超軽量小型の月面探査車「YAOKI」の最先端素材「CFRP」とは 宇宙開発ベンチャーのダイモンと三菱ケミカルが契約締結

2021年民間企業で世界初の月面探査をするロボット・宇宙開発ベンチャーの株式会社ダイモンは、三菱ケミカル株式会社とパートナーシップ契約を締結したことを2021年4月14日に発表した。

主な内容は、世界最小最軽量(自社調査:月面探査車を開発製造する主要8社のHP調査と、米国Astrobotic Technology社とIntuitive Machines社の責任者からのコメントより)の月面探査車「YAOKI」を地球から月に運搬する重要な役割を果たすポッド(ケース)への三菱ケミカル社から最先端CFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)素材提供をはじめとする技術支援となる。

(冒頭の画像:Astrobotic Technology社 月面着陸船「ペレグリン(Peregrine)」 )




技術開発で注目されているCFRP

強化材に炭素繊維を用いた繊維強化プラスチック、CSRP(carbon fiber reinforced plastic)。宇宙分野の機器は、「軽量」「高強度」「高剛性」「耐熱環境」「耐放射線」を実現するために、多くの先進的な技術開発が行われている。その中で、注目されている材料がCFRPだ。
月面輸送コストが1kg当たり1億円と言われ、打上重量を軽減することが直接的なコストダウンに大きく影響する。同時に、高い剛性(=打上時の振動に耐える力)、高強度(=打上時の振動負荷に耐える力)、耐熱環境(=宇宙空間の-170〜+150℃に耐え、熱変形を抑える力)、耐放射線(宇宙空間における高放射性に耐える力)などが求められる。これまで宇宙部品は、「強度と剛性」「加工のしやすさ」および「真空におけるガス発生がない」ことより、アルミ素材の部品が多く使われてきた。しかし、現在は、アルミ素材以上に「軽量」で「強度と剛性」があり「加工がしやすく」「真空におけるガスが発生しない」CFRPの開発が進んでいる。

三菱ケミカル社は、その高い技術力で最先端CFRPを開発し、これまで多くの宇宙機器に提供してきた実績があり、中間材料から成形加工品に至る一貫した世界屈指のプロダクトチェーンを実現。今回提供される三菱ケミカル社製CFRPは、過酷な月面環境を走行する月面探査ロボットYAOKIにとって重要な技術だ。また、YOAKIでの月面での稼働実績を踏まえて、NASA「アルテミス」計画が目指す月面利用ステージとなる月面建機や月面基地等に、三菱ケミカル社製CFRPがエントリーすることにもなる。

▼ 三菱ケミカル株式会社のパートナーシップ内容

契約期間 3年
契約内容 「Project YAOKI」において、地球から月までYAOKIを運ぶポッドへの三菱ケミカル社製CFRP材料の提供、及び、 YAOKI本体への熱可塑性樹脂材料の提供ほか

「YAOKI」運搬ポッド ※ポッドの製造は、パートナー企業である株式会社UCHIDAが実施

2020年版月面探査車「YAOKI」

株式会社ダイモン 代表取締役社長&ロボットクリエーター 中島 紳一郎 氏

「Project YAOKI」は、現在、Astrobotic Technology社のペイロード技術書類認証を取得し、鍵となる最終の様々な試験を行っている段階です。今回、世界トップクラスの三菱ケミカル株式会社と、最先端のCFRP材料や熱可塑性樹脂材料のご提供などでパートナーシップ契約を締結できた事は、軽量小型化を極める「YAOKI」にとって心強い味方ができたと感謝しています。

中島紳一郎氏:大学卒業後、Boschなどで自動車の駆動開発に20年従事。Audi, TOYOTA 等で標準採用されている4WD駆動機構を発明。創業以来、月面探査車の開発を推進。ロボットが生命化して宇宙に広がる未来を目指している。

三菱ケミカル株式会社 アドバンストマテリアルズセクター長 奥野 雅哉 氏

ダイモンが開発したYAOKIは、横転せずに走り続けることができる日本発の非常にユニークな月面探査車であり、そのYAOKIに三菱ケミカル社製のCFRP材料及び熱可塑性樹脂材料を活用する機会を得たことは、当社としても非常にエキサイティングな出来事です。今後も、先端材料の開発、提供を通じ、大きな飛躍が期待される宇宙開発に貢献していきたいと考えています。




「Project YAOKI」の概要

同社代表取締役社長でロボットクリエーターの中島氏が、世界最小最軽量の月面探査車「YAOKI」(転んでも立ち上がる機能と、何度でも挑戦する意志の「七転び八起き」に由来)を、電力やインフラの点検ロボットの開発。同事業と並行して開発。2019年4月に主要特許を出願し、現在の原型となる月面探査車「YAOKI」が完成した。
伊豆大島で撮影した映像を、YouTubeにあげると同時に、米国Astrobotic Technology, Intuitive Machines, NASAなどの主要な月面開発事業社の代表メールに送信。これを機に、 米国Astrobotic Technology社と、ペイロード契約を締結。2021年1月より、技術書類認証に基づくYAOKIの製作が開始した。


同社と月面探査車「YAOKI」

「YAOKI」は、二輪方式を採用し、特許技術を駆使する事で、超軽量小型化を可能にしました。従来の小型探査車に対し、重量で10分の1(現在498g)、大きさで50分の1(15×15x10cm)を達成。これは、Astrobotic Technology社とのペイロード契約にも大きく関係しており、1kgあたり1億円かかるといわれる月への輸送費を大幅に節減することを可能にした。
「YAOKI」は、現在、各国各社が開発するキューブ型の月面探査車のパイオニアとして、「YAOKI System」(2020年11月26日JAXA主催「重力天体着陸探査シンポジウム」で、英国・宇宙ベンチャーSpacebit社のChuck Lauer氏(CBDO)が発言)と呼ばれている。

プロジェクト名 Project YAOKI
打上げ日時 2021年秋
打上げ場所 アメリカ合衆国フロリダ州ケープカナベラル空軍基地
ミッション 月面「Lacus Mortis(古代地層)」の探査(人類初着陸探査)
月面活動日時 打上げから30日後、月面で6時間の活動を想定
月への運搬 ULA社のロケット「VULCAN(バルカン)」、Astrobotic Technology社の月面着陸船「ペレグリン(Peregrine)」 、ダイモン社の月面探査車「YAOKI」
備考 同プロジェクトはNASA(米国航空宇宙局)の「アルテミス」計画の一部をなす商業月運送サービス(Commercial Lunar Payload Services)プログラムに基づいている。



■【動画】月面探査車 YAOKI 「誕生編」 / Lunar rover YAOKI “The Birth”

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ロボスタ編集部
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