三菱地所に5種類の業務用清掃ロボットが大集合、特徴や長所を比較!シーバイエス「swingobot2000」、マクニカ「Neo」ほか

出揃ってきた自動運転清掃ロボット。
それぞれどんな特徴があって、どのようにすぐれているのだろうか?

三菱地所が大手町の本社ビルにおいて、ソフトバンクロボティクスの小型バキューム式清掃ロボット「Whiz」(ウィズ)導入に向けての実証実験を行い、その様子を報道関係者に公開したことは既報のとおり
当日は「Whiz」以外にも、三菱地所が実証実験を行ったり、導入を決めている掃除ロボットや自動運搬ロボット、警備ロボットなども公開された。今回は、大型のスクラバー(水洗浄)式の掃除ロボットについて解説、比較していきたい。

公開されていた清掃ロボットは5種類。日本信号の「クリナボ WET TYPE」、マクニカの「Neo by Avidbots」(Neo)、シーバイエスの「swingobot2000」(スウィンゴボット)、ソフトバンクロボティクスの「RS26 Powered by BrainOS」(RS26)と「Whiz」だ。

大手町パークビルに並んだロボット。奥から自動運搬車、警備ロボット、清掃ロボットの「クリナボ WET TYPE」「Neo」「swingobot2000」「RS26 Powered by BrainOS」「Whiz」(手前)


各清掃ロボットの特徴

Whizは小型のバキューム型(吸い込み式)の清掃ロボットだが、それ以外は大型のスクラバー式ロボットとなる。すべて自律運転に対応している。各ロボットは大きさの違いと清掃ルートをロボットに教える「ティーチング」方法に違いがある。RS26は清掃スタッフが乗って清掃すると、そのルートを自動学習するティーチング方式だ。RS26と同系システムのWhizも、押して清掃したルートを自動学習するタイプだ。三菱地所は現場の清掃スタッフ自らが簡単にティーチングできる簡便性を高く評価していて、作業を行うスタッフからも「自分が清掃して欲しいとおりにやってくれる」と好評だと言う。

ソフトバンクロボティクスの大型スクラバー「RS26」。運転したとおりにルートを学習し、次回からは自動走行で清掃を行う。操縦しているのは三菱地所株式会社 ビル運営事業部 兼 経営企画部 デジタルトランスフォーメーション推進室 統括 渋谷一太郎氏。

それとは真逆のティーチング方法をとるのが「Neo」と「swingobot2000」だが、そのティーチング方式をむしろ長所と捉える人も多い。ティーチングにあたり、清掃のプロとして担当エンジニアが派遣され、最適な清掃プランを作成し、ロボットにルート等を学習させてくれるからだ。すなわち、現場のスタッフ自身がティーチングできることを長所ととるか短所ととるかによって、機種の選択や評価が分かれる。また、清掃ルートを頻繁に変更や追加するかどうか、現場の事情によっても変わってくるだろう(備品の設置や装飾の変更程度であれば、自律走行時の自動マッピングで対応できる)。
なお、「Neo」の場合、三菱地所の実習実験にあたっては、現場の情報がカナダに送られ、プロの担当者が最適な清掃プランとクリーニング・ルートをひと晩で作成したと言う。


清掃能力が高いシーバイエス「swingobot2000」

三菱地所が実証実験を行う清掃ロボットの中で、今回はじめてお披露目となったのがシーバイエスの「swingobot2000」だ。オレンジ色の車体がよく目立つ。

シーバイエスの「swingobot2000」。清掃幅、28インチ(71cm)、最大稼働時間 4時間、清掃能力 1,540平米/h、タンク容量 90L。離れた場所からリモートでロボットの状況を把握でき、管理できる。作業や分析などのレポート機能も完備

シーバイエスは清掃やビルメンテナンス事業など幅広く手がける企業で、「swingobot2000」はスイスのTASKI社が開発したもの。TASKIは50年以上、業務用の清掃マシンや自動床洗浄機を多数手がけてきた。そこで培われた技術を盛り込んだ洗浄用車両(ハードウェア)に、米国のインテリボット社の自律運転の頭脳(センシング&ソフトウェア技術)を載せて製品化したシリーズで、「swingobot2000」は2018年4月に国内販売が開始された最新機種となる。

■当日の自動運転掃除デモの様子

LiDAR、ソナー、タッチセンサー(バンパー)、赤外線センサーを搭載して、自律走行しながら清掃する。もちろん、人や障害物を検知すると自動で停止したり回避する能力を備えている。LiDARはレーザーの反射を使って周囲の状況を検知したり、マップとの照合などに使用するが、レーザーはガラス素材などに反射しないため、それを補完するためにも22個ものソナー(音波)を使って検知をおこなう。

■TASKIのインテリボット清掃ロボット (イメージ動画:別の機種)

ルートは自律運転によるマッピング方式。基本的なマッピングは「swingobot2000」が自動で作成するが、自動生成のマップではどうしても曖昧な部分があるので専門のエンジニアが現場を確認しながらmm単位で補正をかけて仕上げる。走行を禁止したいエリアはマップ上でバーチャルウォールを設定することができる。効率的で最適な清掃品質に企業のノウハウが詰まっていて、マッピング担当のエンジニアが駆けつけて、床の素材やレイアウトなど、現場を確認しながら迅速に最適なマッピングを施していく、という点が特徴となる。最大のマップ数はエリアのサイズによって異なるが、同社に寄れば、小さなマップであれば100〜200は記録できると言う。
フル充電で4時間稼働。自律走行時でも作業スピードは2.2km/hと高速なことも特徴のひとつ。人が押して清掃するのとほぼ変わらないスピードを実現している。

なお、三菱地所によれば、「swingobot2000」は人の飛び出しに対する反応などのレスポンスが良いと言う(仕様上は0.48秒)。実際に飛び出し検知と回避を体験したが、レスポンス良く認識し、回避範囲は人に添って走行していた。また、洗浄能力についても評価が高いようだ。

■海外の大型スーパー導入例

ユースケースとしては、グローバルではAmazon.comの物流センターなどに50台前後の導入事例がある。床清掃作業の効率化や、自動床洗浄機を長年開発してきたノウハウや技術が仕上がりの良さに反映され、その点がAmazonに評価されたのではないかと同社は推測している。
なお、国内ではJRの駅構内、関西エアポート(関空)、東大附属病院など、既に10台前後が導入されている。


Neoはシリンダー型も選択可能に

マクニカの「Neo」は以前から三菱地所の実証実験に参加している。2018年9月に横浜ランドマークタワーで自律走行や人の検知などのデモ展示をおこなった。

マクニカの自動運転清掃ロボット「Neo」。横浜ランドマークタワーでの実証実験(三菱地所)

■横浜ランドマークタワーでの実証実験の様子

今回、マクニカの「Neo」は、新たにシリンダー型の清掃機能を装備したバージョンを展示した。Neoも関西エアポート(関空)に導入されていることで知られている。前回の横浜ランドマークタワーでの実証実験では、他社のスクラバーと同様にディスク型を採用していたが、シリンダー型に変更することも可能となった。シリンダー型の特徴は大きめのゴミを回収できることだ。スクラバー(水洗浄式)ながら、ゴミの掃除や回収も可能というわけだ。


■ゴミ掃除もできるスクラバー

シリンダーブラシは、ゴミをかき上げて、ゴミポケットに収容するゴミ回収清掃も可能


【清掃場所に合わせて選択する2種類のブラシ】(マクニカの解説より引用)
ディスクブラシ : ワックス皮膜に付着した汚れを表面洗浄することで、ワックス床面を平滑に磨き上げ、光沢維持に貢献します。 最適なユースケース : 空港、ショッピングモール、病院、百貨店、スーパーなど
シリンダーブラシ: 2本のブラシで粗ゴミをキャッチするため、除塵作業の負荷を軽減します。凹凸のある床材や目地でもゴミを残しません。 最適なユースケース : 駅、倉庫、工場など

三菱地所が評価していたのは、カメラ映像や清掃の状況をパソコンやタブレット上でリアルタイムで確認できる「モニタリング」機能だ。清掃管理者が清掃状況や映像をいつでも確認できるのは、業務の進行管理に役立つと言う。


■清掃状況をリアルタイムでモニタリング


クリナボは小回りが効く

日本信号のクリナボは小回りがきくところが長所だ。清掃範囲が中規模で通路が狭い施設に導入する場合にも威力を発揮すると言う。また、清掃中にメッセージや顔文字が表示できる点も特徴的だ。三菱地所では「丸の内へようこそ」などのメッセージ表示をして、コミュニケーションロボットの挨拶的な役割も兼任できないか検討中だ。

日本信号の「クリナボ」


三菱地所による各清掃ロボットの紹介

三菱地所による各清掃ロボットの解説がわかりやすかったので動画で紹介しておこう。
RS26とWhizについては既報記事を参照のこと。

■動画 三菱地所による清掃ロボットの解説がわかりやすい

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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