ロボティクスへの期待やニーズは高まっていて、今後はさまざまな用途に特化したロボット達がより身近な存在になっていくと見られている。しかし一方で、実証実験で思った成果が得られず、本導入を見送った、いわば失敗するケースも多く見られるのが実状だ。
そんな中、ユニキャスト社は約50もの導入事例を持ち、開発したロボットやそのサービスの実用性が高く評価され、実績を伸ばし続けている。そのユニキャストが成功事例のノウハウを活かしたロボティクス・プラットフォームの提供を予定している。そのパートナーを募集するとともにパートナーイベントを7月26日(金)に東京で行うことを発表した。
代表取締役の三ツ堀氏は「業務で実際に役立つソリューションとしてロボットを活用するには、ロボット単体ではなく、複数のロボットや他のデバイスとの接続、更には既存のシステムとの連携を実現していくことが重要」と語る。
そして同社はロボット活用の敷居を下げ、企業が短期間でローコストで導入できる社会を目指して「UnicastRoboticsプラットフォーム」の提供を発表した。このプラットフォームによって「失敗しないロボット・ソリューションが多数生み出される社会、人とロボットが共創する未来づくりの一翼になることを目指す」(同氏)としている。
約50のユースケースでロボット活用
これまでユニキャストが導入してきた事例は多岐に渡る。前述の通り、どれも実証実験ではなく実際の業務に導入してきたものばかりである。また接客に関連するものが多いのも特徴だ。
中心的に導入してきたロボットはソフトバンクロボティクスの「Pepper」とヴイストンの「Sota」。Pepperを使ったソリューションは「接客ガイド for Pepper」というサービス名で、主に「受付」「製品紹介」「住宅接客」「観光案内」を中心に導入を進めてきた。
Sotaはヴイストン社製のデスクトップ型会話ロボットで、ロボットを配置するために大きなスペースが確保しづらい企業に導入している。Pepperと比較するとロボット本体にかかる予算も少なくはじめられる。
どんなユースケースにおいて、ロボットはどのような効果を発揮してきたのだろうか。同社のエンジニア桐林氏に、実際のところを導入事例の一部から紹介してもらった。
空港や銀行で多言語対応
羽田空港や茨城空港では、Pepperを活用して利用客、とりわけ外国人に対して観光情報を提供するサービスが採用され、高い評価を得た。
桐林氏
羽田空港では神奈川県様から依頼を受け、到着ロビー近くの神奈川ブースにPepperを設置し「これからどこに行くんですか?」といった声がけを行い、横浜や箱根観光の魅力を伝えました。多国言語に対応し、日本語だけでなく英語・中国語でも案内しました。
編集部
インバウンドの外国人観光客の増加もあって、外国語での案内や対応に苦慮している企業や店舗も多いようですね
桐林氏
はい、ロボットなら集客効果と同時にマーケティング情報の収集にも役立ちます。羽田空港のケースでは、観光情報をお知らせするのと同時に、ロボットに接続したサーバシステムでアナリティクス(分析)システムを稼働させ、国籍や性別、年齢やグループの人数、どの観光情報に興味や関心を持って、ロボットと会話したかなどの反応を蓄積、統計と分析結果をクライアントにご提供する、というものでした。
紙による一般的なアンケート収集やチラシ配り等の回答率と比較して、約4倍の集客、データ収集成果が得られたと、ご評価頂きました。
住宅展示場での接客
編集部
集客、多言語対応、マーケティング情報の収集。ロボットには他にどのような効果がありますか
桐林氏
ロボットの利点のひとつが24時間365日稼働できることです。接客の中には担当者を置いてお客様のご来店を待っている業務もあります。住宅展示場がそのひとつです。お客様のご来店のタイミング等によって営業担当者がたまたま不在だったり、他のお客様の対応をしているなど、待機していても常に接客できるとは限りません。しかしロボットなら比較的ローコストで常駐させることができ、担当者が接客中でも代わりに説明することができます。
また、営業担当が新人だったりスキルが不足しているケースの場合、ロボットの方がむしろ住宅に関する最新情報を新人より正確にお客様に伝えることができる、と評価を頂いたこともあります。ロボットと連携しているサーバの情報を常に最新のものにしておけば、正確に説明することができます。ロボットがお客様に話す内容を聞いて、逆に担当者がそれを覚える、といった新人の育成にも繋がっているケースもあります。
ユニキャストの導入実績には有名な企業が名前を連ねる。すべて実際のビジネスにソリューションとして導入されたもの。
■接客ガイド for Pepper 関連
空港 | 羽田空港 茨城空港 |
---|---|
銀行 | 横浜銀行 常陽銀行 西日本シティ銀行 筑波銀行 |
住宅展示場 | ワールドプラス ハウスプラス |
ホテルフロント | 美食の湯泊まり プロヴァンス |
その他 | リコージャパン 共同受注体「GLIT」 クリーニング専科(ユーゴー) 理研産業 |
■企業受付 for sota 関連
導入例 | NTT東日本 内田洋行 MotoJP シスメックスス・イー・シー・ハイテック 美容室PORT(リタ) |
---|
UnicastRoboticsプラットフォームをサービス提供へ
ユニキャストは、これらの豊富な実績とノウハウを、誰でも簡単に利用できるしくみ「UnicastRoboticsプラットフォーム」をエコシステムとして提供することを発表した。このプラットフォームを使うと、予め用意された豊富なAPIやソフトウェアモジュールを利用して、簡単にロボット・ソリューションを開発することができる。
ロボットによる業務の効率化や多様化、働き方改革をともに目指すシステム販社やシステムインテグレータ、開発企業を「UnicastRoboticsプラットフォーム」のパートナーとして募集する。
編集部
「UnicastRoboticsプラットフォーム」とはなんですか?
桐林氏
開発者やシステムインテグレータの方々が簡単に短時間で、目的のロボット・ソリューションを構築できるサービスです。
ロボットのアプリケーションの開発をはじめた当初は、要素技術を含めて自社ですべて研究・開発していましたが、既にそういう時代ではありません。他社のものであってもそれぞれの機能に秀でた技術を活用し、組み合わせてソリューションを構築した方が効率的ですし、開発期間もずっと短くなります。当社は今まで50社近くに導入してきた事例やそこで使用した技術を、誰でも再利用しやすいようにできるだけモジュール化し、「プラットフォーム」(基盤)を作りました。それがある程度サービスとして提供できる状況になったので、今回「UnicastRoboticsプラットフォーム」としての提供を発表することになりました。
システムインテグレータの方や販売パートナー様は、クライアントの要望を聞いて最適なAPIやモジュールを選択して組み込むだけで、お客様にぴったりなロボティクス・ソリューションをご提供できる、そんな環境を目指していきます。
編集部
「プラットフォーム」を利用すると便利なケースを具体例で紹介して頂けますか
桐林氏
はい。例えば、ひとつの企業で同じサーバのアプリを使用するのに、ある営業所では大型のPepperを、ある営業所ではデスクトップ型のSotaを使いたい、という要望が出るケースがあります。双方のロボットはOSやシステム、動作するアプリの環境が異なるので、それに対応するのは意外と簡単ではありません。しかし、そんなときでも「UnicastRoboticsプラットフォーム」なら、対応するロボットを入れ替えて、少し設定を変えるだけで導入することができます。導入の自由度が高いことは、ソリューションとして提供するのにはとても重要な要素です。
編集部
UnicastRoboticsプラットフォームではどのような機能のAPIやモジュールが用意される予定ですか
桐林氏
私達は今まで、お客様に合わせて、それぞれユースケースごとに必要な技術をソリューション提供してきました。私達は一度作った要素技術やシステムは、別のユースケースでも簡単にソリューションに組み込めるように、様々な機能の中からどれを実装するか選択するだけのプラットフォームとして構築しています。また、既に秀でた他社の技術があれば、それもプラットフォーム上で組み込めるようにしています。今までのソリューション開発で培ってきたそれらすべてを提供していきます。
機能で言えば、例えば受付では音声認識、音声合成、対話システム、顔認識、社員や顧客データベースとの連携、内線管理システムとの連携などが技術として一般的に必要になります。タブレットやサイネージとの連携が必要になる場合もありますね。私達はこれらの技術をモジュールとして、プラットフォーム上に持っています。
音声認識、音声合成、対話システム、顔認識、骨格検出(姿勢検知)、年齢・性別・感情推定、各種センシング、IoT機器の連携、スマートホーム機器の制御、カメラ機器との連動、チャットボット、社内FAQ、雑談システム、多国語翻訳、決済システム連携、各種データベースや基幹情報との連携、内線管理システムとの連携等
桐林氏
また、先ほどはPepperとSotaを切り換えるケースを紹介しましたが、異なるロボット同士で連携できます。また、対応するロボットは増やしていきます。ロボットだけでなく、タブレットやサイネージ、スマートロックなどのIoTデバイス、チャットボット等とロボットを連携することもできます。ロボットやデバイス同士を連携させるAPIやモジュールを用意しますので開発者は簡単に短時間で構築できます。
編集部
プラットフォームのパートナーとしてどのような方を募っていきますか
桐林氏
プラットフォームをより高機能に、より幅広いニーズに対応するためにはたくさんの優れた要素技術や独自の技術が必要です。それらをお持ちの技術会社様を開発パートナーとして募集していきます。ご提供頂いた技術がプラットフォームで利用されると、それに応じたロイヤリティを開発パートナー様が得られるしくみです。
また、クライアントを持つシステム販社やインテグレータの方々に参画頂くことが、それにもまして重要だと考えています。というのも、私達は実際にクライアント様のニーズを聞いて、必要な技術をモジュール化して機能を増やしてきました。この考え方は今後も変わりません。私達のプラットフォームを進化させる一番の方法はユースケースや導入事例を増やすことと考え、一緒にユースケースを増やして頂ける販売パートナー様をまず募集したいと考えています。
プラットフォームや事例を紹介するイベントを開催
ユニキャストは、UnicastRoboticsプラットフォームを発表し、コミュニケーションロボットによるビジネスの普及を推進するイベント「ユニキャストロボティクス パートナーサミット 2019」を7月26日(金)に浜松町で開催する。参加は無料で、誰でも参加することができる。
三ツ堀氏
今まで当社が導入してきた事例やロボット活用例を紹介したり、UnicastRoboticsプラットフォームの紹介、人とロボットの共創する未来を実現するためには何が必要か等を皆様と一緒に考えるイベントにしたいと思っています。このコンセプトにご共感頂ける方、ロボットをビジネスに活用しようと検討されている方、ビジネスを提案したいと考えている方、システムや要素技術を持っていてロイヤリティ・ビジネスに繋げたい方など、どなたでもご参加ください。どんなご質問にもお応え致します。
桐林氏
イベントでは「The Looking Glass」を使ったデモも展示する予定です。The Looking Glassはブルックリンと香港にオフィスを持つベンチャー企業で、ホログラムディスプレイを開発しています。VRやAR用のヘッドセットは必要ありません。
私達のプラットフォームでは、ユーザーインタフェース機器のひとつ、ロボットの代わりとしてこの技術にも対応したいと思って研究中です。次世代のデバイスとしての可能性を感じていますので、イベントにはこのデモもぜひ見に来てください。
「The Looking Glass」はまるでホログラムのように3Dキャラクターが動くだけでなく、リープモーションや任天堂のジョイコンを使い、ユーザーの操作に反応するインタラクティブ性も実現している。今後、このような技術に対応すべく、パートナーサミットでは「The Looking Glass」をプラットフォーム上で動かすデモも予定している。すごく面白い技術で、一見の価値がある。
■「The Looking Glass」デモ(テスト)
ユニキャストロボティクス パートナーサミット 2019
日時 | 2019年7月26日(金) 14時より |
---|---|
場所 | WTCコンファレンスセンター(東京 浜松町) |
主な内容 | 基調講演 導入事例(導入企業による事例紹介) パネルディスカッション パートナーシッププログラム 懇親会 |
特設ページ | https://www.unicast.ne.jp/events/partner-summit-2019 |