MiRの自律移動ロボットの頭脳を支えるGPU、NVIDIAのAIコンピュータボード「Jetson」と「Isaac」シミュレータ

NVIDIAは、MiR社の一部の自律移動型ロボットに「Jetson Xavier NX」が、スマートカメラに「Jetson Nano」が採用されている事例をブログで公表した。


MiRはAGVやUGVなど移動ロボットのメーカー

MiR社(ミア)はデンマークのオーデンセを拠点とする「Mobile Industrial Robots」社のこと。同社のロボットは、自動マッピング機能を備え、自律的に安全にナビゲートしながら走行することができる。なお、協働ロボットにおいては世界的にトップシェアを持つユニバーサルロボット(UR)社とは同じグループ(テラダイン)に属し、関係性が深い。日本ではカンタム・ウシカタ社が取り扱っている。

MiR社の移動ロボットたち

MiR社のロボットの中には、重量2,200ポンド(約1トン)ものパレットを運搬できる機種もある。同社の開発チームは現在、ロボットに搭載しているライダーや近接センサー、複数のカメラを「Jetson Xavier NX」(エグゼビア) GPUに連携させている。



MiRが「Xavier」を選択する理由

GPUはCPUを補佐するコンピュータの頭脳のひとつ(IC)で、AIの機械学習や推論にはなくてはならない技術のひとつとなっている。この「頭脳」がセンサーのデータを解析することで、ロボットは安全なエリアを動的にマッピング、必要に応じて速度を変更しながら、人間 やフォークリフト、その他の機器や障害物を避けて移動できるようになる。

NVIDIAによれば「これらのスマートロボットはNVIDIAのDeepStreamやTensorRTなどソフトウェアを使って、AWS(Amazon)クラウド上のNVIDIA製GPUで機械学習(トレーニング)したAIモデルをベースに、AI推論による判断を「Xavier NX」上で実行」しているという。
MiRが「Xavier」を選択した理由は、高性能かつ低消費電力、低価格であり、しかも用意されているソフトウェアが豊富だったからという。

MiRのElias Sorensen 氏は次のように述べている。

「当社は AI処理のコストと消費電力の低減を非常に重視していました。また、バッテリ駆動の小型ロボットを生産しているので、価格も大きなセールスポイントとなります」

同氏によれば、MiRはこれまでにFord、Honeywell、トヨタなどのユーザー企業に向けて3,000台以上のロボットを納入しているという。MiRの新しい自律モデルは、実働可能なプロトタイプ。同社の開発チームは最初のパイロットテストに向けた準備として、物体検出モデルをトレーニングしている最中だ。


リモート・ビジョンを支える Jetson Nano

「Jetson Nano」はGPUを搭載した、世界最小クラスのAIコンピュータボードのひとつ。
MiRは昨年11月から、自律移動ロボットに連携するAI製品として、「Jetson Nano GPU」を搭載したスタンドアロン型のスマートカメラの販売も開始した。「Jetson Nano」ベースのカメラは、毎秒15フレームの映像を処理して物体を検出する。同タイプのカメラやロボットとの相互ネットワークによって、ロボットのビジョンを強化し、その移動を支援する。


Jetson NanoベースのカメラもXavier搭載のロボットも、カメラの映像データはすべてローカルで処理し、移動に関する決定のみをネットワーク越しに送信するという。「こうした小型でありながらも強力なモジュールは大きなメリッ トです。なぜなら、当社のお客様の多くはプライバシーへの関心が非常に高いためです」とSorensen氏は述べている。

MiR は、顧客がロボットやフォークリフトのような物体の写真を見せるだけでカメラのトレーニングを行えるツールを開発した。カメラのカスタマイズを簡単に行えることも重視したポイントだとした。


Isaacシミュレーションによる AIトレーニング

MiRは自社のスマートロボットをカメラと同じように、顧客の現場で技術職以外のスタッフが簡単にトレーニングできるものにしたいと考えている。しかし、乗り越えるべき課題もある。自動運転のAIシステムの場合、公道上には決められた交通標識が置かれているが、工場や倉庫の場合は、フロアのレイアウト、標識、使われているパレットの種類などは各工場、各現場ごとに異なるからだ。

MiRは現在、シミュレーションを使ったトレーニングを支援する「NVIDIA Isaacプラットフォーム」を検討している。MiRのAIチームは、ユーザーがカスタマイズ可能な仮想の作業エリアにロボットを配置するシミュレーションツールの開発を目指している。シミュレーションが提供されれば、AIの専門家ではないユーザーであっても、スマートロボットを現行のスマートカメラと同じように自社でトレーニングできるようになるだろう、と推測できる

MiRは産業用ロボットのラインナップの AI対応に向けた準備を急ピッチで整えている。 NVIDIAのブログでは次のように述べられている。

自律マシン時代に向けた MiR の道のりはまだ始まったばかりです。同社の親会社である Teradyne は2月に協働ロボット(Co-bot)開発ハブの創設に向けて 3,600万ドルを投資すると発表しました。このハブは、MiRとその関連会社 Universal Robotics によるパートナーシップの一環としてオーデンセに設置される予定です。
ABI Research のマーケットウォッチャーは、2030年にはCo-bot市場が120億ドル規模にまで拡大する可能性があると予測しています。デンマークのアナリスト会社である Damvad によると、2018年にMiRと Universal Roboticsを含めたデンマーク企業は、この新興市場で9億9,50 万ドルを獲得しています。
今回ご紹介したような可能性を秘めた強力な構成要素が、NVIDIA をはじめとする企業から提供されていることで「ロボティクス業界は素晴らしい時期を迎えています」とMiRのSorensen氏は述べています。


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ロボスタ編集部
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