触った時の「つるつる」「ざらざら」を数値化する試験機 カトーテックが慶應義塾大学と5年をかけて実現 2021年秋から販売

風合い試験機メーカーのカトーテック株式会社は人の感覚神経の特性からデータを解析し、人とほぼ同じ感覚を数値化することに成功した試験機「QUANTITEXTURE」(クオンティテクスチャー)を2021年秋から販売することを発表した。同試験機ではこれまで定量化が難しかった樹脂素材の“心地よさ・触感”の測定が可能。なお、試験機はアクチュエータ工学やソフトロボティクスを専門とする慶應義塾大学理工学部 竹村研治郎教授との共同研究により実現した。


「なめらかさ」「すべりやすさ」「ざらつき」を測定

触感は製品の特徴の一つとして製品評価に大きく関係しているが、視覚や聴覚に比べて、自ら押したり動かしたりする能動的な動作を伴い、また人によって感じる感覚は嗜好的であるため、定量化が難しい。

さわり心地計測の試験機と言えば、衣料品のほか化粧品や不織布など、さまざまな分野でKES(ケス)が利用されているが、その中でも特に樹脂素材については「材質が硬く物性値での判断が難しい」との声が多くあった。このような声を受けて、物体の物性値だけでの判断ではなく、触感評価に深く関係する“人の感性情報”からデータを抽出し数値化する手法を開発。これまで触感評価が困難であった樹脂素材(自動車内装材や住宅内装材、スマートフォンのカバーなど)の触感測定も可能となった。


「QUANTITEXTURE」の特徴


1.ものに触った時の「なめらかさ」「すべりやすさ」「ざらつき」を測定

2.指の4つの機械受容器マイスナー小体、メルケル触盤、パチニ小体、ルフィニ終末の特性から触感を数値化

3.これまではものの表面の粗さや摩擦係数などで触感を数値化してきたが、人の触感や知覚のメカニズムを基に解析しているため、より人間の感覚に近い触感のデータを取得可能


私たちが無意識にさわり心地を判断する要因とは?

これまでの研究により、人間が感じる触感は触察時の「振動情報」を知覚し、触り心地を判断していることが分かっている。「QUANTITEXTURE」(クオンティテクスチャー)では、この振動データを解析し、人間が感じる触感とほぼ同じ数値を算出している。

例えば、机の上に1枚の紙を置き、紙のエッジに指先をそっと置くとエッジを感じることができるが、そのまま指を静置するとどこがエッジなのか感じられなくなる。ここで、紙の端をまたぐように指でなぞってみると、再びエッジを感じる。指の機械受容器が数10 umの紙の厚さという「形状」ではなく、触察時の「振動情報」を知覚していることが分かる。

このような触感につながる振動刺激を知覚する4つの機械受容器(マイスナー小体、メルケル触盤、パチニ小体、ルフィニ終末)の振動データを解析し、触感を検出する範囲の刺激量を定量化。各受容器の応答を推定するアルゴリズムを実現した。


慶應義塾大学理工学部 竹村研治郎教授のコメント

五感のうち工学的な理解が進み、広く利用されているのは視覚と聴覚に限られていると言えます。触覚、特にものの触り心地を知覚する触感が測定できるようになり、知覚メカニズムへの理解が深まれば、製品開発への応用だけではなく、インターネットを介して触感情報がやり取りされる時代が近づいてきます。機械受容器の特性に基づいた触感の定量化アルゴリズムは、こうした時代の基盤技術になると考えています。



カトーテックと竹村研治郎教授について

カトーテックについて

1961年に京都で創業し今年で60年を迎える。ものを触った時の“さわり心地”を数値化する試験機をメインに製造販売。1964年頃「布の風合い」を研究していた京都大学工学部の川端季雄氏が、製鉄業を営んでいたカトーテックに試験機の製造依頼をしたことが試験機開発の始まり。現在では、布の風合い試験だけでなく化粧品や食品、電池、自動車メーカーの内装材やインパネなどあらゆる「風合い・触感・心地よさ」を計測している。

竹村研治郎教授について

2002年慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(工学)。東京工業大学精密工学研究所助手、助教、モナッシュ大学訪問研究員などを経て、2008年に慶應義塾大学理工学部機械工学科専任講師。2019年より同教授。2019-2020年、カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員。振動工学に基づいた触感センサ・ディスプレイ、超音波振動を用いた自動細胞培養システム、機能性流体を用いたソフトロボットなどの研究に従事。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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