衛星データとAIと3DCGのデジタルツイン! スペースデータがバーチャル空間にニューヨークをAIで自動生成

「宇宙 × データ」をテーマとした研究開発を行う宇宙スタートアップである、株式会社スペースデータは、衛星データと3DCGを活用してバーチャル空間に世界を自動生成するAIを開発し、アメリカ合衆国のニューヨーク市を自動生生成したことを、2021年10月13日に発表した。

これまでは日本の都市部を中心に生成を行っていたが、今回の実験によりグローバルに対応できるようになったことより、今後はAIによって自動生成された様々な地域の3Dモデルを公開して、誰でも無料で使えるように無償提供していく予定だ。

なお、同プロジェクトはクラウドファンディングを実施しており、リターンには、生成された3Dモデルに看板を掲載できるなどの特別なものを用意している。現在、目標額500,000円に対し、終了まで1日を残し(執筆時点)、支援総額7,213,834円、1442%の達成率となっている。





衛星データとAIと3DCGを融合させたデジタルツイン生成技術

同社は、衛星データと3DCG技術を活用してバーチャル空間にもう1つの世界を自動生成するAIを開発しており、今回は世界で最も高層ビルが密集するアメリカ合衆国のニューヨーク市のマンハッタン地区の自動生成に成功した。今後は日本のみならず地球全体のデジタルツイン化に向けて、アルゴリズムの改善を行う予定だ。

■【動画】3DCG of New York City automatically created by AI from satellite data / 衛星データからAIが自動生成したバーチャルニューヨーク

同技術は、人工衛星から取得できる地上の静止画像と標高データ(DEM・DSM)に機械学習を行い、地上の構造物を自動で検出・分類・構造化した上で、AIに地上の3Dモデルを自動生成させ、3DCG技術によって石・鉄・植物・ガラスなどの細かな材質も自動的に再現。これらを一つのシステムとして統合することで実現している。




Google Earthに代表される従来の3D地球儀は、衛星写真や航空写真を3Dモデルに貼り付けた形で提供されることが一般的だったが、これでは、俯瞰的な視点での地上を再現するには向く一方で、人間が歩く一人称視点では写真の解像度が足りず劣化してしまい、VR・ゲーム・映像制作・自動運転など高度なビジュアルが求められる領域では活用が進んでいなかった。
しかし、今回開発されたAIアルゴリズムは、従来の3D地球儀が苦手とする人間視点(一人称視点)での3Dモデルを自動生成することを得意とし、近い距離でも景観が劣化しにくいためVRやゲームや映像制作といった三次元空間を人間の視点で動き回るような用途にも活用しやすい利点がある。これは、衛星データに機械学習をかけて地上の構造物の意味(物体の種類・形状・色・材質・高さ・広さ・役割など)をシステムに一度理解させた上で3Dモデルに再変換をかけているためで、物体に近づいても景観を劣化させずに表現することが可能になっている。
また、従来の3D地球儀だと写真に写り込んだ看板や広告などの肖像権や著作権を犯した状態で提供されることが大半だったが、今回は地上の構造物を学習させた上で、AIによって看板などを除いた確率的に最も近い3Dモデルを自動生成させる手法をとっているので、従来のグレーゾーンの問題も気にせずに利用できるというメリットがある。



産業への活用:デジタルツインとメタバース

「デジタルツイン」とは、現実世界と瓜二つの仮想世界を作って様々なシミュレーションに役立てる技術であり、世界中の企業や政府から注目を集めている。同プロジェクトでは三つの異なる分野のテクノロジーを融合させることで全自動でデジタルツインを生成することが可能だ。衛星データの活用によって地球全体の情報を広範囲にカバーすることができるため、日本だけでなく世界全体に応用できるスケーラビリティがある仕組みとなっている。


一方で消費者向けには「メタバース」という「三次元バーチャル空間で相互交流できる仮想世界」を指す言葉が注目されており、VRと5Gが普及すれば現在からは想像できないような体験型コンテンツが登場することが予想される。



同社の考える近未来

同社は、VRやメタバース上では人々が動き回るための空間を作る必要があり、大規模でハイクオリティになるほど開発コストは高額になるが、もし、世界全体のハイクオリティな3Dモデルが使えるようになれば、個人やスタートアップでも大企業に劣らないクオリティの仮想空間を立ち上げてサービスを提供できる未来が開けます。「マトリックス」や「竜とそばかすの姫」のようなSF映画の技術がより現実に近づくと考えている。
また、今後AIが生成した地球全体の3Dモデルを誰もが無料で使えるようになると、仮想現実・ゲーム開発・映像制作・都市開発・防災防衛・自動運転など様々な産業に大きなイノベーションが起きることも想定しているとのことだ。

クラウドファンディングURL(CAMPFIRE)
https://camp-fire.jp/projects/view/484364

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ロボスタ編集部

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