スマートねこトイレ「トレッタ」がペディグリーやカルカンのMars Petcareと提携 2020年秋から日本発ベンチャーが米国進出を狙う

スマートねこトイレ「toletta」(トレッタ)を手掛ける、ペットスタートアップの株式会社トレッタキャッツは、カルカンを始めとした大手ブランドを持つ「MARS Petcare」(マース ペットケア)と提携し、米国でパイロットプログラムを開始することを発表した。
2020年秋より始まるというこの取組は、MARS Petcareのイノベーション部門、「Kinship」(キンシップ)との提携により実現したもので、このプログラムを通じて、世界最大のペット市場である米国での事業展開を加速させるのだという。



スマートねこトイレ「toletta」とは

tolettaを一言で表現すると「AI顔認識を搭載し、体重、尿量を個別管理できるスマートトイレ」だろう。
猫の死因の上位を占め、多くの猫を苦しめる腎臓病や結石などを初期症状の段階からトイレが検出。飼い主だけでなく、獣医師にもデータを提供することで、リモートで体重や尿量をモニタリングしてもらうサービスまで提供することができるIoTプロダクトだ。

「北九州でIoTプロジェクト」をはじめ、多くのビジネスコンテストで受賞し、実際に発売した後も、日本のAmazonのねこトイレ部門でベストセラーを2回獲得しているということからも、多くの愛猫家が期待している製品だということがわかる。


ペットケア市場の規模と猫大国アメリカ

tolettaが主な市場としているペットケアについては馴染みがない読者も多いと思うので軽く紹介してみよう。
ペットケアに関する市場は様々な分野での技術進歩により10.5兆円以上の巨大なものに成長している。その中でもtolettaのようなテクノロジーを使った「Pet Tech」に関する市場は、年25%の成長率で、2025年には$20 Biliion(約2.2兆円)になることが予測されているのだという。
これは「ものいわぬペット相手だからこそテクノロジーの活躍する余地があるのでは」という期待に裏打ちされているのだろう。

そしてその中で猫に関して言うと最も巨大な市場を持つのがアメリカだ。
アメリカはIoTに関する投資の環境が良いだけでなく、9000万頭(日本の約9倍)の飼い猫が暮らしており、世界で最もねこが多い国だと言われているのだ。
この厳しい戦場で生き残るのは難しいとは思うが、その勝算をトレッタキャッツはどのように見出したのだろうか。


MARS Petcareとパイロットプロジェクトについて

そんなアメリカに、tolettaは日本のAmazonでベストセラーを2回獲得したという実績を引っさげて進出する。
進出に先んじて出展したアメリカの獣医関連の展示会Western Veterinary Conference 2020では、獣医師、看護師などを対象にしたアンケートで99.6%が「獣医師としてtolettaを推薦する』という回答をえるなど、手応えは十分だ。

獣医師としてtolettaを推薦しますか? の問いに、NOの投票はナシ。平均で2頭以上を飼育していることから、猫の顔認識AIで複数の猫から自然にデータを抽出できるtolettaには大きな需要が予想できるのだろう。

そして今回の取り組みの相手は様々なペット向けブランドをもつ巨人、MARS Petcareのイノベーション部門、Kinship。
1億ドルのベンチャーファンドを持つという資金力に加え、業界をリードするデータと分析能力、さらには親会社事業部門には「ペディグリー」「カルカン」「シーザー」「シーバ」などのブランドをもつというバックボーンの強さは魅力的だ。

この強力なパートナーとともに、今回まずはパイロットプログラムとして、米国の100人の飼い猫と猫にトレッタを提供しサービスを展開するのだという。
まずは、医療データとトレッタデータを組み合わせ、獣医学的観点でビッグデータ分析を実施していく。
猫に関する商品も多く持つMARS Petcareならではのコラボレーションや、データを生かした展開ができれば、勝算も期待できそうだ。



Hardware is Hard , but Exciting

トレッタキャッツというと、こちらのtweetで一躍話題になった苦労人的なスタートアップだ。


それだけに今回のプロジェクトを成功をおさめてくれれば、IoTはものづくり大国と言われた日本ならではのアセットをいかしたスタートアップの一つの勝ち筋として認められるための第一歩になるかもしれない。
こういったスタートアップが続けば、国内のIoTに関する投資環境がよくなってくることも期待できる。

後に続く国内のIoTスタートアップが勇気を持てるような結果を今回のアメリカ市場への挑戦で勝ち取ってくれることを期待したい。

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梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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