若手のAI起業家育成を目指すディープコアが「KERNEL HONGO」を公開!東大の松尾教授も登壇し、AIがある未来を語る

AIやディープラーニングに特化したインキュベーション事業を展開する株式会社ディープコアは、活動拠点のひとつとなる施設「KERNEL HONGO」(カーネル・ホンゴウ)の正式オープンを発表し、それに伴って同施設での事業説明会を行った。説明会ではディープコア社長の仁木氏や東大の松尾教授らが登壇し、現在の日本とディープラーニングと起業家の状況を語った。


ディープコアはソフトバンクグループ株式会社が100%出資し、アドバイザーには東京大学大学院の特任准教授 松尾豊氏や連続起業家として知られる孫泰蔵氏らが就任している。最近では、エムスリーと医療系AI分野で事業化支援プログラムを開始したり、人間の動きを人工知能でリアルタイム分析するUplift(Uplift Labs)への資金提供等を報道発表している。

報道陣に公開されたKERNEL HONGO。ラウンジ


「KERNEL HONGO」とは

「KERNEL HONGO」は、WeWorkが全面的に協力し、デザイン監修などを行った最先端のコミュニティスペースだ。若手のAI技術者や研究者たちを起業家に育成するために機能させる。NVIDIAがサポートを行い、AIコンピューティングのリソースが利用できるほか、技術コンサルティング、Deep Learning Institute(DLI)の参加、Inception Programへの推薦など、包括的なサポートが提供される。

KERNEL HONGOの参加対象者は「KERNELメンバー」と呼ばれ、公募によって選ばれた。AI技術者や研究者、AI応用分野人材などから構成され、初期メンバーは約100人。


KERNELメンバーが、企業や研究機関などとの共同実証実験や、多様な交流の機会を通じて⾃らの内なる可能性に気づき、社会にインパクトを与えるイノベーションを起こす⼈材に成⻑する場を提供するとしている。



AIで破壊的なイノベーションを促す

発表会にはまず、ディープコア 代表取締役社長の仁木氏が登壇した。
仁木氏は、MicrosoftやGoogle、Facebookを例に「破壊的なイノベーションは起業家精神を持った技術者によって生みだされている」と切り出した。第四次産業革命のキーテクノロジーとして「ディープラーニング」をあげ、金融、エネルギー、農業、教育など、AIがすべての産業を再定義すると予想する。また、ディープラーニングの社会実装に向けては技術者と産業界を適切に繋ぐ役割が必要として、ディープコアがコミュニティ運営、実証実験、投資まで社会実装や起業までの一連のタスク実現の支援を行い、世界に通用するスタートアップの輩出を目指すと語った。
仁木氏は起業家を目指す人はあまたいるものの、AIの技術者をベースにした起業家精神を持つ者に注目している。

株式会社ディープコア 代表取締役社長 仁木勝雅氏


ディープラーニングによってトップ10企業が入れ替わる

続いて、東大の松尾教授が登壇した。ディープラーニングは「単純でありながら汎用性が高い」ことがポイントで、「数十年に一度の技術」だとした。同様に社会に大きく影響を及ぼした技術として、電気、トランジスタ、エンジンなどを例にあげ、トランジスタはラジオやテレビ、パソコンや携帯電話に、エンジンは自動車などに応用されて社会に浸透していった、とした。

技術顧問 東京大学特任准教授 松尾豊氏

ディープラーニングもそれらに並ぶようなものであり、ビジネス面ではインターネットが登場した黎明期、1990年代の状況に近い、と話した。インターネットを中心にしてIT企業が世界の時価総額のトップランキングを占めているが、これから 10〜20年でそのメンバーが大きく変わるだろうと期待している。それはディープラーニングが単純で汎用性が高いテクノロジーだからこそ、それをベースにした企業がトップランクに登場してくるだろう、それら新たに加わるメンバーを日本からも輩出したいと考えていると語った。


本郷をテック系の新たな聖地に

最後に登壇したディープコアのCFOの雨宮氏は、ネットが中心の社会になりつつある現代においてもシリコンバレーやモントリオールなど、テック系の本拠地として物理的な場所は必要であり、ビジネスに有効だと考えているとした。ではなぜ渋谷や六本木ではなく「本郷」なのか?

株式会社ディープコア CFO 雨宮かすみ氏

仁木氏が語ったようにディープコアは「AIの技術者をベース」にした起業家精神を持つ者を支援したいと考えている。本郷と言えば東京大学があるが、東京大学の学生の多くは技術は持っているものの起業家になる道筋を知らなかったり、起業に目覚めていない人も多いと言う。そう言った技術研究において良いものを持っている若者の可能性を引き出したい考えもあって本郷を選択したと言う。


KERNEL HONGOについては、技術者が集まるコミニュティ、24時間使えるオープンなスペース(セキュリティの高いスペースも用意)、膨大な計算処理も行えるコンピュータ資源、実証実験についてもやりやすい環境や経験、知見を提供していきたい、とした。
気になるのはKERNELメンバーの構成だが現在は約100人。属性は大学の学部生が約半数、博士課程・修士課程の大学院生が約30%、残りが社会人(技術系)となっている。


年齢層は20歳代前半がボリュームゾーンだ。バックグラウンドの属性ではAI技術者が78名と大半を占める。一方で、下図にドメインで表現されているような、特定の事業や分野に深い知見を持っているメンバーも含まれている。


下記のように、KERNELメンバー主導でのイベントも行われると言う。


既に投資や開発、実証実験などの活動は進められていて、防犯カメラ解析AIの「VAAK」、AI運動データ解析の「Uplift」、CGキャラクターと連動したAIアシスタント開発の「UsideU」など、ディープコアが支援している企業が紹介された。なお、同日に「VAAK」と「UsideU」については報道陣向けにデモも行われた。




KERNEL HONGOの施設写真

KERNEL HONGOのバントリー

作業スペース。フリーデスク制で、自分のパソコンを持って自由に作業できる

パソコンデスクは電動で上下できる

気分を変えて立ってパソコン作業もできる

会議室や打ち合わせテーブルはそこここにある

セキュリティが確保されている部屋もある、ボタンを押すと

シェードガラスになる。この部屋には入室管理装置、監視カメラなども設置されている

働きやすい施設、ビジネスが育つ環境、実証実験や企業との接点など、起業家が成功するための支援は様々な方法がある。海外の企業に対抗して、日本の起業家達がAI事業で夢をつかむ事例が、次々と生まれることを期待したい。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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