ドイツ政府が主導して推進しようとしている「インダストリー4.0」は、ネットワークを活用して顧客からのカスタマイズに応え、大量生産でありながらオーダーごとにカスタム対応を可能にする多品種生産に挑む「マスカスタマイゼーション」を次世代ファクトリー像として目指している。
カスタマイズの時代は既に始まっている
世界的に展開している自動車メーカー「BMWグループ」では、顧客のニーズに合わせ、平均で100通りものオプションを用意されているという。そのため、顧客が注文した自動車の99%がそれぞれ異なった仕様で納品される。4,500以上のサプライヤーサイトからは、23 万のユニークな部品番号が割り振られたものを含む、数百万の部品が工場に送られる。BMWグループの車両販売台数が過去10年間で倍増したこともあって、部品数もすさまじい勢いで増え続けている。
このきわめて複雑化した材料の流れを最適化するために現在、AIを活用した自律ロボットで生産プロセスを支援して、共通の生産ラインで高度にカスタマイズされた多様な車両を生産している。
工場のロジスティクスを再構築
BMWグループはカスタマイズされた自動車をより早く、より効率的に生産することを目指し、工場内のロジスティクスを改善するためにNVIDIAの新しいシミュレータ「Isaac」(アイザック)ロボティクスプラットフォームを採用したことを発表した。
BMWグループはNVIDIAのIsaacロボティクスプラットフォームを使って、材料を自律的に運搬するナビゲーション ロボットや部品を選定および整理するマニピュレーション ロボットなどのAIロボットを開発し、ロジスティクスのワークフローを改良しようとしている。開発が完了するとBMWグループの世界中の工場に展開されていく。
BMW Group のロジスティクス担当シニア バイスプレジデントであるユルゲン メイドル(Jürgen Maidl)氏は次のようにコメントしている。
NVIDIA DGX AIシステムとIsaacシミュレーション
このコラボレーションではNVIDIA DGX AIシステムとIsaacシミュレーションテクノロジによるロボットのトレーニングとテスト、NVIDIA Quadro レイトレーシング GPUで機械部品をレンダリングすることによるトレーニングの向上、ならびに高性能なNVIDIA JetsonおよびEGX エッジ コンピューターを活用したIsaac ソフトウェア開発キットで制作された、複数のAIを使ったロボットの新しいラインアップの作成に焦点が当てられる。
NVIDIAのIsaacSDKを使って開発されるロボットはいくつかのパワフルなディープニューラルネットワークを活用して、認識、セグメンテーション、姿勢評価および人間の姿勢評価を通じて、自身のいる環境の把握、物体の検知、自律的なナビゲーションおよび物体の移動を行う。これらのロボットはNVIDIA GPUを使って実際のデータと合成されたデータの両方でトレーニングされ、さまざまな照明およびオクルージョンの条件下で機械部品をレイトレーシングでレンダリングすることで、実際のデータを補完する。
その後、実際のデータと合成されたデータを使い、NVIDIA DGXシステムでディープニューラルネットワークのトレーニングが行われる。さらに、ロボットはIsaac シミュレーターでナビゲーションと操作の両方のテストが継続的に行われる。NVIDIAのOmniverseプラットフォームで動作するので、異なる場所にいるBMW Groupのさまざまな担当者全員が、シミュレートされた共同の環境で作業できるようになる。
NVIDIAの創業者/CEOであるジェンスン フアン(Jensen Huang)氏は、次のように述べている。
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