【日本初】地上既存路線を走る電車にも自動運転の実現へ JR九州が自動列車運転装置の運用を開始

JR九州は、地上の既存路線を走る電車にも自動運転を実現するために、「ATS-DK」をベースとした自動列車運転装置の開発に取り組む。その最初の事例として、12月24日より、香椎線(西戸崎駅~香椎駅間)で自動列車運転装置を用いた自動運転を開始した。
当面の間は運転士が乗務して安全の確保を行いつつ、実際の営業列車で実証運転を行う。将来的には、運転士以外の係員が前頭に乗務する自動運転(GoA2.5)の実現を目指すとしている。この運用では3つの日本初が実施される。


「ATS-DK」とは、Automatic Train Stop-Digital Kyushuの略。従来の自動列車停止装置に、停止(赤)信号の冒進を防ぐ機能を強化し、速度超過の防止機能を付加した装置。また、「GoA」とはGrade of Automationの略で、2.5は「係員付きドライバーレス運転の形態」をさす。


JR九州では、少子高齢化や人口減少が進む中で鉄道ネットワークを長期的に維持していくために、安全性を維持・向上しながら効率化を推進している。また、将来にわたる労働人口減少の中で必要な人材を確保するために、作業の自動化や機械化も推進する。その一環として、中期経営計画 2019-2021の「技術革新をとらえた事業の進化」において、電車の自動運転の実現を掲げている。

実証実験の内容は「自動列車運転装置による車両制御の安定性、運転取扱いの変更点における検証」「運転士の心理的影響の把握」。JR九州は運転士が乗務した状態でATS-DKをベースとした自動列車運転装置を用いた営業運転を行うことで、在来線における自動運転列車の運行に関する知見を蓄積するとしている。




国内初の取り組み

今回の実証実験では、国内初となる3つの試みが行われる。

1. ATS区間初
これまで国内の鉄道の自動運転は、ATCを整備した路線でのみ実用化されてきた。しかし、JR在来線のほぼ全て(98%)、私鉄と併せても9割(91%)の区間がATSの整備であり、ATC化には莫大な設備投資が必要となるという。運転士が乗務する形態ではあるものの、ATS区間での自動運転は国内初の試みとなる。

自動運転のために地上子を増設

2.踏切がある区間初
ホームドアがない区間、地上区間での自動運転はこれまでに例はあるものの、踏切がある区間での自動運転は国内で初めの試みとなる。
※実証運転では運転士(将来的にはGoA2.5係員)が前頭に乗務して、前方の異常や危険を発見すれば緊急停止操作を行う。

【専用軌道】九州新幹線の写真(踏切なし、隔壁有り

【地上既存路線】香椎線の写真(踏切有、隔壁無し)

3.JR区間初
これまでもJR保有車両が乗入れ先の線区にATOが整備されているため、ATOを搭載した例はあるものの、JR線にATOが整備されるのは国内で初めて。
(筑肥線運行中の303系、305系は福岡市営地下鉄乗り入れのため、ATOを搭載。ただし、JR筑肥線はATS整備区間(JR九州の在来線にATC区間はない))





今後の目標について

JR九州は「2021年度末までに運転士が乗務した状態でATS-DKをベースとした自動列車運転装置を用いた営業運転の区間拡大(香椎~宇美間)・対象列車拡大を目指す」としている。

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ロボスタ編集部

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