セントラル警備保障の警備ロボットに小型のAIコンピュータ「Jetson AGX Xavier」を採用 高精度なビジョン活用

セントラル警備保障は2019年12月に、独特なデザインの警備ロボットを発表している。今後、警備員の労働力不足への対応と、警備品質の向上を目指すには警備ロボットの活用が不可欠になると考え、正確な自律移動性能と異常スクリーニング機能を実装した警備ロボットの開発を進めてきた。


警備ロボットに求められる機能は、警備の本質でもある(1)被害の未然防止、(2)被害の拡大防止をいかに実現するかということ。同社は近年、画像解析技術をはじめとする技術の発展により、ロボットは警備員の補完として大きく期待される、としている。
そして、その「眼」(ビジョン)には「Jetson AGX Xavier」が採用されていることをNVIDIAのブログが伝えた。

■主な機能
1.顔認証機能(ホワイトリスト検知、ブラックリスト検知)
2.物体認識(白杖検知、刃物検知など)
3.高温物体検知
4.全方向カメラによる画像録画機能
5.遠隔威嚇機能(サイレン威嚇、フラッシュライト威嚇)

■想定されるユースケース
1.駅・空港などの公共的空間における巡回警備
2.オフィスビルでの立哨警備
3.商業施設での巡回警備
4.その他、巡回や立哨業務を必要とされる施設

ユースケースの例(鉄道の警備)
構内で刃物を持った不審者をロボットが検知

異常事態と場所を駅員や警備員のスマホにアラート通知


沿革から指示しつつ、現場に駆け付け




Jetson AGX Xavierが担う自律移動型警備ロボットの「眼」

この自律移動型警備ロボットには8台の高性能カメラが搭載されている。そのうちの1台のカメラと超小型のAIコンピュータボード「Jetson AGX Xavier」が不審者や刃物などの危険物を検知するための゛物体認識」を行っている。この物体認識にはCNN (Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク) ベースのディープニューラルネットワークが採用されている。学習済みモデルとして実装されたAI推論をJetson AGX Xavierの画像解析を合わせることで、不審者や危険物を検知するという。検知されると防災センターや近隣に配属された警備員がもつスマートフォンやタブレットといった端末にアラートを通知すると共に、必要に応じてサイレンやフラッシュライトの点灯によって不審者に対する威嚇を実施する。また、不審者や危険物等の検知に加え、視覚障害者の方などが携行する白杖も検知し、警備現場でサポートを必要としている方々をいち早く見つけ、近くの担当者へ通知することもできる。

Jetson AGX Xavier。100 x 87mm というコンパクトなサイズ

人々が多く行き交う実環境では、不審者やさまざまな危険物等の物体認識を行うためには高性能な演算能力が必要だ。さらに、高性能な演算にはバッテリー消費量が大きいことも課題となっている。バッテリー駆動の自律動作ロボットに実装できるコンピューターの消費電力とフォームファクタには厳しい制限が課せられることになる。セントラル警備保障の開発チームはCPUやFPGAを含む多くのコンピューティング・プラットフォームを評価、検討した結果、この自律移動型警備ロボットの物体認識に最適なプラットフォームとしてJetson AGX Xavierを選択したとしている。NVIDIAは「AIスーパーコンピュータ並みの演算能力を誇る組込み向けSoM (System On Module)であるJetson AGX Xavierは自律移動型警備ロボットの「眼」を実現するうえでまさに唯一無二のコンピューティングプラットフォームと言ええる」と解説している。


NVIDIAのエンドツーエンド プラットフォームでAIの精度を向上

セントラル警備保障は長年の経験と実績によって蓄積してきた知見に基づいて自律移動型警備ロボットの学習データセットを独自に作成した。データセットを充実させるため、必要に応じて現場の環境を再構築したスタジオでの撮影等も行い、より精度の高いモデルに仕上げるためのデータセットの作成も行ったという。収集したデータを用いてのCNNモデルの学習もNVIDIAのプラットフォームで行い、学習済みモデルは最適なかたちでJetson AGX Xavierにデプロイされる。

また、これから実環境での自律移動型警備ロボットのオペレーションがスタートすると、毎日のように遭遇する新しいシチュエーションに対応するために、新しいデータを用いた追加学習を定期的に行って、より汎用的かつ精度の高いモデルにアップデートしていかなければならない。そのためにセントラル警備保障はスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX Station」を活用して継続的なモデルの改善に取り組むという。このようなスムースなAIモデル開発のワークフローを実現できるのもCUDAをベースとする、NVIDIAの統一されたGPUアーキテクチャで実現されているエンドツーエンド ソリューションのアドバンテージ」とNVIDIAは語る。


AIのパワーを得たロボティクスの社会実装の加速

NVIDIAはブログで「近年、自動掃除ロボットや移動支援ロボットなど様々な自律動作ロボットの導入が進んでいますが、セントラル警備保障は「警備」という自らが長年専門としてきた分野にAIのパワーを得たロボティクスを活用し、将来的には自律移動型警備ロボットに人間以上の警備をさせることを目指しています。セントラル警備保障が選択したJetson AGX XavierをはじめとするNVIDIAのエンドツーエンドプラットフォームは、その目的を素早く効率的に実現するための最適なソリューションと言える」と結んでいる。
(NVIDIAのブログより引用)

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ロボスタ編集部

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