農作物の栽培環境を仮想空間上に完全再現 遠隔栽培指導、AI教師データ生成などのサービスを提供 Happy Qualityとフィトメトリクスが共同開発

株式会社Happy Quality(ハッピークオリティー)と株式会社フィトメトリクスは、仮想空間上で農作物栽培環境を完全再現するデジタルツイン環境のプラットフォーム開発に成功したことを発表した。両社はプラットフォームを活用し、AI開発用教師データセット生成や農業技術研修システム構築を始めとした、アグリテック開発に資する一連のサービス提供を開始する。


デジタルツイン環境プラットフォームの開発背景

現在、5Gの普及など、通信の高速化によって様々な分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにその流れは急激に加速した。農業領域においても例外なく、5G、IoT、AIといった先進的なICTの利活用により農業に新たな価値を創造したスマート農業技術開発の機運が高まっている。一方、農作物の成長にあわせたデータ蓄積が必要であり、膨大なコストと時間を要することがアグリテック開発加速における大きな課題となっていた。


そこで今回、同プラットフォーム開発により業界の課題解決を図ると共に、スマート農業の普及を通じた業界におけるイノベーションの創出を目指し、ハッピークオリティーが有する細密栽培管理技術とフィトメトリクスが有する農業AI技術を掛け合わせ、新たに農業版3Dデジタルツインの共同開発を実施。これにより、現実の農作物やハウス設備・環境データを元に、VR(仮想空間)上で圃場を超高精度に再現することに成功した。




デジタルツイン環境プラットフォームのユースケース

同プラットフォームの活用によって、モニタリング、分析・シミュレーション、フィードバックを行うことが可能になる。これらの機能を活用したユースケースの一部として、「AI教師データ生成」や「栽培環境の構築シュミレーション」などが見込まれている。

■遠隔栽培指導
遠隔地でも現場の圃場をほとんど現実と遜色なくVR空間上で確認することが可能になる。これにより、非対面・非接触で的確な栽培指導ができるようになるため、今般の新型コロナウイルス感染症に対応することができ、また訪問コストを削減することで省力化に繋がる。

リアルな空間データ(左図)とデジタルツインのプラットフォーム上VRデータ(右図)

■AI教師データ生成
果実の個数計測、熟度の推定、病害虫診断など、農業用画像解析AIの開発に必須な教師データの迅速活用に役立てる。シミュレーション空間上でデータ生成することで、現実世界において必要となるデータ収集およびデータラベリング作業を省略可できる。



■栽培環境の構築シュミレーション
栽培ハウスの新規設営時やリフォーム時にプラットフォームを活用することで、オリジナルな環境の生成に加え、ハウスの間取りをシミュレーションすることで導線の整理、また必要となる農業資材の見積り、株数からの収穫量の算出なども行うことが可能になる。




今後の展望

同プラットフォームは上述の通り、遠隔栽培指導をはじめ、あらゆる用途に応用することが可能。例えば、栽培ハウス環境(温度・湿度・照度・二酸化炭素濃度等)や、生育状況(背丈、実の大きさ、質感、色味等)に対応させたアノテーションを施した「機械学習・深層学習における商用利用可能な画像データセットの生成」、環境情報や生育情報データを計測するための「センサー開発」、その他ローバーやドローン各種AI開発に必要不可欠な膨大な教師データを高速・大量生成、さらには、VR上の農作物や各種制御機械とインタラクトを通じた、バーチャル農業技術研修などへの活用も期待できる。

ハッピークオリティー、フィトメトリクスの両社は、今後も同プラットフォームを活用し、より多くの農業者に向けて質の高い栽培指導を手がけ、データドリブン農業の実現と後継者不足に陥っている農業界の課題解決を目指す。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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