佐川の大規模物流センター「Xフロンティア」次世代型ECプラットフォームセンターの自動化とロボット導入 スマート物流の最前線

佐川グローバルロジスティクスは、次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」の5階部分「次世代型ECプラットフォームセンター」(約4600坪)の報道関係者向け内覧を実施した。ECプラットフォームセンターのしくみや自動運搬ロボットや自動梱包機などを活用した自動化への取り組み、スマート物流の最前線をレポートする。

稼働開始を目前に控えた巨大倉庫の内部。写真は商品を保管するラックが並ぶエリア。通路を移動しているのが自動搬送ロボット「EVE」。42台を導入した

自動化システムの調整や確認など、開業に伴う準備が行われていた

「次世代型ECプラットフォームセンター」では、自動化に伴って、4種類のロボットが導入される。自動搬送ロボットの「EVE」と「OTTO」、自動梱包機。更に「オートストア」の導入も予定されているが、新型コロナの影響でシステムの導入が遅延、今回の内覧では見ることができなかった(残念)。

自動搬送ロボット「EVE」。ラック(商品棚)ごと運ぶ機能がある。バッテリー残量が減ると自動で充電ステーションに戻ってくる。蓮田営業所の内覧で見たシステムと同様だ

自動搬送ロボット「OTTO」。SLAM技術で自律走行する(14台を導入)

発送する商品のサイズに合わせて輸送箱を作る自動梱包ロボット

今回の内覧には残念ながら導入が間に合わなかったオートストアの動画(6月に導入され、2021年1月の稼働を目指す)。

■動画 AutoStore ロボットストレージシステム日本語ver.


EC事業者が商品の保管と発送を委任できるサービス

「次世代型ECプラットフォームセンター」と「シェアリング・フルフィルメントサービス」とはそもそもどういうものか。
「シェアリング・フルフィルメントサービス」の主なクライアントはECショップを運営する企業やオンラインEC店舗で、小規模事業者でも契約できる。オンラインEC店舗を例にすると、EC店舗で販売する在庫商品はこのセンターにあらかじめ預けておき、EC店舗に注文が入ったらここに発送の指示を出すことで、商品の梱包から発送まですべて代行してくれるサービスだ。

商品点数や取引数が少なくても契約することができ、費用は発送した数で課金、初期にかかる費用や月額の負担もない。たとえ小さなEC店舗であっても、発送や物流の手間から解放され、販売活動に集中できるメリットをすぐに感じることができるだろう。(以下、EC店舗を例に話を進めよう)

■動画 Xフロンティア ECプラットホームセンター




「Xフロンティア」は次世代型大規模物流センター

まずは「Xフロンティア」全体に目を向けてみよう。Xフロンティアは佐川グループ数社が同居する次世代型大規模物流センターであり、大型拠点となっている。敷地面積73,261平方m、延床面積171,029平方mにも及ぶ、地上7階建ての巨大な建物だ。総投資額は約840億円。1階から低階層は佐川急便が運営する最大級の物流倉庫だ。

巨大な「Xフロンティア」。東西線「南砂町」から徒歩4分

今回公開された5階部分には、SGHグローバル・ジャパンが運営する国際物流拠点と、佐川グローバルロジスティクスが運営するロジスティクスセンターがある。保税管理を含め国際物流に詳しいSGHグローバル・ジャパンとロジスティクスセンターを集結させることで、国内外の物流をスムーズに行えるメリットが生まれる。
立地は南砂町で、東京港や羽田空港に近く、首都圏だけでなく、湾岸高速を使って横浜や千葉にも迅速にアクセスできるのが特徴だ。




「次世代型ECプラットフォームセンター」の流れと自動化の仕組み

「次世代型ECプラットフォームセンター」では、大きく分けてEC店舗から預かる商品の入荷、商品在庫の保管、注文品の準備、検品、梱包、伝票の貼付、が流れとして行われる。5階から発送した荷物は1階の佐川急便に自動で搬送され、トラックに積み込まれる。


EC店舗から預かる商品の入荷

EC店舗から預かる商品はこのスペースに到着するトラックから運び込まれる。ここは5階なのでスロープを使ってトラックは上がってくる。

左のシャッターが開き、商品を積んだトラックが搬入のために入ってくる


商品の登録と保管

トラックから降ろされた商品は、コンピュータに登録され、保管のためのラックに収容される。ラックの数は1,300本を超える。膨大な数のラックと商品をコードリーダーで紐づけする。自律走行型搬送ロボット「EVE」はラックの下に潜り込み、ラックごと持ち上げて所定の位置に運ぶしくみだ。このスペースは約1,300坪にも及ぶ。

搬入(入庫)処理を行うエリア。ここで入庫した商品をシステムに登録するとともに、システムが商品とラックを紐づけして、ラックの保管位置を設定する。

預かった商品を保管するエリア。ラックの数は1,300本を超え、スタッフが人力で商品を探すのは大変。ちなみにラックの色がブルーなのは佐川グループのこだわり

システムが指定したラックの保管位置に、自動搬送ロボットの「EVE」がラックごと運んで配置する。

「EVE」はラックの下に入って持ち上げ、ラックごと運ぶ。AIによって保管場所は出荷頻度の高さなどを考慮して最適化されていく

「EVE」は床のマーカーを読んで自分の位置を特定、最適なルートで自動搬送する。

床に貼ったコードを読んで「EVE」は自律移動する

その作業とシステム、ロボットが連携するしくみは以前にレポートした関連記事「佐川が「棚ごと運ぶ自動搬送ロボット」をEC物流倉庫に導入 システムの全容を報道陣に公開 SGL蓮田営業所」にて動画をまじえて詳しく解説している。


発送の準備(ピッキング)

EC店舗から発送指示がシステムに入ると、一連の発送作業に入る。まずは膨大な数の商品の中から発送する商品をピッキングする作業。システムは発送すべき商品が保管されている棚を「EVE」に指示し、スタッフがピッキング作業を行うステーションに運んでくる。コンピュータ画面の指示によって、担当者が棚から商品をピッキング、同梱する製品を同じコンテナ/オリコン(折りたたみコンテナ)に入れる。

前掲の写真に似ているが、こちらはピッキングのためのステーション。画面に表示されるシステムの指示に従って、EVEが運んできたラックの中から発送する商品をピックアップする

発送する商品をピックアップしてオリコンへ。同梱する商品がすべて揃ったらオリコンは次のセクションへと運ばれる

発送するオリコンは自律走行型搬送ロボット「OTTO」が運ぶ。「OTTO」は「LiDAR」等のセンサーを使ったSLAM技術によって経路を自律的に判断、障害物や人を検知して動的に回避しながら自律走行する。人が入って作業する共有スペースでも利用可能だ。


OTTOは自律的に移動ルートを計算して運ぶ。床にコードを貼る必要はない


ロボットによるピッキングの自動化は50%程度にあえて抑える

OTTOは下の写真の左にあるベルトコンベアにオリコンを運ぶ。
右の棚(ラック)はスタッフによって商品をピックアップするための保管スペース。同社は実は、ロボットによるピッキングの「全」自動化は最初から目指していない。ロボットを使ったピッキングを導入しても省人化率は50%程度に設定している。ロボットの自動化率を上げ過ぎると作業できるキャパシティが限られてしまい、振れ幅がなくなるからだ。繁忙期や非常事態に備えて、人による作業で対応する振れ幅を意図的に残した形だ。その意味で、小物やバラものが得意な「ロボットによる在庫管理・ピッキング」と、箱モノが得意な「人による在庫管理・ピッキング」に担当分けし、このエリアで統合することになる。




検品と梱包

検品を行うエリア。このあとの梱包は人の手による作業と、自動梱包機による作業に商品によって分かれる。オリコンに貼ってあるバーコードで最適な方に分類される。奥のデスクが人の手による検品・梱包作業を行うスペース。ラッピングが必要な場合もこのデスクで行われる。


すべてのデスクにカメラが設置され、作業が録画されている。「注文した製品が一部入っていなかった」など、クレームに対して確認できるしくみとして導入されている。

作業デスクにはカメラが設置されている

検品、梱包作業を撮影するカメラ

緩衝材

巨大な自動梱包ロボットがこの後に待機している。大きなダンボール紙が見えるが、発送する荷物のサイズに合わせて無駄のないサイズでダンボール紙を裁断して箱を作るしくみが実現されている。顧客にとって不必要に感じるほど大きな輸送箱で送られてくることを防ぎ、資源節約にもつながる。また、適正サイズの箱を使用することで、サイズによって変わってくる送料も適正になり、トラックの積載効率も上がる、という数々のメリットがある。

自動梱包機

梱包する商品の大きさに合わせてジャストサイズの輸送箱を作る。商品によってはピッタリな箱を作れば、緩衝材も節約することができる

なお、梱包時にチラシなどを同梱する指定も可能だという。

発送伝票も自動で印字、貼付される

時間指定やこわれもの等のシールも

この時点で輸送箱にロゴマークや文字を印刷することもできる。

印刷で使うインクボトルが見える(写真の中央)

これらのプロセスを経て、商品に合わせた輸送箱に包まれ、ロゴが印刷されたり伝票が貼られて出荷を待つ。この後はコンベアで1階の佐川急便のエリアに運ばれ、トラックへ積み込まれる

発送を待つ商品たち。一部ガムテープが使われているが、テストと調整中のため(画像は一部モザイク加工しています)

なお、同社は今後、「Xフロンティア」の内部や自動化のしくみを多くの人に知ってもらうため、館内見学会や見学コースを設けていく方針だという。



※今回の内覧は3密を防ぐため、報道関係1社ずつ分けて実施された。

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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