【速報】JR西日本とソフトバンクが自動運転バスと隊列走行で連携 具体的に見えてきた未来の自動運転バスのBRT活用

西日本旅客鉄道(JR西日本)とソフトバンクが自動運転バスと隊列走行で連携する。導入するのはバス専用道(BRT)での運用、滋賀県野洲市に設置する2021年10月から専用テストコースで実験を始め、2020年代半ばの社会実装と実用化を目指す。BRTの導入はJR東日本が積極的に行っているが、JR西日本では初めての取り組みとなる。

一般のバスターミナルに、BRTを加えた未来の都市開発のイメージ

実証実験車両のカラーリングの例(大型バスの場合)。JR西日本のブルー、ソフトバンクのグレーを使い、今後提携していくパートナーを暗示した白のベースに乗せた色合い

9月27日に報道関係者向け説明会が開催され、その具体的な取り組み内容が明らかになった。

左)西日本旅客鉄道株式会社 理事 鉄道本部副本部長 イノベーション本部長 久保田 修司氏、右)ソフトバンク株式会社 執行役員 法人事業統括付 鉄道・公共事業推進本部長 清水 繁宏氏、が登壇

BRTを走る自動運転バスのイメージ。連節、大型、中型、小型バスを用意する。それぞれが自動運転機能を持ち、隊列を組んで走行することもできる。バス管理者が当初は最前列車両に乗車し、遠隔監視によって安全性を確保していく

テストコースのスペック。PayPayドームの1.5倍の敷地

JR西日本とソフトバンクとともに、今回のようにBRT専用コースを敷設して、自動運転バスの社会実装や隊列走行等を積極的に実験するのは「世界初」の試みを強調している。また、社会実装を見据えれば自動運転バスの走行スピードは時速60kmを目指すとしていて、この速度レベルも世界的に見て例がないと語った。


BRTはバス専用道、公道とは踏切で交差する

BRTは「Bus Rapid Transit」の略称で、バス高速輸送システムのこと。具体的にはバス専用道路による運用を示し、今までJR西日本では稼働実績はない。JR西日本は今回、ソフトバンクと、その傘下で自動運転バスを開発してきたボードリー、更には自動運転の技術を持つ先進モビリティや日本信号と連携し、自動運転バスによるBRTの運用を試験し、隊列走行や連節バスによって輸送量を調節できるシステムの構築を目指す考え。

テストコースでは小型、大型、連節バスを導入し、自動運転のテストが行われる。また、BRTの道路と一般公道との交差は踏切(クロスポイント)が想定されている。将来的には大型と小型が隊列走行でBRTを走行し、途中から小型バスのみ公道に出ていくルートなども検討する考え

自動運転バスには既に、ボードリーや先進モビリティ、日本信号が自動運転バスの実証実験で培ってきた技術をすべて盛り込む。これらの技術は既にテストが重ねられていて、実験レベルでは自動走行自体は日本の各地で実証されている。

自動運転には最先端の技術が盛り込まれる。「GNSS」は高精度な衛星を使った制御技術(GPSのような)のひとつ。GPSがメートル級の精度に対して、数センチの誤差だけの高精度を実現する。
「自動運転・隊列走行 BRT」サービスが目指す姿
(1) 専用道による安全性・定時性・速達性の実現
(2) 専用道の利点を生かした自動運転・隊列走行の早期実現
(3) 需要に応じた柔軟な輸送力の確保
(4) 他の交通手段と連携した一体的でフラットな(段差の少ない)交通網の実現
(5) 運転手の担い手不足の解消
(6) シンプルな設備によるローコストなモビリティサービスの実現


BRT専用のテストコースを設置

今回の発表のポイントは、BRT専用のテストコースを滋賀県野洲市のJR西日本の敷地内に敷設して実証実験を進めること。既に工事は着工しており、2021年10月から運用を開始する。

既に着工が始まっている滋賀県野洲市の専用の実証実験コース

総⾯積 約22,800平米、コース総延⻑ 約1.1km、直線は最⻑で約600mが備えられる。テストコースでは自己位置推定技術、障害物検知、駅・停車場での正着制御、自動的な⼊出庫と隊列組成・解除、単⼀車線でのすれ違い制御、専用道と⼀般道との交差部を想定した信号・踏切等制御など、基本的な自動運転バスの技術確認が行われ、その他にクロスポイントなどの環境面での最適化が検討されるという。



主な実証実験項目
(1) 自動運転・隊列走行に関する車両の技術検証
(2) 自動運転・隊列走行に適した走行環境・地上設備の検討
(3) 乗降場への正着制御や車両の遠隔コントロールなどの運用面の検討
(4) 様々な環境下における上記項目の比較検証を通じた事業性の検討


バス専用コースと隊列走行を活用した未来のバス運用

今回の発表では、両社がイメージする自動運転のBRTバスを活用した運用の未来のイメージが明らかになった。
BRTは原則として他の車両や人の侵入がない専用道路のため、自動運転での運用には最適だ。高齢化社会と過疎化など、国内で進行している課題に対応するため、利用者の数によってバスの規模はフレキシブルに割り当てられるようにする。

隊列走行にはバス同士が通信して走行する「車車間通信」技術が用いられる。ソフトバンクは物流トラックで公道での「車車間通信」を活用した隊列走行の実証実験をこれまで何度も行ってきている

決まった隊列の構成だけでなく、地域のニーズに合わせて隊列の配置や配列を変えて、フレキシビリティの高いバス運用を目指していく

自動運転機能付きのバスと言っても、運転士が運転することでBRT内だけでなく、公道に出ての運行にも対応する。隊列走行の場合、先頭車両には運転士または管理者が搭乗し、隊列走行する車両は自動で追従可能な仕様となる。前述のように追従車両のみ公道に出るコースの場合には運転士が搭乗するケースもあるだろう。

隊列走行の例 小型バスの後ろに大型バスが追従して始発停留所を出発する

途中停留所で、別のルートから来た小型バスが後続に隊列走行に合流

次の停留所では、先頭の小型バスが隊列から分離して、別の行先へに向けて走行。隊列は大型バスが先頭となり、BRTの隊列走行へ (これは一例)

このようなパターンを想定することにより、BRTと公道、ターミナル駅と過疎地域、連節バスから小型バス、更にはオンデマンドバス等も活用し、地域の状況とニーズに合わせて最適な自動運転システムを提供していく。このコンセプトは動画で解りやすく確認できる。

■コンセプト動画




今後の展開予定

2021年10月より新規に敷設した専用のテストコースでの実証実験が始まる。2022年春に隊列走行の試験、運用面の試験などが順次行われる。気になる実装時期は未定だが、2022年代の半ばを目標としている。社会実装にはBRTのコースの敷設を含めて、地域や地方自治体との連携が非常に重要になってくる。そのため、現時点ではどこと連携するかも未定だが、今回の発表を機に全国から連携を希望する地域を募りたい考えだ。


右側の企業は、上から先進モビリティ、ボードリー、日本信号、ソフトバンク、JR西日本。今後「重要となるのは左側で、実用化には地域や関係省庁との連携が不可欠になる」と両社は語った

世界各地で急速に進められている自動運転の社会実装だが、日本でもJR西日本とソフトバンクによって加速していくことを期待したい。今回の発表がトリガーになることは間近いないと感じている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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