【生成AI×フィールド観察】有害鳥獣と呼ばれる野生動物たちによる『いのしか新聞』が誕生した理由 有害鳥獣の捕獲業務DX

AIやロボティクス関連の開発をおこなうForex Robotics株式会社は、生成AIとフィールド観察を掛け合わせて、野生動物と人との接点をやわらかく伝えるオウンドメディア『いのしか新聞』を2025年7月4日にnoteで創刊したことを7月7日に発表した。

なお同社は、市町などの地方自治体向けに農作物に被害を出すシカ、イノシシなどの有害鳥獣の捕獲確認事務のデジタル化サービス「有害獣捕獲申請管理システム いのしかレコード」をリリース。全国の有害鳥獣の捕獲業務のDXに貢献している。


野生動物目線の有害鳥獣ニュース「いのしか新聞」

『いのしか新聞』は、有害鳥獣と位置づけられる野生動物たちの「目線」から地域の気配を伝えるニュースメディア。
自然環境の中で生きる野生動物たちが「記者」として編集部を構成し、彼らの視点と語りによって、ニンゲン社会の動きや環境との関係性を読み解くという世界観に基づいて運営されるという。

「いのしか新聞」の世界観


それぞれ異なる地域と生態を持つ動物たちが特派員

特派員たちはそれぞれ異なる地域と生態を持つという。
たとえば、西日本水辺支局のヌートリア特派員は、水質の変化に敏感な嗅覚を持ち、北海道・東北の山岳地帯のヒグマ特派員は尾根の気配から季節の乱れを読み取る。都市潜入課のハクビシン特派員は騒音と街路樹の質感に注目しながら夜の観察を行う。

彼らの語りは動物特有の感覚を活かしつつも、読者に寄り添う形で語られており、単なる「かわいらしい視点」にとどまらない構造となっている。
このメディアにおいて、ニンゲン社会との接点を「ヒトカス記者タカハシ」という謎の委託記者を通じておこなわれる。編集部には所属せず、取材対象が「ニンゲン」の場合のみ委託される野生動物とニンゲンの橋渡し的な位置づけだ。


生成AIによる要約とキャラ付けされた記者の技術構成

運営技術には、PythonによるRSSフィード解析/生成AIによる記事の草稿化/Markdown出力を活用した自動編集フローで組み合わされており、メディアプラットフォーム「note」に投稿される。従来の物語的アプローチとデータ的精度を融合した設計が特徴。

なお、技術構成は下図の通り。

技術構成および配信の流れ


「有害獣捕獲情報システム いのしかレコード」の概要

「有害獣捕獲情報システム いのしかレコード」はスマートフォンアプリとクラウドの管理システムで構成されている。


スマートフォンアプリには従事者向けに、捕獲申請機能(写真撮影含む)、出猟時の目撃記録機能、わな猟の設置・撤去記録機能がある。
有害獣捕獲作業には高齢者も多いため、アプリのUIは高齢者用スマートフォン向けにデザインされていて、わかりやすいシンプルさが特徴。
管理システムは、市町の担当者向けに従事者IDの管理機能、捕獲申請の受付確定・拒否などのステータス管理機能、市町から県への予算申請機能、捕獲情報などの集計機能などがある。


デジタル化により、従事者の申請が30分から5分程度に現場で申請できるようになったという。また市町でも県への予算申請までペーパレスで業務を行うことにより、再入力の省力化、および紙資源のコスト削減に寄与するとしている。

【いのしかレコード サービス料金】
サービス内容は以下の通り。
◆年間料金 132,000円/年(税込)~
 ・クラウド初期費用、年間データ保管料、クラウド使用料含む。
 ・捕獲申請処理50件まで、追加50件につき44,000円(税込)を追加。
 ※従事者用スマートフォンアプリ(Android版、iPhone版)の利用料は無料。


「いのしか新聞」誕生の理由と経緯

ヒトカス記者タカハシ氏はnoteで、「いのしか新聞」誕生の理由を次のように語っている。

ヒトカス記者タカハシ

もともと日々上がってくる野生動物のニュースを要約して知りたいという個人的なニーズと「いのしかレコード」という有害鳥獣捕獲の事務手続きDXサービスの啓蒙も含めたオウンドメディアを作りたいというものでした。
ただ要約するだけではつまらないので、野生動物の記者が動物目線で記事を紹介するというスタイルにしました。
実際やるにあたって、コンテンツ制作はコンピュータで勝手にやってほしかったので、できるだけ生成AIに仕事を振りました(笑)。
Google GEMINIなどにベースのアイディアだけ伝え、キャラクタ設定、イラスト作成、構成などのアイディア出し用の生成AIと、pythonから呼び出せる生成AIにはニュースの要約、キャラクタ付けのコメント出しを担当させて、極力 人が介在しない形をとり、現在はnoteへの投稿以外は自動でできるようになりました。


今後の展望

同社は「今後の展望として、動物記者による「いのしかレコード」の紹介記事、鳥獣捕獲事業関係者への取材、捕獲罠メーカーとの連携記事、関係省庁との情報連携記事なども想定しており、「動物から見た地域ニュース」を基軸に、関係者との対話のきっかけを育んでいきたいと考えています。どうぞ生成AIによる「いのしか新聞」の世界観をお楽しみください。」とコメントしている。

【『いのしか新聞』記事ページ(note)】
URL:
https://note.com/easy_ivy5618/all
発行日:2025年7月4日(金)から基本1日1回配信予定
発行形態:オウンドメディア/noteにて公開
編集部構成:動物記者による編集チーム+ヒト枠委託記者
技術背景:Python × AI × 自動化 × 物語設計(構成図あり)

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ロボスタ編集部

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