京急本社で警備/案内ロボットの実証実験 遠隔操作と自動運転で巡回と案内、検温も シークセンスの警備ロボとMiraのアバターロボ

8月12日、京浜急行電鉄(京急)は横浜の京急グループ本社ビルの警備・案内・メンテナンスの自動化を検証するため、警備用の自律移動型セキュリティロボット「SQ-2」とアバターロボット「ugo」による実証実験が行われていることを発表した。
また、報道関係者向けに実証実験の説明と、両ロボットのデモを公開した。

警備用の自律移動型セキュリティロボット「SQ-2」。消火器周辺のチェックと撮影を終えて周回コースの自律走行へ(京急グループ本社ビルにて)

アバターロボット「ugo」は来訪者の案内、立哨と巡回警備を担当する(京急グループ本社ビルにて)

実証実験の期間は8月3日から12日まで。SEQSENSE(シークセンス)とMira Robotics(ミラロボティクス)、京急サービスと京急ビルマネジメントの4社が連携して行っている。



京急とスタートアップが連携するオープンイノベーション

京急は、スタートアップとのオープンイノベーションにより新規事業の創出を目指す「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」(京急アクセラレータープログラム)を実施している。ベンチャー企業の支援で知られるサムライインキュベートと共同のプログラムで、今回は第3期を迎え、第3期は応募総数92社から10社のスタートアップ企業が選出されている。

人口減少と高齢化、顧客ニーズへの多様化、更にはMaaSなどによる交通の大変革に備えて、京急グループを大きな改革の時期を迎えている。課題は最先端のテクノロジーと連携して解決したい、としている

「移動のきっかけを生む」「移動を楽しく 快適に」「移動した先を 豊かに」に取り組むスタートアップ10社が採択された

今回のロボット導入実験の背景には、京急グループのビルメンテナンス部門企業における慢性的な人手不足という課題がある。また、新型コロナウイルス感染予防対策として、入場時の検温、清掃時の消毒作業など、ビルメンテナンスの通常業務に加えて、さらに煩雑な作業が増えてきていることを問題視。これらの課題を解決するために、ロボットの導入実験を急ぎ推進する考えだ。

「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」第3期は、 2019年12月より共創スタートアップ企業の募集を開始した。中長期的には、「京急沿線における新たな価値観のまちづくり」やスマートシティ構想に繋げることを目標としている。ロボットによる自動化、IoTやAIを活用したICT化に、行動力のあるスタートアップ企業と連携していく考えだ。





警備用の自律移動型セキュリティロボット「SQ-2」

SEQSENSE(シークセンス)の「SQ-2」は、全自動の立哨・巡回警備、遠隔通話による案内等の機能を備えたロボットだ。ロボスタ読者には三菱地所の実証実験でお馴染みかもしれない。ほかにも成田空港など、7社に既に導入、実用化されている。SQ-2を導入した結果、導入前と比較して17%の警備費用の削減を達成したユースケースもあるという。

デモに登場した自律移動型セキュリティロボット「SQ-2」。高さ129.5cm。秒速40cm(1.4km/h)程度で走行する

警備業界は既に深刻な人手不足に突入している

最大の特徴はボディ上部で回るLiDARだ。2Dモデルを立体的に合成して3Dモデルを作り、高精度の3Dマップと自己位置推定で自律走行する。

「SQ-2」の特徴。京急グループ本社の一階には博物館があり、子ども達がビル内ではしゃぐ姿も。「SQ-2」は周囲の状況を察知して、人や障害物にぶつからないように自律移動できる

3Dマップを生成するLiDAR。その下に「Touch to Call」のマークが見えるが、これは災害センターのスタッフと来訪者が会話するための呼び出しセンサーになっている

また、3方向に搭載された魚眼レンズで常時360度の周囲の画像を撮影できる。また、人間の目では難しい火災等のリスクとなる異常熱源を感知する機能もある。

今回の実証実験用に「KEIKYU」のロゴ装飾がボディの側面に施されている「SQ-2」。ステーションで充電中(フル充電で約6時間稼働)。後ろが京急グループ本社ビルの受付

作成した3Dマップと超音波センサーと組み合わせることで超近距離にある障害物も感知し衝突を回避できる。遠隔管理者は災害センターからロボットを操作。画面のマップ上で目的地や周回コースを指定するだけで、「SQ-2」は人やモノを避けて目的地や周回ポイントに向けて自走ルートを計算して移動する。目的地や周回ポイントで撮影し、災害センターの管理者は各写真をチェックして、消火器などチェックする次項の確認を行ったり、出入り口や非常口の周囲に不審物や放置ベビーカーなどの有無をチェックすることができる。

「SQ-2」は巡回ポイントの写真を撮影してアップする。管理スタッフは画像をチェックして異常がないか確認する

■動画 SQ-2 巡回警備デモンストレーション

今回のデモは、自律走行による巡回のほか、来訪者が「SQ-2」のセンサーにタッチして災害センターのスタッフと会話する機能も公開された。

SEQSENSE株式会社 CEO 中村壮一郎氏

■動画 SQ-2を通じて、来訪者がスタッフと会話するデモ


アバターロボット「ugo」による警備・案内

Mira Robotics(ミラロボティクス)のアバターロボット「ugo」(ユーゴ)は、遠隔操縦による移動、来訪者対応(検温・音声案内)、巡回警備、立哨警備などをデモで公開した。


「ugo」の最大の特徴は人型であること。LEDを用いた顔には表情がある。2本のロボットアームと、身長の高さを調整により変更できることから、遠隔操縦で様々な業務を行うことができる。アームを駆使してエレベーターを使った階の移動もできる。

アバターロボット「ugo」は汎用性の高いロボットアームを搭載。トイレ掃除用のモップや消毒ツール等、用途に合わせて持たせることができる

今回のデモでは検温計を持って、来訪者を検温チェックした

従来からある単純な遠隔操作ロボットとして使用しながら、AIを活用してその作業を記憶することができる。最初は作業担当者が遠隔操作をすることで「ugo」は手順や技術を習得し、完全自動ロボットとしての活用につなげる次世代型アバターロボットとしての性質も併せ持つ。

Mira Robotics株式会社 代表取締役CEO 松井健氏

コロナ禍、withコロナ時代に向けて特に、ロボットが期待されていることをこの実証実験で検証する

京急のオフィスビルの実証実験結果をもとに、対応範囲を商業施設、ホテル、駅などに拡大していきたい考え

今回の実証実験では、巡回・立哨警備、遠隔スタッフとの会話による案内等が行われる。デモではさらに「ugo」による検温作業が公開された。

今回の実証実験向けにカラーディスプレイを装備。各種案内やコマーシャル映像などを流すことができる。多目的ロボットを目指す上では、サイネージ機能も重要な要素となる

■動画 案内、検温、巡回・立哨警備をこなすアバターAIロボット「ugo」

関連サイト
KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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