現実の都市空間をサイバー空間に再現する「Project PLATEAU」 東京都23区の3D都市モデルのオープンデータを公開

国土交通省が主導する「Project PLATEAU」(プロジェクト プラトー)は、まちづくりのデジタルトランスフォーメーション(UDX)を推進するための事業。日本全国の3D都市モデルを整備し、オープンデータとして公開することで、誰もが自由に都市のデータを引き出すことが可能となり、防災、まちづくり、AR・VRなど様々な場面で活用できるようになる。

「Project PLATEAU」(プロジェクト プラトー)は、2020年度の事業として全国56都市の3D都市モデルの整備を完了し、開発したユースケース44件を公開したことを発表した。整備したデータは一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会が運用する「G空間情報センター」にて順次公開され、オープンデータとして誰もが自由に利用できるようになる。


仮想世界に都市空間を再現

3D都市モデルとは実世界(フィジカル空間)の都市を仮想的な世界(サイバー空間)に再現した三次元の都市空間情報プラットフォーム。二次元の地図に建物・地形の高さや建物の形状などを掛け合わせて作成した三次元の地図に、建築物の名称や用途、建設年などの属性情報を加え、都市空間そのものをデジタル上で再現した。これまで各省庁や地方自治体に分散していた建物の情報や人口流動、環境やエネルギーのデータなどを三次元化した地形データと統合することで、都市計画立案の高度化や、都市活動のシミュレーション、分析等が可能となる。


Project PLATEAUで整備する3D都市モデルはセマンティクス=意味情報を持つモデル。多くの人がこれまで目にしてきた3D地図は都市を形として再現した、現実と同じように「見える」地図だった。PLATEAUでは建物や街路などのオブジェクトを定義し、これに名称や用途などの情報を記述できるデータフォーマット「City GML」を用いており、見た目だけではなく、50階建てのオフィスビルは50階建てのオフィスビルとして、歩行者専用道路は歩行者専用道路としてデータが再現される。つまり、サイバー空間にもう一つの都市を構築することが可能。



26の実証実験結果を公式WEBサイトに公開

Project PLATEAUで整備した3D都市モデルはデータの集合体であり、データはソリューションとして活用してこそ価値を持つ。そこでProject PLATEAUは地方公共団体、民間企業、大学・研究機関とパートナリングを行い、実際に3D都市モデルがどのように社会にインパクトをもたらすものなのか、ユースケース開発の実証実験を行ってきた。3D都市モデルを活用した社会的課題の解決として「都市活動モニタリング」、「防災」、「まちづくり」の3つのカテゴリと、3D都市モデルを活用した民間市場の創出として「新サービス」のカテゴリを設定し、本日26の実証実験結果を公式WEBサイトに公開した。


スマートフォンなどが発する電波(Wi-Fiと4G/LTE)を活用した混雑状況モニタリング

九州工業大学 大学院工学研究院/IoTシステム基盤研究センター


異なる2種類の電波(Wi-Fi、4G/LTE)を用いて測定エリアの人数を推定し、推定結果を比較分析。電波を活用した人流モニタリング技術の検証を行い、3D都市モデルと組み合わせた都市活動モニタリング手法の確立を目指した。


屋内外をシームレスに繋ぐ避難訓練シミュレーション

森ビル株式会社


虎ノ門ヒルズビジネスタワーの緻密な屋内モデルを制作し、3D都市モデルと統合。屋内と屋外をシームレスに繋いだバーチャル空間を構築した。新型コロナウイルスの影響で大人数が対面で集まる大規模避難訓練の実施が困難になる中、バーチャル空間で複合施設における複数の避難計画のシミュレーションや、徒歩出退社訓練用のVRの構築を行った。


都市計画基礎調査情報を活用した都市構造の可視化

株式会社日立製作所、パナソニック株式会社、アジア航測株式会社


愛知県名古屋市において、都市計画基礎調査情報を用いて過去からの都市構造の変遷を可視化。平成3年~平成29年の「建物利用現況」と「土地利用現況」の情報を3D都市モデルに統合。PLATEAU VIEW上で属性情報に応じて塗り分けた建物・土地の変遷を、時系列で見られるようにした。


バーチャル都市空間における「まちあるき・購買体験」

株式会社三越伊勢丹ホールディングス


新宿三丁目エリアを中心とする「バーチャル新宿」を構築し、仮想空間における「まちあるき」体験を提供。コロナ禍におけるエリア価値向上や立地店舗のEC活性化を目指した。


「Project PLATEAU」今後の展開

Project PLATEAUは2021年度からVer 2.0として更なる取組の深化を図っていく。そのメインスコープは、3D都市モデルの整備・更新・活用のエコシステムの構築。3D都市モデルを全国に展開し、スマートシティをはじめとするまちづくりのDX基盤としての役割を果たしていくため、簡易・効率的な整備・更新手法の開発、自動運転やロボット運送等のユースケース開発の深化、街路空間(歩道・車道)や街路樹・標識など緻密なスケールでのデータ整備手法の確立等に取組んでいく。

また、官民の知見を結集して3D都市モデルの発展を図るため、スマートシティ官民連携プラットフォームの下に地方公共団体や民間企業、研究者等で構成する「3D都市モデルの整備・活用促進に関する検討分科会」を設置し、2021年3月24日に第1回を開催した。今後、幅広い分野と共に検討を重ねていく予定。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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