。様々なAPIや要素技術が予め用意されていて、組み合わせてシステム構築するフレームワーク的な要素を持つ。

アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア・デジタル・ハブ統括 マネジング・ディレクター 保科学世氏

例えば、AI関連サービスであれば、IBM Watson(Bluemix)、AWS(Amazon)、GCP(Google)、Microsoft Azureなど、クラウド等で提供されているAPIを自由に組み込んだり、組み合わせることができる。「いろいろなAIがあってどれを選んでいいのかわからないという声に答えたい」(保科氏)とする。顧客の業務改善に最適なAIエンジンをアクセンチュアが選択し、それらを組み入れた自由度の高いシステムの構築が可能だ。

AI Hubプラットフォーム。複数のAIエンジンを組み合わせ、人間のオペレータとの協調もめざすプラットフォーム。ホームページやアプリ、SNS、スマートスピーカーなど

組み合わせるシステムは「AI」に限らず、音声対話型のシステムであれば、音声認識や音声合成、自然言語に対応した質疑応答エンジンと会話データベースなど、いくつかの要素技術等が必要となるが、それらも最適なものを組み合わせて提供できる。

記者発表会では、「AI Hub」のデモンストレーションが2種類行われた。


社内向けサポートセンター用AIチャットボットのデモ

ひとつはテキストのAIチャットボット「Randy-san」。24時間365日対応の社内サポートセンター的な役割を担う。

AIチャットボット「Randy-san」のシステム構成図。今回はAIエンジンにNTTコミュニケーションズの「COTOHA」が使われたが、IBM Watsonや東芝リカイアス、GoogleやMicrosoftなどの中から最も適したAIエンジンを使うことかできる

AIチャットボットに「妻が出産したがどうしたらいいか」という問合わせをしているところ。何時でも短時間で回答が得られること、問合わせに一次対応するスタッフの人員が効率化できることがメリットだ。他には「英語スキルを向上させたい社員が自分に最適なトレーニング方法を問い合わせる」事例などが紹介された

AIチャットボットを利用して得られる情報の例



複数のAIエンジンと連携したデモ

もうひとつは、記者たちの一日の行動をLINEを使った対話形式で支援するエージェントAIを想定したもので、記者がLINEで「今日のスケジュール」「訪問先企業(例ではアクセンチュア社)のリサーチ」「経費精算で領収書の精査」「周辺レストランの検索」「他の社員との会議スケジュールの調整と会議室の予約」が行われた。特長的なのは、すべてLINEのやりとりで行えることと、それぞれの業務によってGoogleカレンダー、NTTコミュニケーションズのCOTOHA、Google Cloud Vision API、IoT + Accenture Recommend Service、IBM Watson Conversationと、連携しているAPIが異なる点だ。

「1.スケジュール確認」〜「5.会議調整」まで、すべての業務に異なる機能APIを連携させたシステムのデモ

ユーザーが使うインタフェース画面はすべて「LINE」、音声での問い合わせにシステム(AI)が回答するデモ。画面では故意にシステムが「アクセンチュア」を認識していない状況から、アクセンチュアの情報をシステムがウェブを検索して自律学習して回答するプロセスも行われた

デモ実行中のシステム(AI)が単語を理解したり、情報を検索し、最適な回答に導くプロセスをビジュアル的に見せる画面も用意された

一般に、大手ベンダーやシステム・インデクレータに開発を依頼すると、AIエンジンや自然言語対話システムなど、自社システムや特定のベンダーの製品やサービスを中心に構成したシステム開発が行われる傾向にある。AIエンジンや自然言語対話システムにはそれぞれ特長や得手不得手があるため、エンドユーザーの業務にマッチするかどうかも課題となる。その点、同社の「AI Hubプラットフォーム」の場合、いくつかのAIや対話システムを研究した上で、特定のベンダーに偏らず、エンドユーザーの改善や自動化したい業務や課題に合わせて、その時に最も進んだ技術群で構成したシステムで提案できる、ということを強みとして捉えている。

デモを行ったアクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 シニアマネージャー 飯澤拓氏

■ AI Hubを使ったシステムのデモンストレーション


開発自由度の高いプラットフォームに育てたい考え

「AI Hubプラットフォーム」は既に数社に導入していて、今回の記者発表会をきっかけに正式なサービスとして展開していく考えだ。公式なウェブサイトも正式にオープンした。
当面はSaaS(Software as a Service)形式のサービスで、同社内の「AI Hubプラットフォーム」で様々なAPIを繋いで開発したシステムとして提供していくが、将来はシステム開発会社が「AI Hub」を使って自由に開発できるプラットフォームに育てていきたい考えだ。ただ、現時点では料金や課金の形態、SDKや開発環境の提供方法などの詳細は公表されていない。

アクセンチュアはコンサルティング会社として知られているが、システム開発も幅広く手がけている。例えば、NTTコミュニケーションズはLINEを使ったAIによる自動チャットサービスを三井住友フィナンシャルグループとSMBC日興証券に提供しているが、このシステムの開発協力支援にも同社は名前を連ねているほか、海外のアウトソーシングを中心としたシステム開発にも積極的だ。

AI Hubはプラットフォームとしてはフレームワークのような存在だが、それに加えて「人と人とのコミュニケーションがどうあるべきか」など、一般のAIエンジンやAPIだけを提供するサービスには苦手と言われている「人間らしさ」のような部分を補完する存在にしていきたい、としている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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